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最強ギルドを追放された荷物持ちの成り上がり~最強兵站能力で無双~  作者: ボブサッポ
3章 輪廻編「女子大生がマヨネーズで議員になります」
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31話 額面どおりにしか読み解けない人による喜劇

 党事務所に戻り『唐揚げに檸檬をかけない党』の吸収合併案を私は提示しました。


「二人増えることになります。向こうはポストを求めていません。ですから構いませんよね?」

「僕は嫌です」

「わたしもイヤ!」


 予想に反して反対意見が出てきました。しかも二人。何か見落としあったかしら?

 損になるようなことがあるなら検討し直した方がよいでしょう。反対意見の二人に訊ねてみます。


「メイヤーさん、理由を教えていただけますか」

「僕は唐揚げには檸檬をかけるからです」


「……ベッカーさんは?」

「わたしもです。唐揚げにマヨネーズは駄目!絶対檸檬をかけます!」


 想像の斜め上でした。いえ、上に飛んですらいません。障害物競走でこちらがハードルの飛び方を考えていたのに、開始一歩目に高度1ミリの砂粒に躓いた感じ。え、そこなの?


 二十五年の私の人生で培った常識によると『唐揚げに檸檬をかけない党』と書かれていたならほぼ自動的に「少数派への配慮もしましょう」と訳するはずでした。マヨ是会も同様です。


 勿論その度合いまでは読み取れませんから、そこは公約を読み党員の普段の発言を聞く必要があるでしょう。小説で読んだジパヌグとかいう国では「今まで虐げられてきたボクたち少数派に多数派が跪きやがれ!」的なお子様じみた党が描かれていました。度合いのおかしいこんな党かもしれないわけです。

 唐揚げ檸檬とマヨ是会はというと、どちらも多数派にあまり負担をかけたくないという考えでした。ですから実質同じ党だと判断したのですが、メイヤーさんとベッカーさんにとってそもそもマヨ是会自体が私の考える理念と大きく違っているようでした。


「あの、お二人はどうしてマヨ是会に入ったのですか」

「どうしてって、僕はマヨネーズが嫌いだからです。世界からマヨネーズを駆逐するためです」

「マヨネーズを食べた人は全員死ねばいいってわたし思うんです」


 ジパヌグ的なお考えの方たちでした。確かに私にも責任はあります。会の理念を明確に言語化して説明したことはありませんでした。でも……それ必要なんでしょうか。


 表面的には若者のノリで「マヨネーズかけんなー」と叫びつつ、心の内では皆当然のように「少数派にも多少の配慮をー」と翻訳するのが二十歳過ぎの人に最低限求められる能力だと私は考えていました。額面どおりマヨネーズを否定する党だと認識してしまう大人がいることに驚きつつ、もしやこの二人だけではないのかという不安がよぎります。


「ルソーさん、投票してくださった方の支持理由一覧ってもう集計されました?」

「今日出るはずです。ちょっと確認してきますね」


 副代表のルソーさんが隣の電算室に向かい、すぐに戻ってきました。手にした紙を眺める顔付きは困惑そのもの。


「もしかして、マヨネーズが嫌いだから投票したって人が8割を占めているなんてこと……」

「いえ、その理由の方は2割でした」


 よかった。いや、2割でもかなり高いと思いますが……まだその程度なら何とかなります。


「6割の方は、ローラン代表が可愛いからとのことでした」

「ありがとうございます……他の選挙と勘違いしていませんそれ?」


 確かに握手はいっぱいしましたけれど、ここアイドルグループじゃないわけで。理念も何もない投票理由に顔が青くなっていきました。


「みんな若いからつい、というのが1割。党の理念を理解している方は2%程度ですね」

「は、はは……そうですか、2%でしたか」


=───=───=───=───=


 どちらにせよメイヤーさんベッカーさんのお二人とは今後一緒にやっていけそうにないことから、話し合いの末に二人は党を離れることになりました。代わりに唐揚げ檸檬のお二人が党を解散して合流いたしました。


 メイヤー、ベッカー両名は『マヨネーズおよびその使用者を撲滅する党』を立ち上げました。マヨ是会の支持者の1割はそちらに流れていきました。あの感じだと次の選挙でも当選しそうですね。


 これで一件落着、とは勿論なりません。私たちには次の試練が待ち受けているのでした。

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