迷子
なかなか光が帰って来ません
どうしたのか?
11話です
僕は明理さんと一緒に晩ご飯を作ることにした。一応光さんがまたここに来ることを想定して、三人分の料理を作る。
しかし、
「遅いね……光さん」
料理が出来上がってから、いくら待っていても彼女は帰って来ない。
「…ごはんが冷めちゃうわ。先に食べましょうか」
「そうだね」
いつ来るか分からない彼女を待っていても仕方ないので、先にご飯を済ませた。
彼女の料理の分をラップに包み、後は僕達各自自分の時間を過ごしていた。明理さんと過ごす時間はやはり悪くない。静かで互いのペースを崩さず生活を送れるからだ。しかし……、
(それにしても遅いなー。自分のアパートにでも帰ったのかな?)
折角彼女の分の料理も作ったのだから、一応彼女にも食べて欲しい。
「あのね、明理さん」
「ん? どうしたの?」
「光さんが今どこにいるか訊いてみてくれる?」
「……」
彼女は少し嫌そうな眉間に皺を寄せる顔をする。
「折角彼女の分の料理も作ったんだから食べて貰わないと勿体ないよ」
「……」
しばらく彼女は僕の顔をちらちら見ながら、はあとため息を吐く。
「…遠藤君がそう言うなら」
そして光さんに電話をする。
「…あ、光? 今どこ……、え!? 迷子!? どこかの道にいるですって!?」
な、何だってー!?
「今いる大体の住所は分かる? ……うん、分かった。それじゃあ迎えに行くわ。……光、今迷子みたいだから迎えに行ってくるわね」
「ぼ、僕も行くよ。二人で動いた方が早い」
時間は21:00を回っている。僕達は急いでその住所付近の道に向かった。その場所は家からそう遠くない場所で走って10分程度で着いた。
しかし彼女はいなかった。
「おかしいわ。どうしていないの?」
指定した付近の道に来たのにいない。一体どうしてだろう。明理さんの顔が少し曇る。僕も少し不安がよぎる。
「とりあえずこの周辺を手分けして探そう」
「えぇ」
そして僕達はそれぞれ彼女を探す。しかしそこから200m近辺に彼女は居なかった。
(おかしい。一体どうなっているんだ?)
僕は不安になる。一体彼女はどこに……と思っていると、キーコーキーコーと音が聞こえる。次はちゃんと耳を澄ましてみても、キーコーキーコーとやはり聞こえてくる。
そう言えばこの近くに公園があったな。しかし今は無風だ。どうして音が鳴るんだ?
少し怯えながら公園をおそるおそる見てみると、彼女がブランコに乗って揺らしていた。
(いた!)
そして僕は急いで彼女に駆け寄る。
「! ……あんた」
「……何で移動しているんだよ」
「スマホであそこからの近くを調べたら公園があったから、そこで時間を潰そうと思ったのっ」
「……じゃあそのこと明理さんに連絡しろよ! その場所にいなかったから二人して心配したんだぞ!?」
「……どこにいようが私の勝手でしょ!? それにあんたには関係ないわ!」
折角心配していたのに彼女からそんな無下な言い方をされ、僕はついムカッとくる。
「関係ない!? よくそんなことが言えるな!?」
「え?」
「まったく関係なかったら心配なんてしていない!」
「!」
「多少なりとも関わりが出来たから心配したんだろ!」
「え、それは……」
「いつもワガママばかり言って、もう少し周りの気持ちを考えろよ!」
「……」
「そうしないと肝心な時に誰も助けてくれなくなるぞ!」
「……ぅ」
「仕事が順風満帆だからって、いつでも周りが世話してくれると思うなっ!」
「ゴ、ゴメ……」
「それに明理さんは今、必死に君のこと探しているんだ! 大切な家族に余計な心配をかけるんじゃない!」
「ゴメンなさい……」
彼女はかなり落ち込んだ顔になっていた。
「あ、ゴメン。こっちこそ怒り過ぎた……」
「……」
そして明理さんに連絡した後、しばらく光さんと話をする。
「そもそもなんで迷子になったら直ぐ明理さんに電話しなかったんだよ」
「……それは変に頼りたくなかったから」
「日頃よく人に頼るくせに肝心なところは頼らないんだから」
「……」
そして僕は黙っていると、彼女があのさ…と言う。
「私が女優で出資者だから心配したんじゃないの?」
「なんじゃそりゃ? そんなの関係ないさ」
「……」
「光!」
そしたらやっと明理さんが来た。
「もう心配したじゃない」
「ごめん…」
「アパートに戻りましょう。光の分のご飯があるから」
「うん……」
そして僕達は僕のアパートに戻り、料理を温め直そうとする。
「いい。もうお腹ぺこぺこだから、このままで食べる」
「え? でも温かい方が美味しいわよ?」
「大丈夫よ」
そう言って彼女は冷えたご飯を食べる。
「やっぱり冷たいわねっ」
彼女は微笑みながら言うから、僕は明理さんと一緒に呆れ笑いをした。
そして皿を洗っていると、突然光さんが決めたわっ! と叫んだ。
「どうかしたの?」
「私も仕事が無い時はここで暮らすことにする!」
「え!?」
僕と明理さんは一緒に驚く。
「ど、どうして?」
「少し気になることが出来たの」
そう言った彼女と一瞬僕は目が合った気がした。
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