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正座

光は怒っています


10話です

「むむむ……」


 僕はなぜか正座させられて、光さんは怒りに燃える虎のごとく眉間に皺を寄せて僕を険しく睨んでいる。

 どうしてこうなったかというと……、


「えーくしょん!」


 僕は朝5:30頃に肌寒さを感じながら目が覚めた。

(またか……)

 またしても僕は布団の外に出ていて、どちらかの一人が僕の布団を占領していた。気になったが詮索はせず、仕方なく起きて料理を作り始めた。

 三人分の料理を少し手間取りながら作っていると、部屋の中が大分明るくなる。その頃だろうか、隣の部屋を開けただらしない格好のどちらか一方の彼女が起きてきて、


「……え? え!? 明理!?」


 と叫んで現在に至る。


「どうして明理があんたの布団の中で寝ているのよ!?」

「それは……」

「まだ答えて良いなんて言ってないわ!」

「!?」


 そして仕方なくしばらく黙っていると、


「なんで答えないのよ!? さっさと言いなさいっ!」


 そんな理不尽な!?


「僕にも理由は分からないよ。ただ朝起きると、彼女に布団が占領されているんだ……」

「……」


 彼女はひどくむくれているのが段々と落ち着いてきたのか、そういうことと言って椅子に座る。


「明理はねー、よく寝ぼけて別の場所で寝る癖があるの」


 そうなのか。


「時々私の部屋に入って来る時もあったけど、まさかここでもしていたなんて…」


 口調が徐々に強くなってくる。


「良い!? 明理に手を出したら許さないんだから!!」

「は、はいっ……」

「はぁ、もう良いわ。立って料理作って」


 はぁ、やっと解放された。……あれ? 脚が痺れる。いうことがきかない…。

 僕は痺れて体がふらふらし、立ち上がるのがどうもおぼつかない。


「えっ、ちょっ……」

「わっ!」


 僕はドタッと光さんへ前のめりに倒れ、かなり弾力のあるのがほっぺにむにゅっと当たる。


「ご、ごめん…」

「もーーーーーーー!!!」


 彼女は烈火の如く叫ぶ。


「早く起きなさいよーーー!!」

「脚が痺れてなかなか立てない……」

「ふあぁ……どうしたの? 騒々し…………え?」

「あ」

「あっ」


 そして僕はまた(次は明理さんから)正座を要求された。

(早くご飯食べたい……)

 朝食を終えると、光さんは一端マンションに帰るという。制服を取りに行くそうだ。そして我々は先に学校へ登校する。


「うーん…」

「どうした、遠藤? 悩み事か?」


 休み時間に僕が一人自分の席で唸っていると、カズキが不思議そうに訊いてくる。


「あ、いや、悩み事というか……」


 貴方の幼馴染のことについてですよ。特に光さんについて。


「なぜ明……神城さん姉妹は双子だと言ってくれなかったんだ?」

「あれ? 言わなかったっけ? 二人は一卵性の双子でさっ。よく周りからそっくりって言われるから嫌がっているよ。ん? ならお前はどうしてそのこと知っているんだ?」

「え……いや、それは……」


 流石に二人が僕の家に転がり込んだとは言いにくい。うーん、なんと言うか……。


「それは……」

「ちょっとー、なんで付いてきてるの?」

「良いじゃん、別に~」


 廊下の方からよく似た声の二人がうちのクラスに近づいて来た。

(ま、まさか……)

 そして周りからわーと歓声が上がる。


「珍しい、神城さんが二人いるっ」

「神山江美だーー」


 久しぶりに彼女(二人では初めて)がクラスに来る。


「珍しい、光がいるじゃん」

「おっはー、一喜~っ」

「仕事は休みなのか?」

「えぇ、そう。久しぶりの登校ね」

「そうか。なるほどそれでか~……」


 カズキは何かを察したのかこちらを見て、澄ました笑いをしてくる。


「……」

「あら?」


 ふと二人の一方と目が合う。


「へー、あんたもこのクラスなんだ。……あぁなるほど、そういうことね。完全に理解したわ」


 どっかで聞いたことあるフレーズを彼女は少し含み笑いをして言う。どうやら反応的に彼女は光さんのようだ。

 そして彼女達はカズキと他愛のない話をして、クラスから出て行く。


「何しに来たんだろ? あの二人は?」

「さあね~っ」


 今日はやたら神城姉妹がうちのクラスに来た。最近は来なかったのに、一体どういう風の吹き回しだろうか。僕には分からない。

 そしてアパートに着いた頃には彼女一人僕のドアの前に立っている。まだどちらかの判別が出来ない。

 カズキには少しコツを訊いた。


「え? 二人の見分け方だって?」

「お前、二人をちゃんと見分けていたようだから」

「そうだなー」

「……」


 二人とも外見はほぼ一緒(髪型も体型も)だから話し方以外違いが分からない。


「髪を左に分けているのが光の方だ」


 そうカズキから教わった僕は決意を決めて彼女に近づき観察する。


「え? な、何?」

「……」


 彼女は髪を左に分けていた…が、あまり自信が湧かなかったので止めることにした。

(まだ僕には見分けるのは難しいな)


「ど、どうしたの?」

「何でもないです……」


 話の状況から後で彼女が明理さんだと判明した。

(危うくカズキに騙されるところだったぜ……)

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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