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「次、何か飲まれますか」
そう聞かれて再び相手の顔へ目をやると、ん、と気が付く。若いと言えどあまり俺と歳が変わっていないように見えるのだ。店に入ったときに見た感じだと、二十に入ったくらいに見えたが、ちょうど大学を卒業したばかりか、何年か経ったかのように見えなくもない。
モスコミュールで、と答えると、ついでに、という雰囲気を含むように続けて問いかけた。
「君、いくつなの」
「いくつに見えますかね。結構若く見られるんですけど」
若い男は、それ訊きますか、とか、そら来た、と言いたげに片眉を上げて首を引いては可愛い子ぶるように唇を小さく結んでみせてきた。その後、揶揄うような、人をわざと苛立たせるような態度に思わず、面倒臭いな、とわざとらしく眉をしかめると、男は小さく吹き出して、
「あはは、嘘ですよ。二十三です。大学卒業して一年目くらいの年齢じゃないですかね」
どこか、大勢多数とは離れた環境のように口にする様子から見るに、彼は大学には行っていなかったのだろう。
「加地さんも、俺と同い年か一つくらいしか変わらないですよね」
「まあ、そう。去年二十四になったばっかり」
「ばっかりってことは十一月か十二月生まれですか」
「そういうことかな。意外とわかるもんだね」
言って、肘を突いたまま相手を見上げると、はい、と目の前にライムが引っかかったグラスを置かれた。ことり、と、最低限の音を立てて。
グラスを手に取ってから、そういえば、とまた奥の方へ視線を流してみると、二人の男はちょうど席を立っているところで、あの白い男はもう片方の男にかばわれるように扱われながら椅子から降りていった。
あまりジロジロと見ているのも、と思って逸らした目の端では、男同士にしては不自然に肘や腕同士を軽く当てながらドアの向こうへ消えていった。分厚いベルの音は、あの人への興味を忘れさせようとしているように聴こえた。ドアがガチャリ、と閉まると、それがスイッチみたいにタイミングよく店内の曲が変わった。