一週間休みの始まり
投稿遅れて申し訳ありません。
(とりあえず連れてってって言えばいいの?なんて言うべきなの?あそぼーとかそんなノリ?どうするべきなの?)
頭がいっぱいいっぱいです。なんでって?
ついにきたんだよ!!!!
一週間の休みだよ!!!!
明日からなんだよ!!!!
入学が春。冬になると一週間休みがもらえるんだ。その一週間休みこそが本来の私の目的、ゼクロと会えるチャンス!!
私は授業をほったらかしてそのことばかり考えていた。まぁ、この授業は筆記だからどうでもいいんだよね。簡単だし。
ゼクロと会う。でもそのためにはザクロにゼクロと会わしてって頼まなくちゃならない。
(でもどうやって?)
ストレートにいけばいいのかもしれないけど、ザクロからしたらきっと謎だろう。
「千秋って本当顔に全部でるよね。今すごく困った顔になってる」
「あ、雷牙。やっぱり分かる?」
「かなり」
そんぐらい悩んでるんだよ。
「一週間休みなのはありがたいけどさ、みんなに会えないのが俺はさみしいな。もしかして千秋もそんなかんじ?」
「う、うん……」
純粋か!って言いたくなったけど、ここはひとまず頷いた。
(あ)
ふいに思い出した、そうじゃん。
「雷牙どうするの?お父さん放浪してるんでしょ?どこ行くの?」
「んー、それも悩んでるんだよな。親戚の家にずっといたんだけどさ、あそこにはあんまり帰りたくないんだよ」
そうじゃんそうじゃんそうじゃん。
雷牙って一週間の休みほとんどがザクロと一緒じゃん!?確かゼクロもそこに混じってたはず。
もしかしたら私そこにお邪魔できないかな。だとしたらすごいラッキーだ。
「あ、そうだ。ザクロ!」
そうだそうだ、いけいけいけ!!
私は今かなり悪い顔をしてると思う。
「ん?」
ザクロがこちらに振り返った。授業中って分かってんのかなこの二人、とも少し思ったけど。
「お前どうせ休みは暇だろ?遊びに行ってやるよ」
「わ、私もっ!!」
思わず声が出た。乗っかっちゃったよ。
「あ?なんでだよ」
相変わらずの嫌そーな顔でザクロは答えたが、雷牙はそんなの気にもとめない。
「いいじゃんか、な、千秋!」
「うんうんうん!!」
「……ったく」
やったよやったよ!ザクロが妥協したおかげで私も雷牙に引っ付いていける!やったよ!!
「お前ら」
ピリッとした声色で、今の授業の担当、石成 凛介先生が私たちを見た。……やな予感。
「今は授業中だよな。休みが近くて浮かれるのも分かるが常識がなってない。三人で庭の掃除でもしてこい。罰だ」
「えぇーっ」
雷牙が嘆いた。私も嘆きたい。ザクロなんか嘆くとかじゃなくてキレそうでこわい。
「はやく行け」
「はぁい」
「頑張ってね」
冠那ちゃんがクスクスとそう言った。憎らしい笑顔だ。
「お前らのせいだぞ。なんでこんなことしなくちゃならねんだ」
「まぁいいじゃん。思い出ってやつ」
隣でそんな会話を聞きながらため息が出た。ただいま草むしり中です。
寒いんだよ!!!!
「明日一日親戚の家で我慢するとして、次の日はお前の家行くな」
「言っとくけど家にはあげねぇぞ」
「なんでだ?」
「お前らがうちに入ってみろ。恐ろしいぐらい言葉で攻撃されんぞ。新葉の家は昔っから優秀な家系としか関わらないからな」
それを知ってた私はじゃあ、とザクロに言った。
「どこか散歩でもしようよ。修業とかでもいいじゃん。妹もいるんでしょ?一人残したら可哀想だし、四人でさ。私も少し話してみたいし」
どうだ、これしか考えてなかったんだからね。これなら大丈夫でしょ。
「……ふん、好きにしろ」
(っしゃ!!!!)
心の中でガッツポーズしてしまった。
ゼクロとの友情はゲットしたようなもんだ。ゼクロは人の好き嫌いがない穏やかな子。優しく対応すれば懐いてくれるだろう。
目指せゼクロの死亡フラグ打開!!
