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12話 撃滅、ブラガ騎馬隊

ピメールの外壁と二重の濠が着々と整備されると共に、トンデラの要衝たるパレホ城の攻略準備も進められていった。


しかしこの作戦を成り立たせるには、先に敵の同盟村であるブラガの騎馬隊を叩くことが必須である。

このため南方へ向かう城攻略部隊500人のうち80人が東方へ転進した。


命を受けて三日、騎馬隊を迎え撃つべく築かれた野営地にペレスは到着した。

だがその有様にペレスも他の者も顔をしかめざるを得なかった。


「おいおい何だここ、ピッツァを焼く窯ひとつねえぞ」

「バスクチーズケーキは?バスクチーズケーキはどこだ?」


冷蔵庫もろくな調理器具もなくまるで戦場のようにテントの並ぶ中、ピメールの同盟国マインツの部隊長が出迎えにきた。


「貴公がピメールの隊長ペレス殿か。よくぞ参られた」

「何もないところだな。ここで奴らを食い止めているのか」

「ええそうです。ここはよい、毎日好きなだけ戦うことができる」


隅のテントには包帯でぐるぐる巻き巻きの男が何人も見られた。

マインツ部隊長が気にする様子は窺えない。


作戦会議室と銘打ったこの場も壁などなく、ボロ布が仕切り代わりである。

明かりは木の枝にぶら下げられたランプが四つあるばかり。

電気はパソコンと電話にのみ集中させているようだ。


マインツの男はビールとポテトだけで五年は戦えると聞く。

どうやらその噂はあながち誇張でもないと見えた。


+  +  +  +  +


翌早朝、ペレスたち転進部隊はマインツと共にブラガへ奇襲を仕掛けた。

日が昇る前の暗い道を明かりひとつ灯さずに突き進む。


ずずっ、ずずっ、乾いた赤土に足を引きずる低い物音だけが続いた。

これが隠密部隊特有の走り方である。決して踏み鳴らしてはならない。


深い森を抜けた頃にようやく朝日が昇り始めた。

そこでペレスは自分たちが敵部隊のわずか200メートル前までせまっていたことに気づく。


敵の歩哨はまだこちらに気づいていない。

ペレスは味方全員に腰をかがめるよう指示し、もう50メートルほどその距離を詰めた。


騎馬隊の強みはお馬さんである。お馬さんはすごくつよい。

ならばお馬さんをどうにかすれば勝てるのである。


ピメール・マインツ連合軍は皆そろってリュックをゴソゴソした。

取り出しましたるは赤い人参でござった。


「ものども!かかれえええぇぇぇ!!!」

「ウオオオオオォォォォォ!!!!!」


鋒矢の陣で敵部隊のど真ん中へと突っ込む。右手には武器、左手には人参。

男どもの野太い怒声に寝起きの悪いブラガの兵士たちも目覚めさせられた。


慌てて馬に飛び乗り迎え撃つも塊ではなくバラバラでは効果半減である。

戦力の逐次投入はいかんのだ。騎馬隊は斜めに三騎一組が最強で単騎ではほとんど力を出せないのである。


加えてあと一歩まで迫ったところで急に馬たちが直角に急転回した。

左手に掲げた人参を真横に放り投げられ、馬たちがそれに釣られたのだ。


モーゼの河割りのごとく騎馬隊が割れる中、矢印の陣形で突き進むペレス様ご一行は敵の大将と相まみえた。

この状況にも関わらず大将ベークはハムエッグを食べていた。


「目玉焼きには醤油派?」

「俺はソースだあああぁぁぁ!!!」


ペレスは敵大将の首を討ち取った。そして勝鬨をあげた。

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