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1話 ビルバオの運送屋

「最強の冒険者にボクはなる!」


そう言って田舎を飛び出してから5年、今月19歳になった。

僕、ミケル・ペレスは準強豪ギルド「ビルバオ」で活動している。


これまでに多くのクエストに参加してきた。

SSS級のドラゴン討伐やSSS級の魔女狩りも成功させた。


今日もSS級のオーガ退治の作戦会議に参加している。

部屋に入ったのはついさっき。会議はあらかた終わっていた。


「あのお・・・今回は何人で何泊ですか?」

「なんだお前か。前線6人の後衛3人、4泊予定だ」


剣士のベンゼム様に声をかけるとそう教えられた。

ふむふむ。それだと馬車は2台で足りそうだ。


「それからこの前の馬車、あれ乗り心地最悪だった。別のとこにしろ」

「わ、わかりました!」


マルク商会に発注するつもりだったのを慌ててやめた。

でもどうしよう。今月はクエストが多い。どこにあたればいいだろう。


「運搬の予算はどれぐらいですか?」

「いつもどおりに決まってるだろ。9人で5日だから45万Gだ」


そう言ってベンゼム様は行ってしまった。

僕は会議室にひとり取り残された。


+  +  +  +  +


「やっぱりやってくれるとこないなあ・・・」


知っている輸送業者に電話したけど断られてしまった。

電話する前からうすうすわかっていたけど。


最近魔物が増えている。それでなくても夏はとくによく出る。

馬車業者はあまり増えてないから普通に考えたら単価が上がる。


でもビルバオでは1人1日1万Gと決まっていた。

行先が険しい山でもタイトな日程でも変わらなかった。


そういう限られた予算で運搬の手配をするのが僕の仕事だった。


ちょっと前までなら準強豪ギルド「ビルバオ」の名前で何とかできた。

クエストが少ない時の受注に繋げるため繁忙期は利益ゼロ、何なら赤字でやるとこもあった。


でも最近は冬場でもクエストがそこそこある。

ビルバオからの仕事がなくても他のギルドの仕事でやっていける。


そのせいで強気な態度の業者が増えてきた。

さっき電話したとこも「何電話してきてんだ」みたいな態度だった。


仕方ないのでマルク商会とボット運送の担当者を呼びつけた。

2時間後にそれぞれのビルバオの担当者がやってきた。


「9人で4泊5日、40万5千Gでやって」


僕はマルク商会の担当者に言った。


「いやペレスさん、このご時世に単価9千はやっぱキツイっす」

「平地単価で1万1千、森なら1万2千でも安いっすよ」


二人がそう言った。確かにそうだと思う。

でも予算がないんだから仕方ないじゃんか。


「まあそう言わないでやってよ。

あと剣士の人が別のとこにしろって言うから、うちはボット運送に発注、ボットからマルクで。

ペーパーマージン5千のせるからいいよな?」


これで実際来るのはマルク商会の馬車だけど名前はボット運送になる。

ギリセーフだ。


「で、接待費はいくらくれるんすか」


ニヤリとしてマルクの担当者が言った。

直接呼びつけたのはこの話をするためだった。


「マルクに2万、ボットにも2万だ。悪くないだろ。

先月できた近くのステーキ屋に行こうぜ」


41万で出来る仕事を予算いっぱいの45万で発注する。

差額の4万はビルバオの接待費にあててもらう約束で。


そうすれば安月給じゃ絶対食えないステーキも食べられた。

担当者も接待名目で食える。だからこんな安値でも営業は受注してくれる。


「了解っす。でもペレスさん、そろそろ単価は考え直してくださいよ。

社内じゃ俺も睨まれてるんで。こんな仕事取ってくるなって」


マルクの担当者はそう言った。でもあのニヤニヤ具合からしてもうしばらくいけそうだ。

僕は二人を帰すとステーキ屋に予約の電話をした。

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