一夜明け
事件発生です
4話です
さていきなりですが問題です。年頃の男女が一人ずついて、布団が一つのみ。さてあなたはどうしますか。
……っていやいや、難問過ぎるでしょ!? 何? 新手のIQテストかな?
布団を敷いて気づく辺り、僕は相変わらず考えがあまいなー……。
今彼女は風呂に入っている。それまでに作戦を考えねばっ!
20分後。
「ふー、気持ちよかった~~。……どうしたの? そんなに落ち込んで?」
「……いや、別に」
考えがまとまらなかった。
「あ、それより服貸してくれてありがとう。少しぶかいけど温かいわ」
彼女は着替えの服を持ってきてなかったので、僕の服を貸してそれを着ている。
あまりおしゃれじゃなく少しぶかぶかの服だが、それがかえって彼シャツみたいで破壊力抜群だ。
僕はぶはっとなる。
(危ない危ない……。危うく興奮して心拍数が上がるところだったぜ)
「まだ寝るには早いから何かする?」
「いや、その前に……」
かくかくしかじか。
「え? 布団が一つだけ……」
流石の彼女もか~っと赤面した。
「それは流石にまずいだろ?」
「そ、そうね……流石にそれはまずいわね……」
う~んと、二人で考えるが妙案が浮かばない。春とはいえ夜は少し冷える。
「毛布はある?」
「あぁ、けど冬はもう終わったから納戸に閉まったよ?」
「あるなら良いわ。こうしましょう」
「?」
「この部屋に暖房器具があるから、それを閉めて毛布に包まる。そして布団の方はこっちの(暖房器具のない)部屋で寝る」
「あー、それなら風邪はひかないかな?」
「じゃあ貴方はどっちにする?」
「え? 僕が決めて良いのかい?」
「えぇ。やっぱり部屋の家長が決めないと」
「……」
うーん。僕は……やっぱり布団で寝たいな。
「じゃ、じゃあ布団で」
「分かったわ。私はこっちね」
とりあえず方向性は決まった。さてまだ22時前か。寝るにはまだ早いな。……本でも読むか。
僕は本棚から本を取り、本を読み始めた。
「……私もどれか本読んで良い?」
「……構わないさ」
「ありがとう」
そして僕は本を読み耽る。今読んでいるのは時代小説だが難しい文字はほとんどなく、結構ライトな内容だ。読みやすいからどんどん読んでしまう。
静かな時間は好きだ。誰にも邪魔されず、落ち着ける。平穏に過ぎる日々が僕を心地よくさせる。
彼女はどうかと思って見たら、彼女も静かに本を読んでいた。
「本は好きなの?」
「え?」
不意に僕は呼びかけてしまった。自分で少しびっくりしたが、気になったのでそのまま訊いてみる。
「そうね。本が好きというよりか……その世界に入ってその人の気持ちになりきるのが好きね」
「なるほど?」
僕にはない発想だったが、まぁありそうな話か。
僕はそこまで深く考えずそのまままた小説の世界に入った。
「……君、……君ってば」
「え?」
「もうずーっと呼んでいたのに、読んでいて全然気づかないんだから」
「あぁ、ゴメン。何?」
「夜中まで起きているのは美容の敵だからそろそろ寝ない?」
「え?」
時計を見るともう23時50分を回っていた。もうこんな時間か。早いな。
「よし、そろそろ寝るか」
「うん」
そして僕はドアを閉めて、電気を消した。
「おー、冷えるな」
閉めたら暖房の暖かみがきにくくなったので、さっと布団の中に入った。
しばらくスマホをいじっているとドアの向こうから、
「ねぇ、遠藤君。まだ起きてる?」
「……え? どうかしたの?」
「私のこと……見ててね」
「え? それってどういう……」
しかし彼女はこれ以上返事をせず、もう今日の一日は終わった。
「ぶあーーっくしゅんっ!!」
寒さを感じながら目が覚める。部屋の中は少し明るくなっていた。もう朝だろうか。外にはチュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる。
もう少し寝ようかな。……布団布団、あれ……ない……? 何で…?
寝ぼけながら布団を探しにキョロキョロ見ていると、誰かがそこで寝ている。
…え!? なん……、
よくよく見ると長めの綺麗な黒髪が少し乱れて、
(……え? もしかして……神城さん?)
ドアの方を見ると閉まっていて、ノックして部屋の中を見ると、いるはずの彼女がいなかった。
(……)
呆れて言葉も出なかった。
制服に着替えて、僕は朝ごはんを作り始めた。冷蔵庫に入っている物を少し拝借して、味噌汁と卵焼きとごはんを作る。
それから1時間経っただろうか。
「ん~~~~……あら、やけに暖かい……え!?」
彼女は声をあげて驚いた。寝ぼけて入ったのか……。
彼女はぼさぼさの髪に寝ぼけた顔でキョロキョロしていた。
「え? 私……」
「おはよう。早く起きて着替えてきて」
「え!? あ、遠藤君!? あ……はい……」
そして彼女は洗面所に行ったり、トイレに行ったりとばたばた色々準備をしていた。ご飯が出来上がってもまだ終わってなかった。
「出来たよー」
「ゴメーン。後5分」
そして制服に着替えてきた彼女は相変わらず綺麗だった。姿勢はピンと伸ばし、腰まで長い艶やかな黒髪に目はぱっちりして、さっきとはまったく別人だった。
「どうかした? そんなに口をあんぐりして?」
「いや、別に?」
可愛いと思ってしまったなんて口が裂けても言えるかっ!
そして僕達は朝ごはんを食べていると、彼女がもじもじし始めた。
「……あ、あのね?」
「ん?」
「同じ布団で……」
「いや、何のことか知らないな~」
「え?」
「僕は何も気づかなかった」
彼女は顔を赤らめたままだったが、
「……そ」
とだけ言ってそれ以上の言及はなかった。そしてご飯を食べ終え、洗い物を済ませると、もう登校の時間になっており僕達は部屋の外に出て日光に当たる。
「うーん、気持ち良いわ~~」
彼女は伸びをしながら、腰を円を描くように回す。そうしたら短めのスカートがふわっとなびく。
ったく男心をくすぐる動きを……ん?
「な、なぁ……。そう言えば替えの下着は?」
「え? 持ってきてないけど?」
事件発生。
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