共に寝る
良いムードと思いきや……?
18話です
「うーん……」
僕は本を読みながら唸った。その本はいわゆる稼ぎ方の本なのだが、なかなか考えさせられる意見が書いてあった。
「どうかしたの?」
「いやーー、なかなか素晴らしいことを書いてあるなと思ってさ~。『金を追うな。仕事を追え』ってさっ」
「働くの?」
「え? いや、……まぁ試験が悪かった時の保険に……」
「もう、そんなこと考えているから落とすのよっ。ほら、私が教えてあげるから教科書開いてっ」
そう言って色々勉強を見てくれる。彼女の説明はなかなか分かりやすく、式や文章を理解するのに時間がかからなかった。
「教えるの上手いなっ」
「そうかしら? ……あぁ、まぁ光も勉強出来ないから私がよく見ていたの」
「なるほど? そうなのか」
「まぁ、あの子の場合、仕事が忙しくて勉強する暇ないってのが要因だけどね」
「やっぱり双子でも違うもんだなっ」
「……まあね」
返事にあまり元気がない。落ち込んだような返答の声だ。
「どうかしたか?」
「いえ…………、いやまぁ、あんまり光と似ているって思われるのは少し癪に障るわ。双子だからって違うところは違うし」
そう思う気持ちには仕事を才能の差で取られた彼女なりの思いがあるのだろう。いや、それだけじゃなく単純に双子だからという理由で、二人が似ていると思われるのは彼女自身を尊重していない証拠だ。
「ゴメン、配慮が足りなかった」
「うんうん。良いのよ、分かってくれれば」
そして僕達は寝るまで一緒に勉強をした。
「うーん、さてもう0時前か。そろそろ寝ないとなっ」
「う、うん。そうね。…………あのさ……、遠藤君」
「ん? どうし……た?」
彼女はなんか目をキョロキョロしながら枕をぎゅっと抱いてもじもじする。様子がおかしい。こういう時は何かを狙っている時だ。
一体何を企んでいるんだ? こういう時は大概想定外のことが多い気がす……
「今日はこの部屋で貴方と一緒に寝たいわ」
ふぇ?
「……え、えっとー℃∑∅∈?」
戸惑って言葉にならなかった。
「……オ、オホン。いきなりまたどうした?」
「駄目……?」
枕で顔の下半分を隠しながら、甘える声で言う。
可愛すぎて死ぬ!! 駄目っ! 理性が保たない!!
「良いのか? 知らないぞ?」
「良いから言ってるの」
これは卒業待ったなしです。そしてどうせ寝るなら広い隣の部屋になった。僕はまたしても心臓がバクバクする。今日はこれで二度目だ。これだけ心拍数が上がってばかりいたら、早死にしないか心配だ。
「あのね……」
「ど、どうした?」
「私、今日貴方が光のところに行って一つ分かったことがあるの」
「?」
「貴方がいないから、心にぽっかりと穴が空いた気分になったわ」
「……!」
「だからね遠藤君、光と遊ぶのは全然構わないけど、あの子の虜にはならないでね……」
「……」
その彼女の発言にはどこか憂いた願いのようだった。
「だから私、今とても幸せよ」
「明理……」
「洋文君……」
僕達は見つめ合う。良いムードだ。
「……とその前に私に言うことあるでしょ?」
「え?」
Hをする前に何かすることあったっけ?
僕はネットで見たアダ◯トビデオの内容を思い出しながらひたすら考えた。
え~と、何だっけ? 歯磨き? シャワー? 一体それは…………?
「~~~!! もう、知らない! おやすみっ!!」
彼女はぷいっと怒ってふて腐れたように反対側を向く。
(え~~~~~~!? そんなーっ! Hはーーっ!!?)
お預けにされて僕はかなり不完全燃焼気味になり、しばらく横になっていてもなかなか眠れなかったが、隣からは寝息が聞こえてきた。
(くっ……もう寝てしまったか…)
とその時、容赦ない打撃が僕の横腹に直撃した。
「ごほっ!?」
な、何だ!?
どこからの攻撃か観察しているとそれは明理の寝相のようだった。僕が寝るまでビシビシと彼女の小さな攻撃が続いた。明理……かなり寝相が悪い…………。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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