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それぞれの目標

私たち五人はあれからよく一緒に行動した。

こんなうまくいっていいの?ってぐらい本当にいい感じで。ちょっと怖いくらいだ。

初めこそ冠那ちゃんはザクロを怖がったし、ザクロの態度に気に食わないことがあれば白が喧嘩を売って大騒動になりかけたり、いろいろありました。

でも今ではみんな仲良くやってる。お互いの性格も少しづつ理解して受け入れられるようになったし、授業以外での関わりも増えた。

意外なことに、ザクロと雷牙はまったく喧嘩しなかった。

漫画では六年間もある学校を全て描き映してはいなかったから、きっと喧嘩もあるのだろうと覚悟していたけれど、不思議なくらい仲が良い。

雷牙はザクロの言う嫌味や愚痴、悪態全てを受け入れてる。雷牙本人が気に障ることだって言われたはずだけれど、雷牙はそれを聞いても怒らない。

ザクロもそんな雷牙の性格を苛立たしく思ってた時もあったけど(てめぇはなんも言わねぇのか?とか色々雷牙に詰め寄ってた)、雷牙を理解してか嫌味を言わなくなった。

だからといって言いたいことを我慢するようでもなく、それを理解し受け入れた上での関係だから上辺とかそんなのじゃない。

相性いいんだろうな、やっぱヒロインとその親友だもんね。

漫画にはなかった場面や行動、会話や日常が楽しくてたまらない。0の魔術師の作者でさえ知らない日々を私は送ってるんだよ!?凄くね?

今は放課後。今日も一日お疲れ様。頑張った自分を褒めて私は部屋に戻ろうと冠那ちゃんを見た。

「冠那ちゃん、行こっか」

「待ってよ!今日はちょっと話さないか?明日は学校休みでしょ」

雷牙が突然そう言った。まぁ、初めてでもないんだけどね、放課後に皆でおしゃべりするの。

「みんなどうせあいてるだろ?ザクロ!」

手前の方に座るザクロが雷牙の声に手を上げた。聞こえてたって言ってんだろうな。そんなことまで分かるようになりました。

「よし、じゃあ今日は千秋の部屋に集合で」

雷牙がばっちりウィンクしたけど、私は顔面蒼白だった。

汚いよ、部屋!!!!本当に汚いよ!!!!

