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古の伝説
「御三家頭首達よ。我々は鬼退治士を辞退する」
神成の男は言った。尊大に。
「本気か」
その言葉を受け、蛭間の男が表情を険しくする。
神成は静かに頷いた。
「諸悪の根源であった鬼は退治した。これ以上の殺生は、我々の望むところではない」
朝桐の男が前に出る。
「確かに、この国の平和は守られた。だが、鬼がいなくなったわけではない。奴等は今も、人々を襲い続けている」
鋭い視線を投げ掛けられ、神成は深い溜息を吐いた。
「我々が授かったのは守る力。大きな災厄を回避した今、これ以上進んで鬼を殺す必要はない。後のことは貴方達、攻めの力を持つ者の役目だ。――神成の役目は終わったのだ」
立ち去ろうとする神成の前に藤ノ宮の男が立ちはだかる。
「殺さなければ殺される。殺されてからでは遅いのだ、神成よ。ましてや、そなたの一族は――」
しかし神成は首を振り、頑として譲らなかった。
「神成は、本日を以て鬼退治士の名を捨てる」
そう宣言し、彼は背を向けたのだった――