45話 実験台
新しいスキルを手に入れたらすぐに試してみたくなってしまうのが私だ。
今さっき手に入れたガードブレイクも試してみようと思った。
けど、ここで大きいな問題が発生した。
「このスキル1人だと試せないやつだ……」
私は思わずそう呟いてしまった。
魔法系スキルなら1人でも適当に撃って試せるし、隠密とか念話とかそういうスキルもことりさんに協力してもらえば試せる。
けど、ガードブレイクはモンスターがいないと試せない。
もちろん家にモンスターなんているわけないし、ことりさんで試すこともできるけど、そんなことできるわけがない。
涼っちならまだしも、ことりさんで試すなんて絶対にダメ!
ならどうしよう。
いっそのことダンジョンに行こうかな……
でも今日はもう行かないって決めたからなぁ……
よし、とりあえずことりさんに聞いてみよう。
ことりさんがいいって言ったらダンジョンに行って試そう。
もしダメって言ったら涼っちで試そう。そうしよう。
私はリビングに移動して、ゲームに夢中になっていることりさんにダンジョンに行っていいか聞いてみた。
「だめですよ、ちゃんと休まないと! もし1人で勝手に行ったりしたら許しませんからね!」
「分かったよ…………」
たった今、涼っちで新スキルを試すことが決定した。
これは必要な犠牲だから涼っちには諦めてもらうしかない。
日頃の恨みも晴らせて一石二鳥だね! なんてことは口が裂けても言えない。
それから、することが無さすぎた私は、ことりさんと一緒にゲームをして時間を潰すことにした。
遊んだゲームはモンスターファンタジーという昔からあるゲームで、魔法とかを使ってモンスターを倒し、クエストをクリアしていくゲームだ。
1作目が発売された時はまだダンジョンが無く、魔法とかモンスターとかがファンタジーのものだったからこの名前になったんだとか。
まあ楽しかったらなんでもいいんだけどね。
そして夕方。
ゲームをやめて、ことりさんが夜ご飯を作り始めた頃に涼っちが帰ってきた。
予想通り、帰ってきて早々写真のことでいじられた。
「ほかりんがかわいすぎて死にそう」とか言って抱きつかれ、頭を撫で回させ、膝の上に乗せられた。
「そのまま死んでしまえ!」と言いたくなるのをグッと堪え、私はなんとかその苦行を耐える。
これも新スキルを試すためだ。
ここで涼っちの機嫌を損ねたら明日までお預けになってしまう。
そんなの嫌だ! 嫌に決まってる!
それから、膝の上で夜ご飯を食べ、一緒にお風呂に入り、今はアイスを食べさせられている。
おいしい。
さてさてさてさて、そろそろ本題に入ろう。
入らないとこのままの流れで朝が来てしまうよ。
「涼っち涼っち、ちょっといい?」
「ほかりんの言うことなら何でもとは言わないけど、できる限り聞いてあげてもいいよー」
そこは何でも聞いてあげるって言ってほしかった。
「今日手に入れたガードブレイクっていうスキルの実験台になってくれない? 痛くはしないから…………」
たぶん。
「全力全開でお断りしたいけど、どうしてもっていうなら考えてあげてもいいよ」
「ほんとに!?」
さすが涼っち、物わかりがいい。
「でも、1つだけ条件があるよ」
「条件って?」
「明日のダンジョンで【リッチのローブ】を着ること! それをしてくれたら実験台になってあげてもいいよ。あ、ちゃんと写真は撮るんだよ? 500枚くらい」
うっ、究極の選択……
今スキルを試すのを諦めて着ないのを選ぶか、スキルを試す代わりに着るのを選ぶか……
「写真撮らないっていうのは?」
「無しに決まってるじゃん! 写真撮らないとか着る意味ないから!」
「ことりさんと同じようなこと言わないでよぉ……」
それから悩みに悩んだ末【リッチのローブ】を着るという条件を飲むことにした。
明日までお預けにはさすがに無理だったよ。くそぅ……
「ところでスキルの実験って何するの?」
「【ソウルイーター】で涼っちの背中を攻撃するだけだよ!」
私がそう言うと涼っち顔から血の気が引いた。
「その前に遺書書いてきていい……?」
「やっぱ【ソウルイーター】はダメだった?」
「ダメに決まってるでしょ! もう少し危なくない方法とか無いの?」
「【ソウルイーター】がダメだったら素手で殴るしか……」
「最初からそうしろ!!」
手が痛くなるから嫌なんだよなぁ……
「ということで早速やってくよ! 涼っち冷蔵庫の前立って」
「はーい! あ、【ソウルイーター】はやめてね、死ぬから普通に!」
「分かってるってー! さすがの私でもそんなことしないよ!」
「ことりん、ほかりんが言ってること嘘じゃないよね?」
涼っちは恐る恐ることりさんに訪ねている。
私の信頼度低すぎない?
泣いていい? 泣いていいやつだよねこれ?
「だ、大丈夫ですよ……」
ことりさんはスキルで嘘じゃないって分かってるのにどうしてそんな不安そうな言い方なの!?
涼っちがさらに不安になるからやめて欲しい。
「いいから早くやるよ!」
「遺書書いとけばよかった……」
「いくよ! 3、2、1、はぁっ!」
私は涼っちの背中に軽めのパンチを入れた。
「どう?」
「どう? じゃないよ! パンチした後のセリフじゃないから!」
「そういうのはあとでいいから早くステータス開いて!」
「あとで!? はぁ…………」
涼っちは大きなため息をつきながらもステータス画面を開いてくれた。
「HPは45だけ減ったと。よし、なら次はお腹ね!」
「…………」
涼っちは驚きすぎたのか固まってしまった。
けど、私には関係ないね、ってことで私はお腹にさっきと同じくらいの強さのパンチを入れる。
「今度はHPは13だけ減ったと」
ちゃんとスキルは発動してるみたいだね。
「これで終わりだよ! ありがと涼っち! 涼っち?」
「もう二度とこんな実験したくないよぅ…………」
涼っちは今にも泣きそうな顔をしていた。
「もしかして私のせい?」
「もう絶対許さない! 今日寝る時、ほかりん抱き枕にするから!」
それを聞いて私の顔から血の気が引いていった。




