36話 ソウルイーター
「あのー、そろそろ離れませんか……? さっきから涼花さんの視線が怖いです……」
後ろを振り返ってみると、頬を膨らませた涼っちがじーっとことりさんの方を睨んでいた。
これはこわい、ものすごくこわい。
ていうかいつの間に起きたの?
さっきまで気絶してたんじゃ……
「ほかりんは絶対渡さないからね!」
目が覚めて一言目がこれって頭でも打ったのかな……
「はい……?」
ことりさんは困惑した顔をしている。
それが当たり前の反応だ。
私だって急にそんなこと言われたら困惑する。
困惑どころか軽く引くよ……
「そういえば2人はどうして助かったの?」
涼っちがよく分からないことを言い始めたので私が話を無理やり変えた。
「どうしても何も私にリッチのスキルは効きませんよ?」
どうしてそんな当たり前のことを知らないの? みたいな反応をされたよ。
「リッチのスキル効かないってどういうことなの? 当たらなかったとかじゃなくて?」
「あれ? 言ってませんでした? 呪いに重複して呪いはかからないんですよ。リッチのスキルなどのデバフスキルは一種の呪いなので元々呪われている私には効かないんです!」
デバフが一種の呪いということは知っていたけど、呪いに重複して呪いがかからないことは知らなかったよ。
デバフスキルが効かないって強すぎない?
それに身体能力も強化されているし、呪いが優秀すぎてこわい。
でも、20歳で死ぬのと引き換えだからそれくらいあってもいいか……
まあ私がリントヴルムをぶっ倒すから死ぬことは無いんだけどね!
「それともうひとつ! この折れた杖ってことりさんのってことは分かるんだけど、どうして折れたの? どうしてここに落ちてるの?」
「これはですね。投げたら折れました! ここに落ちている理由は持っていても邪魔だったからです。でも、魔石は後でちゃんと回収するつもりでしたよ!」
「そうなんだ! 投げて折れたのならしょうがないね〜、なんて言わないからね!? 杖は投げるものじゃないよ?」
「投げたのにもちゃんと理由があります。話せば少し長くなるかもしれませんが……」
そう言ってことりさんは投げた理由を話し始めた。
「要するにリッチの攻撃から気絶していた涼っちを守るために杖を投げたってことだね!」
「簡単にまとめたらそんな感じです。かなり距離があったので、杖を投げるしか助ける方法がなくて……」
魔法だと距離的に無理で、【キングアックス】だと真っ直ぐ飛ばなさそうだったから杖を投げたらしい。
「そういう理由だったんだね。私はてっきりことりさんがリッチに倒されたのかと思ったよ」
「リッチは私が倒しておいたので大丈夫ですよ。これがリッチの魔石です」
私はことりさんから魔石を貰い【アイテムポーチ】に仕舞う。
「それともう1つ見せたいものがあるのでついてきてください」
私はそう言って歩き始めたことりさんの後について行く。
「ついてきてってどこに行くの?」
「この道を曲がった先です」
思ってたよりも全然近くてよかったーなんてことを思いながら歩いていたらすぐに着いた。
「わあっ! これってリッチが持ってた【ソウルイーター】だよね?」
目の前に小さい砂の山があって、そこに【ソウルイーター】が刺さっていた。
「そうです。倒したらたまたまドロップしたみたいなので、ことねさんにあげます!」
「ほんとにいいの? ことりさん使わないの?」
「私は【キングアックス】があるので十分ですよ」
「涼っちは?」
「私? ことりんがほかりんにあげるって言ってるんだし、私は別に大丈夫だよ!」
涼っちは急に話を振られて少しびっくりしていた。
「そう? なら私が貰うねー! ありがと、ことりさん!」
私はお礼を言った後、砂の山に刺さっている【ソウルイーター】を引っこ抜いた。
重っ!
けど、これくらいの重さならまだなんとか持てそうだよ。
骨でも持ててたんだし!
「ところでどうしてこんな砂の山に突き刺さってたの?」
「それは私がサプライズで渡したいなと思って突き刺しました!」
「なるほど……? 勇者の聖剣が台座に突き刺さってるみたいな感じ――」
「そうです! そういう感じです!」
ことりさんは食い気味にそう答えた。
……ことりさんの感性が時々分からなくなるけど、気にしないでおこう。
気にしたら負けだよ……
「もう時間もだいぶ遅いですし、早くクリアして帰りましょう!」
「早く帰ってご飯食べたーい! あ、でも作るの私じゃん……」
涼っちは1人で勝手に悲しんでいる。
「なら私も手伝うよ!」
「ほんと? ありがとほかりん! よーし、ならちゃっちゃとクリアしちゃおー!」
「「「おー!」」」




