地球は愛と筋肉に守られている。
「りぴーとあふたみー。キレてるよ!」
「「「キレてるよ!」」」
「既にデカいよ!」
「「「既にデカいよ!」」」
「腹筋が板チョコだよ!」
「「「腹筋が板チョコだよ!」」」
「肩にメロンが乗ってるよ!」
「「「肩にメロンが乗ってるよ!」」」
「その僧帽筋は夏の入道雲!」
「「「その僧帽筋は夏の入道雲!」」」
「お前の肩はシルバニ〇ファミリーの赤いおうち!」
「「「お前の肩はシルバニ〇ファミリーの赤いおうち!」」」
「100人乗っても大丈夫な上腕二頭筋!」
「「「100人乗っても大丈夫な上腕二頭筋!」」」
20XX年。長年の環境破壊により気象は乱れ、予測不能な大災害が多発。未曾有の食糧危機が人類を襲った。
困り果てた人類は生き残りを賭けて核戦争を起こした。そしてその結果、生命が生活できる環境は瞬く間に失われ人類は滅亡した……
そう、滅亡した、したと思われていた。しかし、実はしぶとく生き残っている人種がいた。タフな身体を持ち、愛と平和を愛する彼ら。かつて人は彼らを、筋肉を極めし者『マッソ』と呼んだ。
マッソは今日も愛と平和のために、自分たちの筋肉を鍛える。また、いつの日か開催されるであろう大会のために、仲間同士最高の応援をするための発声練習も行う。
彼らは知らない。彼ら以外に生き残った人類がいないことを。
彼らは知らない。筋肉を鍛えすぎた結果、自分たちが人智を超えた生命体になったことを。
彼らは知らない。筋肉を愛するあまり、生命としての常識を破壊し、寿命という概念を超越したことを。
彼らは知らない。かつて人類が神と崇めた存在の域に、愛と筋肉だけで今まさに自分たちが辿り着こうとしていることを。
20XX年。マッソ以外の生命が滅びた地球では、今日も意味が分からない声援が星中に響き渡っている。
彼らは知らない。彼らの発声練習の声が、何故か空気の存在しない宇宙でも響いていることを。
彼らは知らない。彼らの声が、他の星に地球の存在を知らしめていることを。
彼らは知らない。彼らの声を頼りに、新たな土地を求めて多くの異星人たちが地球に攻めて来ていることを。
彼らは知らない。多くの異星人たちが、近づくにつれて大きくなる声による衝撃波に耐えられず、命を落としていることを。
20XX年。今日も地球は平和である。