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「って言われてもなあ……あんなに言われても応えられっかな……」
独り言をこぼしながら二人のLINEを待っていると、開きっぱなしのグループLINEにスグルからのメッセージが届いた。
浦井 俊〈カンタ、あいつ滅茶苦茶言うよな〉
悪口を言うでもなく「仕方がないやつめ」と思っているらしい雰囲気が伝わってきて思わず、ふふ、と笑いが漏れた。
麻婆豆腐〈たしかし(笑) でもあいつが言ってることに間違いがあったこともなかったよな〉
マサシも可笑しそうに言いながら、どこか楽しそうだ。
K・K〈普段やってることはちゃらんぽらんだけどな 嘘つけねー性格なんだろ〉
麻婆豆腐〈そうそう、マジレス? しかできない奴〉
浦井 俊〈でもしょうもない嘘もつくよな〉
麻婆豆腐〈意味わかんねえ〉
K・K〈意味わかんねー〉
俺のディスりが始まったところで愛ある陰口が交わされたが、そういう場合ではないと切り込んでみた。
K・K〈てか、今回のテーマどうする?〉
しばらく待つと、
麻婆豆腐〈どうしよっか? まず歌詞とか曲とかから作って決めたりは?〉
浦井 俊〈どうだろ まとまるかどうか、わかんなくなると思うけど〉
麻婆豆腐〈なきにしもあらずなー〉
K・K〈テーマなー〉
誰かが提案するのをジリジリ待っているのがわかる。時が止まったかと思えるほど無言が続くが、五、六分ほどして痺れを切らした。
Sntr〈あーそうだった〉
そこから返事をするのもかったるく画面を閉じると、シンタから画像が送られた通知が届いた。
開けてみると、そこにはインスタグラムのキョウコのアカウントのスクショが貼られている。
K・K〈なに、ケンジとキョウコ別れたの〉
Sntr〈みたい まるでケンジをかばうみたいに書いてるけどさ これってなんか〉
K・K〈変にアピってんな(笑)〉
そのスクショにあるのは、キョウコとケンジが同じ画面に幸せそうな笑顔で写っている上にかぶせて何やら意味深な文章を加工で書き加えられている画像。内容は、
〔ずっとずっと、ないものねだりして
それでも私は可愛い女じゃないから
「そばにいてよ」って言えなかった。
わがままを言って、嫌われるのが怖かった。
あの日誓った「いつか」や「ずっと」を
手放してごめんね。
大好きでいたかったよ。〕
Sntr〈だいぶ酔ってんねー(笑)〉
K・K〈しかもこんなとこに書くかよ(笑)女って怖えー〉
K・K〈で、「面白いこと」の提供はこれ?〉
Sntr〈これ(笑)なんかつまんなくてごめん(笑)〉
K・K〈マジでつまんないわ(笑)〉
Sntr〈(笑)〉
Sntr〈とりあえず報告ということで(笑)〉
K・K〈おっけ、じゃ〉
Sntr〈じゃ〉
なんてことない報告だった。
これで、少しは「サンタモニカ」に行きやすくなっただろうか。しかし、興味が薄れているような気がした。何故だろう。少し離れて、「あそこに居場所を求めるのは何か違う」と思えるようになったのかもしれない。
少しは大人になれたか。ここで馬鹿騒ぎするのを辞められたら、少しは落ち着いた人間になれるかもしれない。
なんて薄っぺらな価値観こそがまだまだ子どものように思えて、やはり情けない俺は情けないままだった。