色んな勘違い
さぁ、明理の運命や如何に!?
5話です
「え? いや……、え!?」
僕は気が動転した。
「そんな状態で学校に……」
「あ、そろそろ行かないと。先に学校へ行っているから」
「あ、おいっ……」
彼女と話す暇もなく、さっさと行く彼女の後ろ姿を見ながら、僕は心配せずにはいられなかった。
(ほ、本当に大丈夫なのか……? それに……)
「昼ご飯渡すの忘れてた……」
そして授業中僕は授業そっちのけで彼女の下着のことで一杯になる。
(持ってきてないって…………ノーパン、ノーパンなのか!?)
頭の中がくらくらする。授業が終われば、急いで彼女のクラスに向かう。彼女は席に座って友達と談笑していた。
休み時間毎に見に行ったが、特に危ない場面はなかった。
「で、珍しくクラスから出て行って、特に買いものをするわけでもなく、ただ廊下をうろうろしている遠藤君は何がしたかったのかな?」
昼休みになり、カズキが不意に僕の一連の行動を問うた。僕はドキッとする。
『いやな、実は神城さんがノーパンでさ~、心配なんだよ』
……と口が裂けても言えず、
「その……神城さんのことが……気になって……」
と僕はややはぐらかした表現で言ったのだが、
「なに!? それはマジなのか!?」
「え?」
カズキは始め驚いていたが、何やらニヤニヤし始めた。
「そうかそうか。明理のことをな~っ」
(え? あれ? さっき僕はカズキになんて言ったっけ? なにか誤解を生む発言をしたような気が……)
「よし、じゃあ、少し待ってろっ!」
そう言った彼はスマホを取り出し、少しばかり画面を打っていた。
(何をやって……)
「よし、これで大丈夫だろ」
「え? 何が大丈夫なんだ?」
カズキが何やらワクワクしている姿に不安を覚えながら、数分も経たないうちに神城さんが少しニヤけたような表現のまま、早歩きでクラスに入ってきた。
「で、何々遠藤君っ。話って!?」
「え? いや……その……」
なんかカズキにとんでもない勘違いをさせてしまったような…………というかなんで神城さんはそんな好奇心旺盛な目になっているんだ!? それよりパンツだよ、パンツ!!
彼女はワクワクした目を向けたまま僕から一向に逸らさない。
どう切り出せば……。
周りを見ると嫉妬や羨望の眼差しをこちらに向けている。
参ったな……。これは上手くやらないと新たな誤解を作りかねない。
「……今日は珍しくクラスに来なかったから、どうしたのかな~と思ってさ」
「え? あぁ、今日はあまり動かない方が良いかな~と思って」
そうでした! ノーパンですもんね!!
「そうか、はは……」
「……」
何だこれ!? 気まずいっ!!
「と、ともかく歩く時は気をつけるようにっ」
「! あ~、うんっ。分かったわっ」
そう言って彼女はすたすたとクラスから出て行った。
分かって……くれたのか?
学校を終えアパートに帰宅後疲れて横になり、のんびり小説を読み耽っていると、彼女に作った弁当を思い出す。
「あっ、これ、どうしたものか……」
(捨てるのも勿体ないし食べるか)
そう思った矢先にチャイムが鳴る。
「こんばんは~遠藤君っ」
制服姿の彼女が今度はキャリーバッグを携えてうちに来た。
「……え? どうしたの?」
「遠藤君が金欠の間、いちいち家に戻るの面倒くさいからこっちに荷物を持って来たわ」
「へ? それってどういう……」
「時々ここで泊まろうと思って」
「えぇ!?」
何だって!? 泊まるだと!?
「だ、駄目だよーーっ!! そんなことしたらっ!」
「じゃあその間の食事代はどうするの?」
「うぐ……」
「はい、食費代を払う代わりに私をここで泊まらせることにけって~~っ」
「待て待てーっ! 親御さんの承諾はどうなんだよっ!?」
「……大丈夫よ。うちは比較的自由だから」
「?」
何だ? 今の間?
「……ところで家に帰ったんだから、下着はちゃんと履いたんだよね?」
「ん? 風呂の後で良いかなと思って、まだ」
「はっ!? まだって……」
そしたら誰かが仕組んだようなタイミングでビューーッと風が吹き、彼女のスカートがめくれる。
「きゃっ……」
「わーーーーーーーーっっ!!!」
僕はおもむろに手で顔を覆いながら、視線は下にいってしまった。……あれ?
「…………ってそれ僕のパンツ!!」
「そそ。洗濯物入れから出して借りたのよ」
「何だ……」
履いていたのか……。今日のこれまでの気苦労は一体……と、ほとほと参っていると、
「それで……」
「ん?」
彼女は部屋に入りながら、なんかやたらとニヤニヤしている。
「な、何だよ……?」
「H」
「は、何で……!?」
「今、スカートめくれた時覗いていたでしょ?」
「!!」
彼女はキャリーバッグをじりじり部屋に持ってきながら、まだ揶揄うようにニヤニヤし続ける。
「ふっふ~ん♪~♪ あら? これ……」
彼女は机の上に置いている一つの箱を手に取った。それは僕が食べかけていた弁当だった。
「昼のお弁当みたいに見えるんだけど、これ……」
「……」
僕は彼女の為に作ったことがなぜか急に恥ずかしくなり、ついぷいっと顔を下に向けた。
「……見た限りまだ手をつけてないみたいだし、捨てるのも勿体ないから私が食べようかしら?」
「……え?」
「良い?」
「あ、あぁ。…構わないさ?」
「ありがとう」
はぁ~、やれやれっ。また彼女と夜を共に過ごすことになるとは。
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