一週間でできるだけ仲良くならなくちゃ。自然に二人でいれるほどの仲にはなりたいからね。じゃないといざという時そばにいれない。
ゼクロは神導師と戦うザクロを心配して駆けつけその間に入り、神導師の放つ魔法で死んでしまう。
神導師の魔法、そして印騎士達の魔法両方を受け、それもザクロの目の前で死んだゼクロにザクロは双方へブチ切れしちゃう。
それがまた次の戦争への第一歩だ。
まぁ、ザクロは間違ってると思うよ。だって印騎士への攻撃は八つ当たりだもんね。
もしかしたら言葉でザクロを止められはしなかったのかな。雷牙ができないなら無理か。
だからとりあえず、私がこの時ゼクロのそばにいることが重要だ。
神導師に関しては私なんかじゃ相手にならないから、事前に止めにかかるのは無理だからね。
たとえ皆に神導師を止めてってお願いしたところで、何を言ってるんだで終わりだろう。神導師が裏切るなんて思ってもないと思うし、普通にいい人だから。
……なんかよくよく考えればダークな未来だな。裏切りや復讐、確実におこる戦争。
思わずため息が出た。息が白くなる。
(想像よりしんどいね、こりゃ)
でもこの世界は、このお話しは私の大好きなものだ。人の死もだれかの成長へつながるだろうし、ね。
私はただ戦争で死なないように力をつければいい。皆の物語は決まっているけれど、私だってどうなるか分からない。
「騎士になるためにはザクロより強くならないとなー」
突然の雷牙の言葉に意識が草むしりへ戻る。
「お前には無理だな」
「なんだとっ!」
「俺には優秀な血もあるからな。普通の奴らじゃ超せねぇよ」
雷牙は言い返せなくなった代わりにむーっと頬を膨らました。
「力は元々あるものだけじゃないよ、つけるものだよ」
私の言葉に二人の視線が刺さる。
「だって皆が皆血のおかげ、じゃないでしょ?頑張ったら頑張った分強くなるんじゃない?」
二人に言うようで、自分に言った。だから頑張らないと、って。
「千秋良いこと言うね。俺だってそう思うよ!」
「ふん、たかが知れてるさ。どれだけ頑張ったって変わらないものもある。ま、せいぜい修行するんだな」
たぶん草むしりのせいでザクロイライラしてるね。黒いオーラが漂ってるもん。いつになく反抗的だし。
「とりあえず、休みが楽しみだな。ザクロの妹にはやく会いたいや」
「ザクロの妹ってどんなの?やっぱキツイ?」
雷牙が不安そうに言った。
「すっごく可愛くてザクロと真反対の性格」
そう、すごく可愛い。ザクロと同じ金髪はロングでウェーブがかってて、色の白い目がぱっちりした女の子。
本当に可愛いの、大好きな顔だよ。新葉家は美形揃いだ。
「へぇ!会ってみたいなぁ」
「お前なんかがゼクロに絡んだらゼクロが可哀想だ。あいつはお前みたいなやつに慣れてないからな」
「ちぇ、意外と楽しんでくれるかもしんないじゃん」
ぶつくさ文句をいいながらも雷牙の顔は期待でいっぱいだ。
私もはやく会いたいの一言だけどね。
(っしゃ!色々頑張ってやる!!)
自分に一喝を入れ、草むしりに取りかかった。
「千秋ちゃん、一週間体に気をつけて過ごしてね。寂しいけど元気でね?」
冠那ちゃんが永遠の別れだとでも言うような顔をしてそう言った。
「冠那ちゃんこそ、元気でね」
うるうるになった瞳が私をじーっと見る。涙がこぼれ落ちそうだよ、冠那ちゃん。
「……っ、じゃあねっ」
最後にそう言うと冠那ちゃんは凄いスピードで門を出て行ってしまった。
「じゃ、じゃあね」
冠那ちゃんの家は私の家からは遠いから、休みの間に会うことはないだろう。
ザクロと雷牙の家が近いのは本当に運命を感じてしまうよね。ラッキーって言う一言じゃ済まないよ。
「行こうぜ、千秋!」
「うんっ!」
雷牙に声をかけられ、私も元気良く返事した。隣にはザクロも一緒だ。
明日からはここにゼクロもいるんだ。
そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に家だった。
ひさびさすぎて緊張するよ……。
恐る恐るドアを開いた。ほわりと暖かい空気が出てくる。リビングにお母さんの姿はないようだ。
「た、ただいま!」
だがそう言った途端、二階からドタドタドタと激しい足音が聞こえてきた。自然と頬が緩んでくる。
「千秋おかえりっ!!」
お母さんは苦しいぐらい私を抱きしめた。
「ただいま!!」
お母さんのいい匂いがする。やっぱ家族っていいね、あったかいや。
「ほらはいって。お昼ごはん、できてるのよぉ」
お母さんの暖かい手に引かれてリビングに入ると、奥のイスになんと、
「お父さん!?」
お父さんが座っていた!!!!
