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 黒炎を操ってクラスメイト達を追い詰め、ついに七階層まで到達した。

 ゴール地点、グリントロル待ち構える八階層まであと少しだ。


 七階層は、六階層よりも遥かに道や分岐の数が増える。

 行き止まりも多い。

 その上、黒炎に隠れながら俺が追いまわしているので、一度通った道は引き返せない。


 レイアは必死に頭を捻って上階層へのルートを思い出しているようだったが、段々とその足取りが自信なさげになっていく。

 途中少々遠回りはしていたが、決定的な下手は踏んでいない。

 全員炎に巻き込んで終わりでは味気ないので、俺としてもありがたい。


「あの黒炎の奥に、立っている奴がいたんだ。あいつが、僕達を……。あいつさえ倒せば……今も、あの炎の向こう側にいるはずなんだ!」


 ちらりと国木田くにきだが俺の方を見る。

 しかしそれなりに距離があることと精霊魔法のお蔭で炎の中から俺とエレを見つけることはできなかったようで、すぐに前を向き直す。


 国木田の提案に対し、レイアは首を振って否定する。


「無力化できれば黒炎を解除できるかもしれませんけれど、その策は諦めた方がいいでしょうね。何人掛かりでやっているのかわかりませんが、火の規模から見ても戦力差は明らかですので。どうにか、逃げながらレッドタワーから脱出する方法を……」


「喋んじゃねぇクソアマァッ! テメェのせいで殺されかけて、片腕まで失ったんだぞ! どう責任取ってくれんだぁっ! 返せ、俺の腕を返せよっ! 死ねっ!」


 京橋けいばしが裂けんがばかりに大口を開け、レイアを怒鳴りつける。

 レイアはそれに反応を返さない。

 道を思い出すのに必死なのだろう。


「なんか言えやクソアマァァッ!」


 京橋の絶え間ない批判で思考が乱れたのか、左右の分岐路でレイアが一瞬立ち止まり、左に置き掛けた足を戻し、怖々と右側の通路に置き直す。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 本当に、右であってるの!? 今、迷ったわよねぇ!」


 遠藤えんどうがレイアに突っかかる。


「……迷ったのは認めましょう。でも、ここは右で間違いありませんわ」


「嘘よ! 言い切れるんだったら、最初から間違うわけないじゃない! 間違えたら死ぬのよ! わかってんの!」


 遠藤は叫んでから、左側の通路に腕を伸ばす。


「絶対! ぜぇったいにこっちよ!」


「エンドウさん、アナタ、ここに登るのは初めてでしょう? 私が信用できない気持ちはわからないでもありません。安全を保障した結果が、この惨状でございますからね。ですが、だからといって私の逆が正しいなんて……」


「三回よ! 三回、同じような分岐があったのを覚えてるわ! 左が壁側で……右が内側で……通路の長さも同じで……三回とも、右だったの! だから、絶対次は左よ! そうに違いないわ! 私が設計者だったらそうするもの!」


 遠藤の主張に、その場の誰もが沈黙した。



 俺も黒い炎の中からその会話を聞きながら、首を傾げる。

 そこまで似たような分岐路があって、右続きなどあっただろうか?


「エレ、右だったよな?」


「そうですね」


 エレは図面を確認もせず、あっさりとそう返す。



「私は左行くから! 皆も、私について来ないと後悔するからっ! レイア! アンタだけ袋小路行って、炎に追い込まれて焼死すれば!」


「ちょっと遠藤ちゃん!」


 クラスメイトの制止を無視し、左側の通路を走っていく。

 残された連中は分帰路に立って遠藤の背を眺めていたが、俺が黒炎の燃え広がるペースを上げると、レイアが右に走ったのをきっかけに全員がその後を追っていった。


 途中で後ろを振り返った遠藤は自分に続いている人間がいないことに気づき、「どうなっても知らないから! 私の勘、絶対当たるからぁっ!」と叫びながら直進通路を走っていく。



「あの道は、曲がったところで行き止まりですね」


 ぽつり、思い出したようにエレが零す。


「どうなさりますか御主人様? 死に様を確認しに行きますか?」


「いや、いい。曲り角まで距離がありすぎる。遠藤を追っている間に、集団の方にも動きがあるだろう」


 俺は右側の通路に足を踏み入れ、クラスメイト達の後を追う。



「なんでさっきの人は、左側にこだわっていたのでしょうか? 話していた根拠も、酷く浅慮で滑稽なものでしたし」


 エレは首を傾げ、遠藤の奇行の理由を問う。


「左側の通路は、塔の外側寄りだっただろ。そんで、右側は内部に入っていく方。レッドタワーから出たい出たいと考えていたから、内部に入っていくのがストレスだったんじゃないのか?」


 それに人間は不安になったとき、中央よりも端にいたがるものだ、という話を聞いたこともある。


「なるほど、そうだったのですね! さすが御主人様!」


「ただの仮説だ。ひょっとしたら遠藤の勘が天才的で、あっちの通路が本当に正解なのかもしれねぇぞ」


 冗談だったのだが、エレは懐から訂正印だらけの図面を取り出す。

 七階層分のページを捲り、今いる位置へと目を走らせる。


「やっぱり右ですよ」


「だろうな」


 黒炎の燃え上がる音に紛れ、遠藤の悲鳴が遠くから聞こえてくる。

 これで木村きむら井上いのうえに続いて遠藤が退場した。


 これで残りはレイアを含めて6人だ。

 男が2人、女が4人。


 レイアに恨みはないのでできれば生きて返してやりたいが、それをすればこっちのリスクが跳ね上がってしまう。

『ダークエルフに転生したけど魔力を持て余す』

http://ncode.syosetu.com/n3958cu/

現在11話まで公開しています

とりあえず切りのいい所まで投稿できたので、こちらもぜひよろしくお願いします

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