初めてのデート
デートします
13話です
「えっとー」
「駄目?」
僕が躊躇った為か彼女の声は少し震える。
「いや、駄目じゃないさ。唐突に言われたから戸惑ってしまって」
「じゃあ、構わない?」
「僕、デートするの初めてだから上手くいくかどうか……」
「心配しないで。私も初めてだから」
そうなのか。彼女も初めてなのか。……なんか意識したらさっきまで気にならなかったのに、やたら緊張してきたぞ? 緊張が彼女に伝わらないだろうか。それに彼女の柔らかい胸も当たっているし……。
僕は色々と気になりながら彼女と一緒にアパートに戻る。
「大丈夫? 立てる?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
そして彼女が腕まくりをして夜の料理を作り始める。今日は光さんがいないから、なんか部屋の中が静かだ。いなければいないで少し寂しかったりして…?
「どうかした?」
「いや、別に?」
明理さんは料理を作りながら振り返り訊いてきた。僕のもの寂しい気配を感じたのだろうか。はてさてそれは分からない。
ご飯を食べ終えて僕は光さんから聞いた例のドラマを少し見てみようと思った。しかし題名が思い出せない。渋々明理さんに訊く。
「え? あのドラマ?」
「うん、名前何だったっけ?」
「……『下弦の月』だけど」
「そか、ありがとうっ」
「今見るの?」
「え? うん、そうだけど?」
「……そか」
彼女の声からはあまり元気を感じなかった。
「どうかした?」
「……デートの予定立てたいと思ってたから」
あ。
「あっ、あ! そうか、ごめんごめんっ! そうだよね! デートプランは大事だもんねっ。うん、立てよう! 立てよう!」
「私とのデートはどうでもいいの?」
「そんなことないよ。とっても大事だよ!」
「本当?」
「本当、本当! 緊張し過ぎて食べ物が喉に通らない程さっ!」
「さっきガツガツ食べてたじゃない」
「ごめん。少し盛りすぎました」
「もーっ」
そして二人でああでもないこうでもないと言いながら、寝る前までデートプランを立てた。
翌日、僕達は朝食を食べた後、まずは市内のショッピングモールに出かけることにした。
「わーっ。たくさん品物が揃っているわ! しかも今日は特売日だから、いっぱい買えるわ!」
「何を買うの?」
「やっぱり洋服を買いたいわっ」
そして僕達は洋服屋さんに行くのだが、やたらおしゃれな服が並んでいる。若者風に言うとアパレルショップとかなのだが、こういう類いの店はなんかパリピ過ぎて日陰者の僕にはあまり合わなさそうだから少々苦手だ。
「どうしたの遠藤君、早く来て」
「僕も中に入るのかいっ?」
「当たり前じゃないっ。私が一人で入っても仕方ないじゃない」
そして僕は仕方なくお店に入り、彼女は色んな服を選んで試着室で着替える。
「これはどう? ……次は? ……これなんかどう?」
彼女が着る格好はどれも惚れ惚れするぐらい似合ってて、どれでも良いのではと思った。
「どうだった?」
「どれも良かったよっ」
「もーーそれじゃあ駄目なのよ……」
彼女はむすーーっとする。
何が駄目なのだろう。どれも綺麗で良かったのに。
僕は何が彼女の気持ちに沿えられなかったのかと悩んでいると、ふとある服が目に入る。
「これは……」
少し派手な服だったが、なんか僕の気持ちを揺らす。
「どうかしたの?」
「なんかこの服のデザインに強烈なインパクトを感じて……」
「この服着てみよっか?」
「え?」
そして彼女はこの服を取り試着室に入る。出てきた彼女の格好はさっきの綺麗な服より少し見劣りはするが、彼女の個性を最大限活かす上でこの上ない服だと思った。彼女はそれに合った帽子と白の短パンを履いている。
「どう?」
「なんか分からないけど……意外と“あり”な気がする!」
「そう?」
彼女は色々店の中を見回った後にその一着を買っていた。そして僕達は昼飯を食べ、カラオケを楽しんだ後、日が傾き、影が伸びた風景を見ながら公園へと向かう。
「あー、疲れたわ~」
「結構回ったからね~」
「本当!」
「けど楽しかったよ」
「うん、そうねっ!」
公園の椅子に腰掛けて気持ちの良い風に当たって僕は今日のデートで楽しんだことを回想する。
「…………」
「うーん、やっぱり僕は洋服屋さんでの買い物が意外と楽しかったなー」
「……遠藤君」
「ん? どうした改まって」
「今回貴方とデートをしたのは実はもう一つ理由があるの」
「え?」
「私の過去のことを貴方に知って欲しいと思ったの」
「……」
「聞いてくれる?」
そして彼女は自らの幼少時代からのことを語り始めた。
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