あわあわあわのお風呂です
白いもくもくの湯気の中、先に体を温めたとこちゃんとひとちゃんは頭を洗うことにしました。とこちゃんはもちろん自分で洗えます。シャンプーのボトルを一回プッシュして、頭につけてゴシゴシするのです。
とこちゃんはシャンプーを髪に馴染ませて、ごしゅごしゅ泡立てます。お母さんに教えてもらったとおりに指を立ててゴシゴシすると、泡がどんどん出てきます。たくさん泡が出てくると今度はかみの毛をしぼって泡を集めるのです。
ふわふわ泡のできあがり。とてもかわいいあわあわです。
とこちゃんはにこにこ笑って髪についた泡を手のひらの上に集めます。
白いふわふわはフーッと吹けば飛んでいき、やさしく包むと手のひらでプチプチという音を立ててくれるのです。
そして、今日はお父さんと一緒にお風呂の日。あわあわを作るのにはちょうどいい日なのです。お母さんだとフーは出来ません。シャンプーを二回することも出来ません。
「みてーっ」
ふわふわ泡のアイスクリームです。少しおわん型にされたとこちゃんの手のひらにあるもこもこ泡がひとちゃんの目の前に現れました。ピンク色のシャンプーハットをつけたひとちゃんは大きなお口で笑っておねだりします。
「ねぇちゃ、ひともっ」
「ちょっと待ってね」
そう言うと、とこちゃんはそぉっと自分の泡をお膝に乗せて、ひとちゃんの前に座ります。
あわあわの頭のまま、ひとちゃんの頭にシャンプーをぷしゅっとかけたとこちゃんは、今度はひとちゃんの頭をごしゅごしゅさせます。
「とこちゃんは頭洗うの上手だな」
お父さんが湯船につかりながら二人の様子を見てやさしく言葉を響かせます。
「うん」
とこちゃんはにっこり。
「はい、ひとちゃんソフトクリーム」
泡の髪をくるくる巻いて、お風呂の鏡の前にひとちゃんを座らせます。ひとちゃんもにっこり。
「しょふとくりーむっ」
ひとちゃんが一生懸命自分の頭を触ろうと手を伸ばしますが、届きません。シャンプーハットが邪魔なのです。その様子を見たお父さんが頬を緩めてひとちゃんに伝えます。
「それがなくてもシャンプーできるようになったらいいね」
そんなことを言われ、ひとちゃんは慌ててシャンプーハットを握りました。これがなくては、ひとちゃんの目にたくさんお湯が入ってしまいます。お顔にお湯がたくさんかかってしまいます。まだまだこれは大切なのです。
それからもう一度、とこちゃんは自分の頭をごしゅごしゅさせます。
今度はなににしようかなぁ。たくさん泡を作ってフーするのも楽しいし、洗面器いっぱいにするのも素敵です。
考えながら手を動かしていると、いいことを思いつきました。
「ひとちゃん、ひつじさんしよう」
シャンプーハットをお父さんにとられてしまうかもしれないと心配していたひとちゃんでしたが、とこちゃんの言葉に目をきらきらさせました。
「ひつじさんっ。ひとも、ひつじさんするっ」
ひとちゃんの返事を聞いて、とこちゃんもにっこりします。そして、さっきのように泡を集めて、ひとちゃんにぺたっ。ひとちゃんの肩に真っ白い泡がふんわり乗っかります。うまくできたと、とこちゃんは満足です。でも、それでも足りないから、ひとちゃんの頭から泡をもう一つしぼります。
ぺたっ。ぺたっの繰り返し。
とうとう頭から泡がなくなってしまいました。とこちゃんはシャンプーをもう一度プッシュします。
ごしゅごしゅごしゅ。
泡が出来るいい感じの音が聞こえてきます。湯船につかっているお父さんは「あわあわだなぁ」とのんびり言うだけ。もしかしたら叱られるかもしれないとちょっぴり心配していたとこちゃんは、やっぱり叱られないわ、といい気分です。
いい感じに泡が増えてきました。
とこちゃんに泡をつけられたひとちゃんもすっかりあわあわです。泡をいっしょうけんめい作ったとこちゃんもあわあわです。
「ひとちゃん、もこもこ羊さんになったね」
お父さんがその様子を見て、笑いました。ひとちゃんはすっかりあわあわもこもこのヒツジさんでした。
「もこもこっ」
ひとちゃんの嬉しそうな声がお風呂場に響きました。そして、次は自分の番だととこちゃんが張り切った時にお父さんの間の抜けた声が聞こえてきました。
「あ、お母さん」
お父さんの声にびっくりしたとこちゃんが見た扉には、お母さんがバスタオルを持ったまま「まぁ」と呆れてたっているのが見えました。
「かあちゃ、ひつじさんっ」
ひとちゃんの元気な声がお風呂場に響きました。
さて、この後いったい誰が一番叱られたのか、それは皆さんのご想像にお任せしましょう。