「やぁ千秋、おかえり!今日は仕事休んじゃった。元気だったかい?」
「お父さんーっ!」
がばぁっと抱きついたら笑いながら受け止めてくれた。
「学校はどう?楽しい?」
「うん、楽しいよ。友達もできたんだ」
「よかったよかった」
あまーい笑顔で頭を撫でられ、私はもうメロメロです。
「ほら座ってー!ごはん冷めちゃうわよ」
「はあい」
久しぶりの暖かい家族、久しぶりのお母さんのごはん。もう楽しすぎましたね。その日は一日中騒いじゃった。
一ヶ月ぐらい休みほしかった。うん。
「千秋はどこのクラスに入ったんだい?」
「Aだよ」
ふふんと胸をはったらお父さんがおおっと声をあげた。
「やるじゃないか。さすが俺たちの子だ」
「千秋の優秀なのはお母さん達に似たのよぉ」
お母さんが嬉しそうに言った。
「千秋は騎士になるのか?」
「多分ね」
「あら、どうして?」
「守りたい人がいるんだ」
お父さんが私の言葉でかたまった。あれ、何かまずいこと言った?
「もしかして、もう結婚相手でも決めてるのか?」
「あらぁ、やるじゃない千秋」
「ち、ちがっ」
「まぁ確かに俺たちも早かったけど……。まだだめだからね千秋。まずは紹介しなさい」
「ええっ」
否定しようにも二人で話しを進められてるから何も言えない。
私の結婚相手って誰だよ。逆に教えて欲しいよ。
「じゃあ千秋、ごはんも食べ終わった事だし、何ヶ月かウィンドールに行った成果を見せてもらおうかな?」
「何するの?」
「千秋の力量を魔法でみたいんだ」
お父さんが楽しそうに言った。職業柄で多分私の成長を楽しみにしてたんだろうな。
いいよ!!私だって成長したんだから!!
ふん、と自信満々に私は立ち上がった。
「風邪引かないようにねぇ」
「じゃあちょっと行ってくるね」
私はお父さんに連れられて懐かしの草原へ来た。
するとお父さんは距離をとって私の正面に立った。
「よし、じゃあまずは基礎からだ。初めに火柱を作ったろう?あれを見せておくれ」
任せてよね。Aクラスに入ったんだから火柱の大きさには自信があるよ。
てか火の印が一番得意だからね。
両手を上に上げ、最大限の魔力を放出した。
「ど、どう?」
張り切りすぎてたくさんの魔力を使ってしまった。息が切れちゃったじゃん。
「なかなかやるね千秋!でもね、お母さんもお父さんもその二倍はあったよ。もっと頑張れるはずだ」
爽やかな笑顔だけどさ、指揮官っぽいよ。やめてよ、私娘なんだから。
てか二倍!?二倍ってやばくね!?すげくね!?どんなけ優秀だったんだよ!!そこまでとは思ってなかった。
「さ、もっかいだ!」
またまた爽やかーにお父さんが促した。やられたよ。お父さんの中で私は今部下だ。
「お、お父さん、二倍になるまでやるつもり?」
「ん?千秋ならできるだろう?だからお父さんは言ってるんだよ!さぁ、ほらっ」
ほらって。ほらって。千秋ならって。もうそれは半強制じゃねぇか!!!!
心の中でするどいツッコミを入れつつも、渋々私は魔力を放った。
「まだだ、まだいけるよ!できるまで何度もやってごらん!」
爽やかさに熱を込めたような顔でお父さんは言った。
……そんなけ何度も魔力放出して誰が二倍までできるようになんだよ!!減ってくんだよ魔力は!!
これ、いつ終わるの?