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第91話 提案

「…フフ……フフッ……ハーーーハッハッハッ。ワーハッハッハッ! そうか……そうか……」


 僕が困惑していると、突然イモータルが大声で笑い出した。

 そして何かを確かめるように僕とライアを交互に視線を動かしながら頷いている。

 え? なに? ちょっと怖いんだけど……。

 なんで僕達を見て笑顔で頷いてんの?

 なんかこの状況を打破する為の作戦でも思い付いたんだろうか?

 でも、なんだか僕達を見詰めるその目には既に敵対心なんて微塵も感じられなくなっている。

 それどころか、孫の成長を見て喜んでいるお爺さんの眼差しのように僕の目には映った。


「なぁ小僧よ、一つ教えてくれ。今おぬしは魔力疎外の魔道具……それもパンゲアよりも古い超文明時代の強力なアーティファクトを身に付けておるな? 紋が映らぬところをみると恐らく腕の装具……しかも『覇者の手套』と推測するが、どうじゃ?」


 イモータルはその表情と同じく優しい声で驚くべき質問をして来た。

 今まで起こった事の数々から僕の力が映像に映る以上の力を持っている事に気付いたイモータルは、僕が魔力疎外の魔道具を身に付けていると分かったんだろう。

 だけど、その正体まで言い当てられることに驚きだ。

 『覇王の手套』が有名なのか、それともパンゲア製の魔道具を疎外する程の力を持つ候補が少ないのか不明だけど、今更白を切っても意味が無い気がしたので、母さんの方をチラッと見て僕の正体を教えていいか確認した。

 すると母さんは同意する様にコクリと頷いたのを見て僕は口を開く。


「うん、そうだよ。それと……これ……僕も持ってるんだ」


 僕は言葉に続いて両手から『覇者の手套』を外して左手の甲をイモータルに向けた。

 それを見たイモータルは手を目にかざし眩しそうに顔をしかめる。


「赤い契約紋……それ以上になんと言う身から迸る魔力の輝きじゃ。確かマーシャルと言ったかの? おぬしも人が悪いのう。よもやこの様な少年が『覇者』シリーズの継承者なぞ思い付きもしなかったわい。これではわしが道化ではないか」


 顔は穏やかなまま僕に対して愚痴のような事を零す。

 魔力の輝きってイモータルにはどう言う風に僕が映っているんだろうか?

 それに人が悪いって言われても僕達も生き延びる為に必死だったんだからそう言う風に言われる筋合いは無いと思うんだけどな。


「仕方無いでしょう? あなたの従魔達がマーシャルの事をあなたの探し物って言い出すんだもの。そりゃ大事な息子だもの、隠そうとするわよ」


 まだ少しビビッてる僕が口に出せないでいる愚痴を母さんが代弁するように文句を言った。

 本当に母さんは怖い物知らずだな。


「ほっほっほっ、なるほどのう。それでおおよその状況が掴めたわい。ブリュンヒルド達にはもう少し慎重に行動しろと言っておいたのだがなぁ。恐らく探知機に反応が有ったからといきなり襲って来たのであろう?」


「う、うん。そんな感じ」


 さっきまで僕を殺す気満々だった相手とは思えない程の優しい口調に僕は戸惑ってしまう。

 急に態度変えられると対応に困るよ。


「探知機に恐らく反応したのはおぬしじゃなくスフィ……んんっ。ライアじゃよ。何しろその探知機の目的は原初の四体を探す為の物じゃからな」


「原初の四体だって? もしかして邪竜って……本当にファフニールの事なの?」


「ほっほっほっ、まぁそんなところじゃ。それに『覇者の手套』を身に付けてるおぬしが探知機に反応する筈ないしの。……いや『覇者の手套』を身に付けてなお、投影機に像を結べる程の魔力が漏れ出しておるのだからそれに探知機が反応してもおかしくないか……」


「そうか、そうだよね……ん?」


 邪竜の卵ってのが本当に邪竜ファフニールの卵ってのには驚いたけど、探知機が僕に反応してもおかしくないってどう言う事?

 原初の四体に反応する探知機なんだから『覇者の手套』の効果は関係無く人間の僕に反応する訳無いと思うんだけど。

 なにか例え話的な意味なのかな?


「マーシャルよ。改めて聞くがライアはおぬしの母親がマスターなのではなく、おぬしがマスターなのであろう?」


「あぁそうだよ。僕の従魔……ううん、大切な僕の娘だよ」


「あい! ぱぱだいすき」


 情報の整理で頭が追い付かない僕だけど、これだけは何を置いても自信を持って言えるよ。

 ライアは僕の娘だってね。

 その言葉を聞いたライアが僕の膝から起き上がり抱き付いてきた。

 その様子をイモータルはなぜか少し寂しそうな笑みを浮かべて目を閉じ小さく呟く。


「娘か……そうか……。絆は夢幻ではなく、確かに()()()……のだな」


 その言葉は喜怒哀楽様々な感情が込められている様に思えた。

 まるで魂から零れた慟哭の様だ。

 ただそれを言った後に急に溜息を吐き、少しジト目で僕を見てきた。


「ふ~む。しかし、絆の形が()()とは、おぬしの趣味なのか? 少々将来が心配になってくるのぅ」


「ちょっ! ちょっと待ってよ! 違うって! 趣味なんかじゃないって! それを言うならあなただってダークエルフって美人なお姉さんばかりなのも僕としてはどうかと思うんだけど」


「何を言うか。ダークエルフはロマンじゃぞ」


 うわっ、開き直ったよこの人。

 なんか母さんみたいな事言ってるし、話し合いそうだな二人共。


「わっはっは! 冗談はここまでにしておこうか。それより、すまなかったマーシャルよ。おぬしの事を雑魚だなんだと罵ってしまった事を詫びよう。一連の驚くべき異能の数々。トワコの後継者だけにのみならず、『覇者』の継承者。しかも『万象の加護』まで受けておるとは、いやはや驚きじゃわい。恐らくまだ何か隠しておるのじゃろ? のうマーシャルの母よ」


「まぁね。けれど、これ以上はお口チャックってやつよ」


 聞いた事の無い語句が出て来たので聞こうと思ったのに、話の先が急に母さんに行ってしまったので聞きそびれてしまった。

 『万象の加護』って何?


