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18話 切手とワープロ

通称ギメ会の係長ペレスは今日もお金に困っていた。

電線の転売ができなくなってしまった。


今月あと30万円を稼がなければいけないのだ。

そうしないと金融ブラックリストにのってしまう大ピンチだった。


「くそっ、小口現金は管理の目がきついし・・・どうする!

僕が現場に行くと副支部長が飛んできやがるし」


建設業の現場は本社本部はもちろん管理職の目もあまり届かない。

だから昔は不正なんかやりたい放題だったと聞いたことがある。


ところが最近はチェックがめちゃくちゃ厳しくなってきた。

おまけに利益率も下がっている。着服が難しいのだ。


「でも本部で転売なんかしたらすぐバレるしなあ・・・。

なんか売れそうなものないかなあ」


ペレスは今日もゴーグル検索を調べた。

そしてオリジナルのすごい手口を編み出した。


+  +  +  +  +


「あのお!営業三部二課がパンフレット1万部送るから切手持ってきてっていってました!僕が持っていくのでください!」


ペレスは経営管理本部総務部庶務三課業務係の運送担当者のところに行った。

担当者は申請書を見せるように言った。ペレスは営業三部長が押印承認した申請書を見せた。


『切手申請書』

①申請数:1,000O枚(1枚63円)

②申請理由:在庫処分セールのパンフレット送付のため


「枚数の最後だけ筆跡が違うんですけど。あとカンマの位置も」

「そそそそんなことないと思うぞ!でも再確認してくるぞ!」


即ばれた。


+  +  +  +  +


「おい係長、今日は俺の新しいパソコンがくる日だな?」

「これです!最新のパソコンで25万円もしました!」


会計課の課長に言われてペレスは答えた。

ヒャーレットパッカンドーンの最新ノートパソコンを買ったのだ。


課長はパソコン音痴のくせに見栄っ張りだった。

でもそのおかげで24万7000円稼げそうだ。


ペレスが差し出したのはワープロだった。1台3千円で買ってきた。

何?ワープロを知らない?ハハハそんな馬鹿な・・・えマジで?


課長は人差し指の1本打法で文章作成することしかできない。

最新パソコンと言ってワープロを渡してもバレるわけがなかった。


「いやあ楽しみにしていたんだ。こいつ画面が360度回るんだろ?」

「へ?」


そういえば型番に×360とか書いてあった気がする。

普通なら150度ぐらいが限界なのにキーボードの裏までひっくり返せるパソコンは確かにあった。


「ハ、ハハハ!でもあんまりやるとよくないらしいっすよ!」

「いやあでもこれでヨウツーベーを見るときキーボードが邪魔にならなくていい。嬉しいなあおい」


課長はそういって渡したワープロをぐるんとやろうとした。

しかしもちろん回り切るわけがない。


「おや?おかしいな・・・それに思っていたよりかなり重くて分厚いぞ?」

「課長ちょい貸してください! ふんっ!!」


ばき!という音とともにヒンジが折れた。

呆気に取られている課長他10人の前でペレスは見た目は子供頭脳は大人の眼鏡坊主よろしく「あれーおかしいなー」ととぼけた。


「なんか不良品だったみたいっす!すぐ取り換えてもらってきます!」


結局3000円払ってワープロの残骸だけが手元に残った。

ゴミに出したら廃棄代を取られてしまった。

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