17話 電線を売れ!
新人ギルド設立協会ピメール支部経営管理本部経理部会計課会計係
通称ギメ会の係長ペレスは今日もお金に困っていた。
副支部長のはめられて50万円を失ったのだ。
来月までに用意しないと金融ブラックリストにのってしまう大ピンチ。
だがどうにもうまい手が思いつかなかった。
何より副支部長の睨みがきいていて何かやってもすぐばれそうだ。
「ちょい現場の手伝い行ってくるぞ。今日は直帰」
「どこの現場ですか?定時前にいるか電話するって副支部長が言ってます」
赤髪爆乳美少女のドリタが言った。
くそおおおぉぉぉ!!!上司に毒づいてペレスは出かけていった。
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ギメ会の本業は新人ギルドの仲介だった。ただ他にも手広くやっている。
そのひとつが建設業だった。
ギルドでクエストという名の単純な力作業をやっていると体力がつく。
ランキング上位を諦めた奴が勇者から転職するには丁度よかった。
「おいトム、ちょっといいか」
「なんすかペレス係長」
ペレスは一歳年下のトムを呼びつけた。この現場の代理人をやっている。
中規模の建物なのでギメ会の職員はトムひとりだけだった。
「今月もらえそうな短期間の小さい工事どれぐらいある?」
「予算消化のタイミングっすから10近く出そうっす」
しめた。ペレスは舌なめずりした。
ひとつ30万円程度の小さい工事でも積もればでかい。
「ここの工事費率はどんなもんだ?儲けやすい方だろ?」
「88から90っす。大体それでいつも取ってるっす」
工事の費用というのは材料費や労務費や経費にトムたち現場職員の人件費をのせたものだ。
100万円で受注して工事の費用が90万円なら工事費率は90になる。
ここにペレスたち現場に直接関わらないコスト、販管費がのっかる。
ギメ会では工事費率が94なら給料を払った上で黒にも赤にもならないとされていた。88や90ならすごい優良顧客だ。
「んーとだな・・・30万円が10件で300万円で・・・費率1が3万円だから・・・88を94にしても18万円!うっしゃ!」
ペレスがひとり盛り上がっていた。トムはいつものことなので反応しない。
ペレスは言った。
「なあなあ、工事費率94になるまで電線買ってくれよ銅たっぷりのやつ」
「電線?銅?今回の工事にはあんまり使わないぞ?」
ちっちっちっ、ペレスはちっちっちっをした。
この僕の天才的頭脳は凡人にはわからないんだなもーぐへへ。
「いいか太い電線は銅がいっぱい入ってる。んでもって銅は売れるんだ。
業者に持ち込めば名前を言わなくても買ってくれるんだぜ」
「おおーすげーさすペレさすペレ」
大物の機材だとさすがにバレるが電線なんかどの現場でも使う。
目立たなくておまけに売れるから必要なくても利益分を使い切って買って、後から売れば大儲けできるのだ。
「小工事で比率94を切ったら報告書いるけど94ならセーフだかんな。
電線どれぐらい使うかなんざ現場の担当者しか知らんし」
副支部長なんか絶対きづくわけがない。やっぱり目のとどかないとこに限る。
ペレスは舌なめずりした。それからちっちっちっをした。
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「副支部長からデータまとめろって。トムの現場の過去履歴」
金髪美少女のグリタが、青髪美少女のバリタに言った。
「なんかあった?」
「しらない。でも太い口径の電線がどれぐらい使われたかと平均費率が知りたいってさ」
それだけ聞くとまるでトムが電線を架空発注して転売したように聞こえる。
まさかそんなわけないけど。カビが生えたような古臭い不正だし。
「ペレス係長、データまとめで今日は残業1時間しまーす」
バリタが係長にそう言った。
ペレス係長はお腹痛そうにしてうめいてた。




