#47
3月末午後20:00【アルイド】のある路地裏。1箇所だけ小さく光る看板。
《BAR 宵月》
店の扉が開きカランコロンと扉に付けられたベルが鳴る。店内にはメロウな曲が静かに流れ1人の男がカウンター席に座り無造作に手に持ったアタッシュケースを足元へ置くと、
「いつものロックで」と慣れた雰囲気で注文。
琥珀の液体が注がれたグラスが置かれ、男は香りを確かめた後一口飲む。カウンターにグラスを置くとカランと氷とグラスが当たり心地よい音色がする。
カランコロンと店のドアが開き中を確かめるように身なりの良い男が1人入ってくる。
「お客さん、ここは一見さんお断りになっている。誰かの紹介かい?」と店員が男に尋ねる。
「ああ、ここで待ち合わせなんだが・・・」とカウンター席に座る男を目に留めると、
「ああ良かった。初めての店だから探したよ」とカウンターに座る男へと近づく、
「おぅ、来たか」隣の席に招きながら言うと、
「ああ、早速だが例の物手に入ったか?」と席に座りながら聞く、
「勿論だとも」足元に置いていたアタッシュケースを手に取りカウンターに置くと開いて相手に見せる。
それを見た男はごくっと唾を飲み込み中の物へと手を伸ばそうとするが、
「まぁそう急ぐな」と店員に合図を送るとビアカップに注がれたビールが置かれた。
「とりあえずは落ち着こうや」と店員に合図を送るとカウンターに平たい魔道具が置かれる。
「こいつでまずは本物か確かめてくれ」
そう言われた男はビールを呷りアタッシュケースの中のものを大事そうに掴むとカウンターに置かれた魔道具の上へと置く、すると魔導具が反応して魔導具直上に美麗なグラフィックが浮かぶ。
「おお、これは正しく幻のカード白銀のエルダードラゴン“シルバーイエローアイズエルダードラゴン“本当に実在するとは・・・」と絶句。
この“シルバーイエローアイズエルダードラゴン“漫画で主人公のライバルが使う切り札カードで、どのパックからも出ないことから漫画上だけの物と思われていた。
これが激変したのが王都で父親とタイト商店王都本店に買い物に来ていた少年が父に買ってもらった1パックの基本パックを開けたところ、このカードがでた。
これでその場にいたカードゲーマーは大騒ぎ。なんとその場で即席のオークション会場となり、なんと300万リドで落札されて、その場で大金貨30枚と交換。少年のお父さんホクホク、少年も10万リド分のカードを買って貰って満足し、落札した大きな子供も大満足と騒ぎになった。その後も【フェルエド】のタイト商店で一枚基本パックから出たと騒ぎになり全店舗で一時期基本パックが根こそぎなくなった。そんなカードの取引である。
「では取引に移ろう。100万リドで腕輪払いだ。大丈夫か?」
「問題ない」と腕輪を付けた左腕を出すと男も腕輪を付けた左腕を出し接触させるとチリンと音がする。
「確かに100万リド受けとった。これでこれはアンタの物だ」
とアタッシュケースを差し出す。それを受けとった男はすぐに店を立ち去ろうとするが、
「お客さん、次来る時はこれを持ってきてください。歓迎しますよ」と店の名刺を渡す。男は無造作に名刺を受け取るとポケットへと放り込み店を後にする。
「オーナーあれで良かったんですか?」
「ああ、問題無い。次誰か連れてきたら奥のプレイ台を紹介してやってくれ」
「畏まりました」
「ここは知る人ぞ知るデュエルバーとしてヒッソリとやっていきたい。ああそれと4、5回来たらシングルカードもある趣旨を内緒で伝えてくれ」
そうここはレオンが運営するカードゲームバー宵月。一見さんお断りでクチコミでしか分からないように工夫されている。少し高級なカードゲームサロンとして運営するつもりで開店した。100%レオンの趣味の店である。
そして今日も夜は更けていく。




