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もと勇者御一行様 ~還暦からの世直しじゃ!~  作者: 永月裕基
止まった時間が生んだもの
16/44

会議

レイナルドが倒れた時と同時刻。ルドルフは湿地帯調査の会議を終えようとしていた。


―このような状況です」

湿地帯の説明を終えた兵士がそう言うとルドルフを始めその場にいる全ての者が難しい顔をした。

「つまりこういうことじゃな」

「湿地帯を6エリアに区分分けして調査をしていたが、3エリアでどの部隊も消息を絶ちそれ以上のことは分からないと。しかも1・2エリアはほとんど湿地化が進んでおらんから参考にならないということじゃな」

ルドルフが会議の内容をまとめると議長は頷いた。

「分かってはおったが思った以上に情報が無いのう」

ルドルフがボヤくと兵士達はうつむいた。

「まあ、無いものはしょうがない。現地で情報を集めれば良いだけじゃ」

ルドルフはそう言ってライドを見た。

「ところで明日は何人付いてきてくれるんじゃ」

ルドルフが尋ねるとライドは参加希望者のリストを渡す。

「ほう、これは凄いのう」

感心したルドルフから声がでる。

「なるべく細かいほうが役に立つと思ってね」

リストには14名の名前と年齢性別の基本情報から、個人の癖や能力の分析など事細かに書かれていた。

「相変わらず凄い観察眼と分析能力じゃな」

褒められたライドは嬉しかったが、あまり表情には出さなかった。

「じゃが良いのか。ほとんど古参の兵士ではないか。これほどの人が国を開ければ統率も取り難くなるじゃろ」

リストの兵士は一番若くて35歳、最高で56歳と年齢の高い者ばかりだった。

「ああ、大丈夫だよ。国はアーナルドとモンドに任せればいいから」

名前を出された2人はルドルフの方を向き一礼した。2人は旅立ちの儀式の時ルドルフの前に居た2人だった。

「それに、古参の兵士は父さんの事を知ってるから一緒に戦ってみたいって言う人が多いんだ」

そのライドの言葉は半分真実で半分嘘だった。若い兵士の中にも調査に行きたいと志願する者も居たが、死ぬリスクの高い土地に行かせたくないという理由から却下した。

「そうか、ならば遠慮なく貸してもらおう」

ルドルフはそう言うとまたリストに目を向けた。

「見たところ第一部隊の方が志願者が多いのう。戦えるのか」

ルドルフの疑問は最もだった。リンドベルクでは第一部隊は国の治安維持や防衛が主であまり戦闘の経験は無い。それに比べて第二部隊は調査や掃討が主で戦闘の経験は豊富だ。調査に向かうというのに第一部隊が多いのはおかしなことだ。

「その心配は無いよ。第一部隊の志願者のほとんどは元第二部隊だから。年齢を考慮して第一部隊に移ってもらっただけなんだ」

「そうか、ならば安心じゃな」

ライドの説明に納得したルドルフはリストを懐にしまった。

「あとは、どのくらい”気”が使えるか直接見ておきたい」

気とは体を巡る見えないエネルギーの事だ。魔力も見えないエネルギーの一つだが魔力は先天性の要素が大きく、才能を持って生まれなければ生涯使えない事の方が多い。それと比べて気は後天性の要素が大きく努力次第である程度は使えるようになると言われている。

ロベルトがボブゴブリンの岩の手を砕いたのも気を使ったからだった。

「古参兵が多いからのう。おそらく片手で岩を砕くことくらいはできるじゃろ」

ルドルフが期待を口にするとアーナルドとモンドは少し表情が硬くなった。ルドルフの基準はルドルフの中では簡単だが、一般的に見れば厳しい方だからだ。

そんな2人を気にも止めずルドルフは話を続けた。

「宿舎は前と変わらないのか」

聞かれたライドは窓まで行き宿舎を指さした。指の先には三色のレンガで建てられた宿舎があった。

「耐震の問題で立て直したんだ。デザインはアーナルドがしたんだ」

宿舎は赤、茶色、オレンジ、と同系色三色で建てられている。主は茶色とオレンジで所々に赤色のレンガが使われていた。

二色で良かったのではないか。そう頭によぎったが何も言わなかった。

「では会議が終わったら向かうとしよう」

そう言ってルドルフは元の位置に戻った。

「あとは出発時間だけじゃな」

「出発は明日の15時じゃ。今日直接会った時に伝えておく」

ルドルフは即決した。まるで最初から決めていたような速度だった。

「どうして15時なの」

「調査に向かう人数が15人だからじゃ」

その答えを聞いて納得した。その数字には、誰ひとり欠ける事無く調査を終えたい、というルドルフの願いも込もっていた。

議題も尽き、話すことが無くなり静かになる一同。それを見た議長が会議を終わらせようとしたその時、

ドンドンドン

会議室の扉を叩く音が部屋に響いた。

「失礼します」

勢い良く扉を開けて入ってきたのは伝達隊の兵士だった。伝達隊の兵士は息を切らしてひどく焦った様子だった。

「何事だ」

少し怒ったようにライドが言うと、兵士はライドを見て言った。

「王子が、レイナルド王子が病院に運び込まれました」

「なに!?」

驚いたような声を出すライド達。

「ライド、会議は終わりだ。すぐに向かうぞ」

「分かった。アーナルド、モンド、出発時間の伝達はお前たちでやっておけ」

ライドはすぐに命令をだし2人は急いで病院へ向かった。


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