羨む姉
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12話です
朝、布団の中が暖かく感じ心地よく目が覚める。
「うーん、気持ちが良い朝だな……」
今日はどうやら明理さんが布団を取った訳じゃあないんだ……、おや?
しかし僕が羽織っているのは布団ではなく毛布だった。
(あれ? なんで?)
「……ん、寒……」
僕の隣にいる子が毛布を引っ張る。
あれ? 明理さん? いやそれなら僕の布団は?
布団をきょろっと探すと、反対隣に布団で寝ている子がいる。
「は?」
「うーん……眠いわ……」
「……」
この現状についていけず思考が止まる。
え? 何? 僕の両側に神城さん姉妹が寝ているの? 左に布団の娘、右に毛布の娘で、布団の方は明理さんと考えれば毛布の彼女は……、
その時毛布の彼女が目を覚ます。
「ん……。あぁ、おはよ……っ」
僕は驚きおののき、布団の方へずさずさと勢いよく後退した。
むぎゅっ!
「何よ~、そんなに驚くことないでしょ?」
「な、な、なん……」
「痛~い。え、何? どうしたの? ……え? 光?」
「おはよう二人とも♪」
「えーーーーーーーーーーー!?」
「はぁーーーーーーーーーー!?」
僕はと明理さんと一緒に朝から外で鳴く小鳥のさえずりよりも大きな声を出した。
「……」
明理さんが無言で朝食を作る。一方、光さんは朝から嬉しそうだ。
「……な、なんで隣の部屋で寝てないんだ?」
「それは隣の部屋で寝ていても知らぬ間に明理がいなくなるし、洋君も布団がなくて寒いでしょ?」
「!?」
「!?」
「え? ひ、洋……」
「洋文だから洋君じゃないの?」
え? 何だろう? 今までが今までだったからいきなりそんな呼び名で呼ばれると少し鳥肌が……。
「駄目……?」
「いや、駄目ではない……けど」
「はい、料理出来たわよ!」
どん、と明理さんは料理を勢いよく机に置き、彼女は僕の方をギロッと睨む。そして明理さんは僕の隣に座り、むしゃむしゃと朝食を食べ始めた。
「あー、明理だけずる~い。洋君の隣は私も座るわ!」
そう言って彼女は明理さんとは反対側の僕の隣の席に嬉しそうに座る。僕は困惑いや、混乱する。明理さんの顔をふと見ると、明らかに絶句した表情で止まっていた。
(何がどうなっているんだ??? この状況についていけないぞ!?)
「ちょっと遠藤君こっちに来て?」
「明理……さん?」
洗面所前の廊下に出る。
「昨日私の居ない間、公園で光と何を話したの?」
「いや、別に他愛ない話だよ?」
「そうならあんなに素直にならないでしょ!? 他に思い当たる節はないの!?」
圧をかけてくるその表情は能面の般若のような顔だった。
「いや、ないない! …………あっ」
「どうしたの?」
「関係あるかは分からないけど1回だけ彼女を叱った」
「何て怒ったの?」
「えーと確か……」
明理さんに昨日の覚えている範囲のことを話した。
「……てな感じかな?」
「……」
彼女は少し考えているようだ。
「えーと、明理……さん?」
「……とにかく朝食食べないと、学校に遅れるからさっさと食べましょう」
「えっ、あぁ」
「なに話してたのー?」
光さんが廊下にひょいっと現れる。僕はついびくっとする。
「え!? あぁーー、何でもないよ!」
「そうよ。何でも無いから朝食を頂きましょう」
「そうねっ」
いつもの感じじゃないから、どうも調子が狂う。そして学校でもそうだった。やたら僕に彼女が絡んでくる。明理さんはカズキと話しているが、光さんは僕の机にもたれかかりながらこっちに楽しそうに話してくる。
「で、洋君はどう思う?」
「いや、だからそのドラマは見たことないから……」
「絶対見て! 面白いから! 私のお薦め!」
「う、うん。分かった分かった…」
僕は隣の席でなんか凄い圧を感じながら、光さんの話を聞くという状況に追いやられた。
光さんは仕事でマンションに帰ったので、この帰り道は機嫌の悪い明理さんと帰る。
めっちゃむくれているよ……。
僕は彼女にどうすることも出来ず、ただ無言で歩く。
「あのさ…」
「は、はい!?」
「別に怒ってないわ……。ごめんなさい、嫌な空気を流してしまって」
「え? うん……」
「光から聞いたドラマ見るの?」
「い、一応……」
「そう……」
「……」
「…………光はさ、小さい頃は元々泣き虫でお姉ちゃん子だったの」
「……」
「それで子役として大成してからどんどんワガママになっていたんだけど、その一方でやっぱり寂しがり屋なの」
「……」
「だから私とよく一緒にいたんだけど、私が貴方といるようになってあの子も貴方に心を開いている」
「……」
「それは姉として嬉しいことよ。……けど」
「?」
「けどそれだと私はまたあの子に大切なことで負けるかもしれないっ!!」
「え?」
「これ以上取られるのはツラいわ……」
彼女は道ばたでツラそうにしゃがみ込む。
「お、おい。一体、何の話を……」
「遠藤君、お願い……」
「え?」
「今はこれ以上歩けないからおんぶしてくれない?」
「へ? いつも家まで歩いているじゃないか」
「お願い……」
彼女が珍しく甘えてくるその仕草に、僕は少し戸惑ってしまったが、彼女のお尻を触らないように彼女を背負う。
「ごめんなさい……」
「良いよ、別に」
それより誰かに見られないか心配だ。
「遠藤君」
「何?」
「明日学校休みだから、私とデートしてくれない?」
「へ?」
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