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15/20

対等の難しさ

もうなんか普通になってきそうです


15話です

「ふむ」


 これは一体どうしたことだ? キッチンには料理を作っている明理がいて、隣の部屋にはぐでーっとくつろいでのんびりしている光ちゃんがいる。

 我が家はいつの間にかこんな賑やかな部屋になる……


「って、なんで当然のように光ちゃんが居るわけ!?」

「えーー? 向こうのアパートにいても退屈なんだも~ん」

「……」

「明日仕事もないし、それに明理がいないとご飯が困るしーっ」


 あ~、はいはい。分かってます、分かってます。そうでしたね。家事全般壊滅的だもんね。


「あっ、なにその顔~~。仕事で忙しいから仕方ないじゃないっ! やな感じーーっ」


 仕事………か。この前のデートで明理から聞いた仕事の話を思い出す。元々『神山江美』は明理の芸名で才能の違いにより光ちゃんになったという話。


「……」

「ねえ、ちょっとっ、なに思いにふけた顔してんのよーっ!」

「……え? あっ、別に?」

「ねぇ、料理出来るまで一緒にドラマ見ようよ」

「えっとー、何のドラマ?」

「今、私が出てるドラマっ」

「え~~~っ、本は駄目なん?」

「やだっ。疲れてるのに活字なんて嫌!」

「……へー、へーーっ」


 ったく。わがままなんだから……。


『ねぇ、優作。待ってお願い!』

『待てない。もう僕は君とは……もう……』

『駄目っ! 一緒にいて。お願い!』

『エリナ……』

『優作っ!』

「~♪」


 僕の部屋にはテレビを置いていないので彼女のスマホで一緒にうつ伏せで見る。画面が小さいから仕方なく僕達は近寄っているのだが、色々と体の部位が当たる。まったくこの子は無邪気……なんか上から圧を感じるぞ?


「ひっ!?」


 明理が死んだ魚のような目でじろっと見下ろしていた。


「いや、あの……これは……」

「光、料理出来たわよっ」

「はーい」


 僕には何も言ってくれないのか……。

 そして僕がいつもの席に座ろうとすると、


「ちょっとーー、なんで明理の方に行くのよ!?」

「は? いや、ここ自分の席だし?」

「今日は私がいるんだから、私の方に座ってよ!!」

「え? いや、そんな!?」


 彼女がぐいっと僕の袖を引っ張る。

 し、仕方ない…………今日は光ちゃんの隣に……はっ、殺気!?


「どこに行くの? 貴方の席はいつもここでしょ?」


 後ろからとんでもない圧が感じる。ど、どうしよう…………。ぷくっと頬を膨らます光ちゃん、黒のオーラを出しながら微笑む明理。くっ……挟まれたっ! こういう時は先人の知恵を借りようっ。


「……真ん中に座るよ」


 僕は二人の間の席に座った。二人は少し納得いかない顔になっていたが、まぁ落ちついてくれた。

 平等、それは人々の不満を取り除く手段である。いつの世も不平等によって不平不満が起こるものだ。だからちゃんと平等に対応しないとな…。


「ねえ、遠藤君……」


 光ちゃんが風呂に入っている間、明理は僕に声をかけてきた。なんか恥ずかしそうにもじもじしてて可愛らしい。


「ど、どうしたの?」

「……私とも……その一緒に……ドラマ見ない?」


 へ?


「な、なんでいきなり? 今僕は本を読んでるし、それにいつも一人で楽しそうに見てるじゃん?」


 そう言ったらぷくっと頬を膨れて、


「もう知らない!!」


 と言いながら隣の部屋に言ってぴしゃっとドアを閉めた。


「な、何だ~??」


 それから暫くして風呂から光ちゃんが出てくる。


「うーん、お風呂気持ちよかったーっ。仕事の疲れが取れるわーー」

「ちゃんと風呂を流したか?」

「ん? いや、流してないよ?」

「いや、流せってっ」

「それは私の仕事じゃないもんっ」


 そう言ってつーんとそっぽを向く。僕はムカッとしながら風呂のお湯を流しに行った。

 ったく。なんでいつもいつもーっ。

 風呂から戻ると光ちゃんは椅子に座ってスマホをいじっていた。


「どうして隣の部屋閉まっているの?」

「なんか明理が機嫌を損ねてだな……?」

「ふーん……?」


 彼女はキョロキョロし、僕の顔を見ながらニヤける。


「ねぇ、洋君。お話しようよ」

「まぁ、良いけど? 話って?」

「そうねー、洋君。ラノベ読んでるんなら、アニメ見てる?」

「まー、偶には?」

「『素晴らしき春』って、知ってる」

「あ~、知ってる。少し前に読んだなーっ」

「それでさ~、この前それの実写があった時にその主演の声優さんがゲストとして出ていたの」

「え? そうなん!?」


 だ、誰のことだ?? まさかまさか……。


「大塚詩音ちゃん」

「えーーー!? まじで!?」


 それは凄いことだな!


「まじでまじで! それでさお互いの演技をリスペクトしあってさ~、意気投合したのよね~」

「……」

「この前のプライベート写真見る? 彼女のあられもない写真があったりして?」


 気づいたら僕は首を立てに振っていた。


「ふーん、じゃあその前に条件っ」

「なになに?」

「私のアパートに来て、掃除してくれない? かなり部屋が散らかってるの」

「あぁ、なんだ。それくらいなら……」


 とその時背中から悪寒のようなものを感じた。振り返るとふすまが少し開いて、じ~っと明理が顔を半分みせてこっちを見ている。

 怖い! 怖いよ!!


「どうかした?」

「いや、えーっと明理にも頼めば……」

「えー? なんでそこで明理が出てくるのー??」


 光ちゃんはぷくっと膨らます。この子はまだ可愛げのある怒り方だけど、明理はなんかタマを取りに来そうな雰囲気なんだけど!?


「ほ、ほらっ、二人の方が早く掃除が済むだろ?」

「明理を連れてきたら見せてあげな~いっ」

「えーー……」


 な、なんでだよっ!? 姉妹なのにこの距離を置く感じは何だ!? 一体どうすればーっ!???

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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