消せない
笑顔で去る彼女を見て僕は何もすることが出来なかった。素直に、そう素直に。彼女を綺麗だと思ったからだ。
「またね。」
彼女は確かにそう言った。その一言で僕は楽になった。僕の中でその何気ない一言が約束に変わったから。
彼女は不思議な人だ。言葉1つ、行動1つで人を変えてしまう。僕は彼女を好きだった。
学生時代を思い出して胸が痛くなる。振られてもいない。遠距離になったわけでもない。
僕の中ではまだ彼女は学生のままだ。
辛かった。自らの手で好きだった人を殺したんだから。彼女の赤に僕は染まる。
でも何も変わらなかった。だって学生時代の彼女は生きたままだから。
ふと見上げると、遠くに橋が見えた。