クローン
クローン!? つ、遂にこの物語もSFに!?
7話です
この生活を始めて一週間経つ。慣れとは怖いもので彼女が部屋にいるのが当たり前になりつつある。
まぁ、偶には泊まらない日もある訳で(何をしに帰っているかは知らないが)、家族と暮らすのに越したことはない。けどまぁこっちにいる時は幾分楽しそうなので、ここに泊まるのも良いことにしている(……金欠もあるし)。
「ねぇ、遠藤君」
「んー、どした~?」
「これ見て、これっ」
……もう、今楽しく本読んでいる最中なのにーっ。むっ、けしからん太ももだ。
そしてしぶしぶ彼女が指す指先を見る。どうやら若手女優みたいだ。
「彼女可愛くない?」
「え? うんまぁ……」
可愛いと言えば確かに可愛い。けど……、
「鬼気迫るお芝居が彼女の魅力なんだけど、凄いわっ! 迫力満点なのがこう視聴者に伝わってくる感じがとても分かるお芝居よ!」
そう力説する彼女は嬉しそうな反面、少しもの悲しそうに感じた。
……まぁ、あまり気にするのも良くないし、今は触れるのを止めよう。
そして小説を読むのに戻り、その世界に没入した。
「え? 好きな女優さん?」
僕は寝る前に少し雑談したくなり、彼女に訊いてみた。
「ドラマ好きだから好きな女優いるのかな~っと思ってさ」
「……うーん、そうね~。やっぱり好きなのは福山麻美かしら」
んー? 聞いたことない名だな。
「えっと~っ、誰だい?」
「えー? 知らないの~? 今売り出し中の女優よー?」
興味ないから知らないんだなこれがっ。
「どんなドラマに出ているの?」
「最近はラブコメからサスペンスとか色々出てる実力がある女優よっ」
「そ、そうなんだ……」
けど興味ないわ~。アニメなら少しは見るが、アニメは興味ないのかな?
「あのさ……アニメは……」
「後、そうそう彼女結構画像とかSNSに上げているんだけどさ、それがお洒落で良いの~。THE・都会って感じね」
「うんうん、それでアニメ……」
「それでドラマの休憩中の役者さん達のオフな写真があるんだけど、ドラマの裏側見てる感じでテンション上がる訳……」
……駄目だ。火を点けてしまったようだ。これじゃあ止まりそうもないな。
という訳で彼女の話を延々と聞かされる羽目になり、僕は印象に残る範囲で聞いた。
「あら? もうこんな時間ねっ。疲れちゃったから寝るわ」
「あっ、あーおやすみ……」
とりあえずその話から解放され一安心して横になると、彼女はぼそとドアの向こうで言う。
「……まぁ、神山江美も悪くはないわ」
「?」
彼女はそれ以上何も言わず、今日の所の話は終わった。
次の日になり、気持ちの良い日射しが室内に入り、心地よく目が覚めた。そしてほのかに良い匂いがする。
(これは……味噌?)
「おはよう。起きた?」
僕はびくっとして見ると、神城さんがもう既に制服に着替えエプロンを着けて料理をしていた。布団の隣を見ても誰もいなかった。
「何びっくりしているの、もう。大袈裟ねえ」
「いや、珍しく朝の料理を作っているから」
「まぁ、偶にはね~」
彼女は浮き浮きしながら、料理を作っている。
何がそんなに楽しいのか分からないが、楽しいならまぁ良いか。
そして僕は制服に着替えながら、彼女の料理姿を見る。
「? どうしたの?」
「え? あぁ別に~?」
裸エプロン想像しちゃった……って言ったら怒られそうだな。
そして僕達は朝食を一緒に食べて、いつものように学校へ登校した。
さて本日の平穏な学校生活を終え下校中、僕はのんびりとアパートに帰っていた。とその時、帰る途中にうずくまっている人を見かけた。その人は女子っぽくて白のシャツに下は……多分黒の短いスカートらしきものを履いていた。
見て見ぬ振りをするか? 変な巻き込みはされたくない。見て見ぬ振り、見て見ぬ振り……。
「うぅ……」
と唸る彼女を見捨てることが出来ず、声をかける。
「あの、大丈夫ですか? 救急車呼びましょうか?」
「いえ、それほどでは……」
「しかしうずくまって、それほどではないでしょう?」
「く……」
「く?」
「空腹で……」
…………空腹で動けないのか。何という間抜けなお嬢さんだ。えらい腹ぺこリーヌさんだな。
「あの近くにお食事屋さんに連れて行ってあげましょうか?」
「え? 良いの?」
彼女はうずくまっていた顔を上げる。
「え!? 神城さん?」
見たらなんと神城さんだった。私服姿はあまり見たことなかったので、少し見惚れてしまった。
……いやいやそんな暇はない。
「腹が減っているなら、早くうちに行こう」
「え? え? ……もしかして明理のこと知っているの?」
「何を言っとるんだ?? これは早く食べさせないと! ごめん神城さん」
「え? きゃっ」
僕は彼女をおんぶして急いでアパートに連れて行った。そして彼女にたくさんの料理を作ってあげた。
「はい、おまちどうさま」
「食べて良いの?」
「どうぞ? 君の為に作ったんだから」
「……」
そして彼女はパクパクと無我夢中で食べていた。途中むせてた時もあったけど。
「あー、美味かったわっ。ご馳走様~」
「それは良かった」
僕は皿の洗い物をしていると、彼女は不思議なことを訊いてくる。
「貴方はもしかして遠藤君?」
「え? そうだけど……」
「そうか、君が……」
「さっきから何を言って……」
そしたら外からノックをして、ドアが開く。
「あら、鍵が開いているわ……?」
「なにっ!?」
なんとそこにも神城さんがいた。
神城さんが二人!? こ、これはもしかしてマンガとかで良くある……クローン人間!?
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