25話 フラグ
真っ暗な階層を抜けた私たちは6階層を進んでいる。
「絶対に壁とか押したり、触ったりしちゃだめだからね!」
「フラグにしか聞こえないんだけど」
「フラグじゃないから!」
そんな会話をしながらも慎重に進んでいると、道の前と後ろからぞろぞろとゴブリンたちが出てきた。
前にいるのがハイゴブリン3体で、後ろにいるのがシャーマンが3体だよ。
結構多いはずなんだけど、モンスタートラップを経験したから少なく感じてしまう。
「うわっ、めっちゃいるじゃん。私シャーマン倒すからハイゴブリンはよろしくねー」
「なら、私が倒しますね! アクアショット!!」
ことりさん返事と同時に前にいるハイゴブリンたちに魔法を放つ。
そして、ものすごい速度で飛んでいった3つの水の玉がハイゴブリンたちの頭を吹っ飛ばした。
スライムの魔石をオリジナルに変えてから威力が格段に上がったっぽいね。
同時に飛ばせる数も増えてたし、やっぱりオリジナルの魔石は強いみたい。
「はい、魔石っ!」
「あれっ、もう終わったの?」
「あんなやつらじゃ私の敵にはならないよ」
ことりさんの魔法を見ているうちに涼っちの方も終わったみたい。
涼っちの影操作を使った戦いも見たかったからちょっと残念。
まあでも、どうせ後で戦うだろうし、その時にでも見ればいっか。
2人が倒したゴブリンたちの魔石を【アイテムポーチ】に仕舞い、また進み始める。
若干荷物持ち扱いされている気がするけど、【アイテムポーチ】が便利すぎるからしょうがない気もする。
「ほかりんことりん見て見て! この道の先の壁だけ少しへこんでない? もしかしてこの先に隠し階段があったりして?」
少し進んだところで、涼っちが道の先を指さしてそう言った。
「私にも少しへこんでいるように見えます!」
「2人ともよく見えるね。私の視力じゃ普通の壁にしか見えないよ」
私の目が悪いわけじゃなくて、2人がよすぎるだけだよ。
「ちょっと押してきていい?」
「だめに決まってるじゃんか!! 絶対押さないでよ!!」
私には見えないけど、ほんとにへこんでるのなら絶対押しちゃだめなやつだ!
「もー、冗談に決まってるじゃん。ほかりんはやっぱ心配性だなー」
「心配性じゃなくて涼っちのことを信用してないだけだよ!」
「顔見えないからなんとも言えないけど、絶対ニヤニヤしてると思う」
私からそんな邪気みたいなの漏れてるの?
隠密仕事してよ!
「にやにやはしてないよ。ただ笑顔なだけで」
「ほぼ一緒じゃん!」
少し違うような、同じような……
「お二人がそんなこと言ってる間に壁まで来ちゃいましたよ!」
ことりさんに言われて前を見ると、へこんでいる壁があった。しかもへこんでいる。
話しながら歩いていたら結構進んでいた、なんてことよくあるよね?
私はある!
「誰が押す?」
「いや、押さないから!」
「私が押しましょうか?」
「話聞いてた!? ゴブリンキングともう1回戦うとか死んでも嫌だから! ていうかことりさんあの時いたよね!?」
「冗談に決まってるじゃないですかー! ことねさんはやっぱり心配性ですね!」
ことりさんの笑顔がものすごくこわい。
「ことりさんが涼っちのせいで悪い方向に進んでしまってる気がする……」
「気のせいじゃない?」
「そうです! 気のせいです!」
2人ともいつの間にグルになったんだ?
「あー、もう何も聞こないなー」
「なら押しちゃおっかなー?」
「もういいから早く右に進むよ!!」
「しょーがないなぁー。ことりんも行こっか!」
はぁ……やっと進める。
なんだったんだ今の時間は。
そう思いながら曲がるために体の方向を右に向けようとしたその時―――
「わぁっっ!!?」
急に腰と背中が痛くなった私は体勢を崩し、壁の方の倒れた。
――カチッ!
「「「あ!」」」
なんか聞きたくない音が聞こえた。
「あれ、何も起きない?」
数秒経ってもないも起きない。
「誤作動なんじゃない?」
「でもダンジョンでそんなことあるんですかね……?」
「よく分からないけど、ラッキーってことで――――」
私の声をかき消すような騒音とともに壁が動き始めた。
実際は念話だからかき消されることはないんだけどね――ってそんなこと言ってる場合じゃないよ!
時間差って酷くない?
今回は何も起きないんだ! ってなった瞬間こうだよ。
最悪だぁ……
それから、壁が動かなくなるのを待つこと数十秒。
「ほかりん言いたいことは?」
「ごめんよー!! 何でもするから許して!」
「言ったよ? なら明日から毎日お風呂一緒だよ?」
「やっぱりそれだけはやだ……」
お風呂くらい1人で入ってよ!
「でもどうしてあんなところで倒れたんですか?」
「えーっと、たぶんそれも私のせいだね……昨日椅子で寝たせいで体中が痛くって、その痛みがさっき急に強くなって倒れたって感じ……」
これからは絶対に椅子で寝ない。絶対に!
「ここで話していても仕方ないですし、とりあえず階段のところで進みましょうか……」
「2人ともほんとにごめんね……」
今回ばっかりは私が百悪い。
土下座してもいいくらい反省しているよ……
「隠し部屋かー。楽しみだね〜♪」
やっぱり、私悪くないかも……