「待って待って、片付けさせて!」

「部屋汚いのなんて分かってるよ、千秋らしいじゃん」

「あ、分かるかも」

「千秋ちゃんの部屋いつも汚いわけじゃないのにね?」

「……」

なんかどうでもよくなったよ。

「さ、いこー!」

「はは…」

雷牙の掛け声で皆が立ち上がった。

もういい、汚い部屋をご覧になって。

なんで今日なんだよ、二日前ぐらいまで綺麗だったのに。

私の部屋に入った皆はちょっとびっくりしてました。冠那ちゃんは慣れてるけど。

「ほ、本当に汚いね、千秋。君掃除する?」

「するわ」

白が苦笑いでそう言ってきた。分かるかもとか言ってただろ、文句言うな。

飲み物を入れたままのコップとか、逆に空なのにまだ置いてあるコップとか、お菓子の袋もいくつかあるし、そりゃ食べカスだって落ちてるよね。

服も脱ぎっぱなしのやつがあるし、ズボンなんて裏表逆で転がってる。教科書も散りばめられてるし、ペンとかもそこらへんに転がり放題。

「……」

そんな私の部屋をザクロが超嫌そうな顔で見てる。ザクロの部屋綺麗だもんね。知ってます。漫画で拝見してますから。

「凄いね千秋」

尊敬するようにキラキラそう言った雷牙を今度は私が嫌そうな顔で見てるんだろう。誰のせいだよこの部屋を晒すことになったのは。

「片付けるぞ」

ザクロがボソッといいました。

「…はい」

そうくると思ってたよ。ザクロからしたら座る場所ないもんね。

皆でせっせと掃除したおかげで一瞬で部屋が綺麗になった。代わりにゴミ袋が二袋も出た。

「見違えたよほんと。これをキープしてね千秋」

「はい…」

「久しぶりだねぇこんなに綺麗な千秋ちゃんの部屋ー!」

「……」

「やっぱ部屋は綺麗な方が落ち着くな!あれもあれで凄かったけど!」

「…………」

「……」

「………………」

それぞれの反応が全部心に刺さった。

ちょっと本気でこれから掃除しよう。さすがにゴミ袋二袋も出たらショック受ける。一人でいる部屋でましてや女なのに二袋だからね。

「これ、お母さんとお父さん?」

ふと白が写真立てを見て言った。

「そうそう。入学する前に撮ったの」

両端でにこやかに笑う父と母はやっぱり綺麗だ。私がめっちゃかすんで見える。

「千秋ちゃんのお父さん指揮官やってるんだよ。いつか会えるといいな」

冠那ちゃんが自慢気に言ってくれた。照れるね。私も会いたいや。

「俺の父さんと母さんも指揮官だったんだよ。母さんが死んじゃってからは父さんは指揮官やめて放浪してるけどさ」

「雷牙くんの親が二人とも!?凄いねぇ、雷牙くんが優秀だから納得だけど。ザクロくんは?親はどんな人なの?」

冠那ちゃんがザクロにそう聞いたけど、ザクロは少し嫌そうな顔をした。

「名誉しか頭にない。俺にも優秀であることを求めてるしな」

「……そ、そっかぁ」

これ以上は話さぬととでも言いたげなザクロに冠那ちゃんは苦笑いをした。

「なんか寂しいなそれ。自分を見てくれないかんじ」

突然の雷牙の言葉に私達は冷や汗をかいた。なんつーことを言うんだ雷牙は。

「……なにがいいたい」

ほら見なよ。ザクロ顔怒ってるよ。

ちょ、ちょっと、喧嘩しないでよ。あんたたちの喧嘩が激しいのは知ってるんだから。部屋壊れちゃう。

「まぁでもさ、俺らがいるもんな。俺はお前のことちゃんと見てるぜ。一人の人として!」

ザクロの拍子抜けた顔以上に私も拍子抜けした顔してると思う。

雷牙はストレートにものを言う。だから人の心に溶け込みやすいんだ。それに言葉も純粋に感じ取るから、雷牙の言葉にはなんだか説得力がある。

ザクロは雷牙の言葉に照れたのか、髪をかきあげた。

「別にそんなこと求めてねぇ。俺が俺なのは自分で理解できてんだよ」

「そうだな」

にかっと可愛らしいはにかみ笑顔をした雷牙はうーんと横になった。

「白の家も有名だよなぁ。武闘一家として名が回ってるよ。なんかそういうの、格好いいよな!」

「武闘一家の名は僕がまた受け継ぐつもりだよ。僕の家の自慢の名だからね」

「私の家はごく普通の家だから、ザクロくんとはまた違って私が優秀でなきゃ!って思っちゃうんだ。だからと言って無理はしてないけど」

キラキラと輝いた顔で言う冠那ちゃんは本当に可愛い。

皆の意思を聞けば聞くほど、私は何も言えなくなる。

ただ皆にくっついて、未来も自分で決めるわけじゃない。何かしたいことなんてないし、取り柄や目標だってない。

あ、ゼクロをとりあえずは守ることぐらい。

「千秋は千秋でさ、自由に進むところがいいんだよ」

私の心を見透かしたように雷牙がそう言った。

「珍しいじゃん。誰にも何にも影響されずにしたいことをする、なんて人は」

「雷牙……」

聡い雷牙に私は救われたみたいだね。私より年下のはずなのに。

「ありがとう」

素直にお礼を言うと、またはにかんで笑顔を向けてくれた。

私は私でとりあえずはゼクロを守るんだ!他は雷牙が言ってくれたように好きなようにしよう。なんてったって先は長いからね。

もう少ししたらいきなり時間を飛ばします!

ややこしくなりますがすいません。

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