「お口チャック? チャックとな? わはははは、この世界にチャックなどと言う言葉は有りはせんぞ。()()()()そうなのか?」


「う~んどうでしょう? ご想像にお任せするわ。少なくとも私は()()()()()()()()()とだけは言っておくわ」


「なるほど転生……と言う訳か。ふむ、おぬしとは一度ゆっくり話をしたいものよのう」


 なんだか更に僕の理解を超える話が母さんとイモータルの間で繰り広げられている。

 お口チャックってのはたまに母さんが使ってる言葉だから慣れちゃったけど、イモータルにとって興味をそそられる言葉らしい。

 しかし、またテンセイって言葉が出てきたな。

 一体テンセイってなんなんだろう?

 それよりやっぱりこの二人気が合いそうだ。

 敵である老人と仲が良い母さんってのは、なんか嫌だけど。


「あらナンパ? これでも私は現役人妻なんだから、そう言うお誘いはご遠慮させて頂くわ」


「わーーはっはっは。こりゃフラれてしまったわい。まぁ、よかろう。そろそろ邪魔が入りそうだし本題に入るとしようかの。では改めて、マーシャル。良くぞ『絆魔術』を完成させたな。見事じゃ、おぬしこそ我が宿敵に相応しい」


「へ? あっ、はい。どうも」


 急に褒められた僕はどう返したらいいのか分からず、生返事以外返せなかった。

 さっきはついツッコンだりしちゃったけど、この優しい態度は僕達の油断を誘っている可能性は否定出来ないし、いつまた豹変して襲い掛かってくるかと思うと気が抜けない。

 しかし、イモータルはそんな僕の緊張を察したのか、その胸の内を語りだした。


「そう緊張するでない。先程言ったであろう。宿命の相手であるおぬしが弱いと思ったから怒り狂ったまでの事。何の為に儂がこの世に戻されたのか! と。じゃが今は喜びに打ち震えておるのだ。よもやあの試練全てを乗り越えし者が現れてくれるとはな。かの日、試練の数々を聞いて『師匠は馬鹿だ』と怒っていたアレイスターくんだが、自分の子孫が後継者と知ったらどんな顔をしたであろう。そう考えるだけで笑いが止まらぬよ」


 イモータルはとても愉快そうな顔で昔話を語っている。

 三百年前の事をまるで昨日の様に語られるのはなんだか奇妙な感じだ。

 しかし、僕の先祖を『くん付け』で呼ぶなんてそれだけ親しかった間柄なんだろうか?

 なのになんで従魔戦争なんて起こそうとしたんだろう?

 あの世から戻されたって言ってたけど、蘇生の魔法なんて精々死後一日二日しか効力が無い。

 百年以上前に死んだ人間を生き返らせるなんて伝承の中にも存在しないよ。

 サイスはダークエルフの創造主の事をパンゲアの生き残りと疑っていたようだけど、創造主は蘇らされたイモータルだった訳なんだよね。

 しかも蘇った事自体はイモータルも本意でなかった様だし、与えられた試練に憤っていた。

 ……あれ? と言う事はイモータルを蘇らせた奴は別に居て、それが人類を滅ぼそうとしているって事?

 イモータルが僕の宿敵には違いないけど、新たなる魔王は他に居るのか?

 僕がその事を尋ねようと口を開きかけると、又もや先に母さんが喋り出した。


「ねぇ、さっき邪魔が入るって言ってたけど、どう言う意味なの?」


 あっ、そう言えばそんな事を言っていたっけ。

 なんだか驚く事ばかりで頭から抜けていたよ。

 その事も気になるんで僕の質問はその答えを聞いてからにしよう。

 そんな事を思いながらイモータルの回答を待っていたら、その答えはドリーからもたらされた。


「マスター。どうやら冒険者と思われる人間が六人程こちらに近付きつつあります」


「何ですって? 冒険者達が? ここに?」


 僕と母さんはドリーの方に振り返る。

 ドライアドは故郷の森の中では周囲の状況を把握出来る能力を持っている。

 その正確さはダークエルフ達の襲撃で証明済みだ。

 と言う事は本当に冒険者がここに向かっているんだろう。

 助けが来た……と言えるのかな?

 変に和やかになった今の状況的では良く分からなくなってきたよ。


「左様、先程の騒ぎを聞き付けて来たのであろうよ。のうマーシャルよ。提案が有るのじゃが聞き入れてもらえぬか? なに、それなりの報酬は約束しよう」


 報酬てのにはちょっとトキメクけど、今の和やかな雰囲気がおかしいだけで、僕達は敵同士なんだから安易に提案を呑んではいけないと思う。

 一旦はその提案を聞いてから判断してもいいだろう。


「な、なにかな? あんまり変な事だと、うんって言えないんだけど」


「なーに、簡単な事じゃ。儂はまだ冒険者共に存在を知られたくはないのでな、儂らがこのまま撤退するのを黙って見ていて欲しいと言う話じゃよ」


「へ? それだけでいいの?」


 それはある意味願っても無い提案だった。

 元より僕らはそうなる事を狙っていたのだから。

 それともイモータルは何か企んでいるのだろうか?

 う~ん、どう答えたら良いんだろう?


書きあがり次第投稿します。

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