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ザクロ、再び

お気に入り、ありがとうございます!

やる気がでます!頑張ります!!

「ここのごはんは美味しいねっ」

「ほんとだねぇ」

私たちは昼休憩に食堂でご飯を食べていた。日本食最高。これが日本食か分からないけど。

私は現世でも大好きだった味噌汁を啜り感動していた。

「あ、そうだ。私飲み物買ってくる。みんなは何もいらない?」

「私オレンジジュースがほしいな。お願いしていい?」

「俺サイダー!」

「僕はお茶で」

さ、三人ともがめつくないかい?まぁいいけどさ。

それぞれにお金をもらい、少し離れたところにある自動販売機に私はむかった。

そう、自動販売機なんて物もあるの。本当にここって別世界?

(えーっと、オレンジジュース、サイダー、お茶……」

私はもっぱら水。水って美味しい。お茶も好きだけど、どちらかと言うと水の方が好きだ。

水道水でいいじゃないかなんて言う人もいるけど、ぜんぜん違うんだよ。水道水はやっぱりちょっと味がするからね。買った水だって味はするけど、それが不思議と甘い。

三本の飲み物を手に抱えると、最後の一本が辛い。お金を入れるのが大変だ。

「……お、落ちる……っ」

お金を入れようとするとジュースが落ちる。どうしよう。

小銭を入れるのに四苦八苦していると、隣に来た人がふいに私の腕の飲み物を奪った。

驚いて見ると、なんとザクロだ。

「えっ!?」

「ほら、はやくしろよ。こっちが迷惑」

ふてくされて言うザクロはどこか照れてる様にも見えた。多分あんまりこうゆうのしないんだろうな、なんて思うと可愛くかんじる。

物言いは可愛くないけど、助けてくれたのは事実だ。

「ありがとう」

素直にお礼を言うとザクロにはふん、と鼻笑いをされて終わってしまった。

ザクロが飲み物を買うのを無意識に見つめていると、怪訝な顔で振り向かれた。

「今度はなんだよ。お前って人をジロジロ見つめるのが趣味なわけ?」

真剣に嫌そうな顔をするものだから少しショックを受けたけど、私だって二回目は強いよ。

「ザクロの家系は有名だから知ってるんだ。だからついね」

「……ふん」

有名と言われてもあんまり嬉しくないのはよく分かってる。でも分かってるからこそ言いたくなってしまった。

だから今度はザクロが反応するだろう言葉をかける。

「妹さん、仲良いね。妹さんも学校へいつか通うの?」

「まぁな。二年もすればここへ来るだろう」

「魔法には興味あるって?」

「あいつはいつも俺を真似るからな。嫌いじゃないだろう。……お前にこんなことを話す筋合いはない。はやく行け」

「またあとでね」

四つのジュースを抱えながら私はにやけそうになった。

前よりザクロは私を怪訝な顔で見つめなかった。よかった!!少しはマシになったみたいだ!!

この調子で仲良くならなきゃ。それでゼクロと……。

「はっ」

寮に入った以上ゼクロとは会えるの二年後!?

(忘れてた……)

ゼクロとまた会うのはとうぶん先になりそうだ。

てかそもそもここの学校って違う学年の人と会う機会あるの?

ランウィールは年齢ごとにバラバラになるようになっている。多分私達より年上の人はもっと上の階なんだろう。食堂でさえ振り分けられている。どんだけでかいんだここは。

てことはゼクロと会うことできなくね!?そんなことぜんぜん考えてなかった。

会いに行くのっていいのかな。ちょっと色んな意味で怪しまれるか。それ以前にザクロが怒りそうだし……。

あっ、そうだ!!

確か年に一度一週間休みがあって、うちに帰れる機会があるはずだ!!

その一週間にかけるしかない。

そしてそのためには何が何でもザクロと仲良くならなきゃ。仲良くなったら多分会わせてくれるだろう。

頑張る……!!

一人で四人分のジュースを手に持ち、私は燃えていた。


あれから幾日か過ぎ、毎日の授業にも慣れていっていた。

最初の方は授業が終わると速攻部屋に帰って爆睡したものだ。ザクロや雷牙と関わる時間なんて作ってる余裕がなかった。

で、朝に慌ててお風呂に入るっていう繰り返し。

でも最近はお風呂に入る元気は残るようになってきたし、冠那ちゃんとどちらかの部屋でたまにしゃべったりもするようになった。

魔力の容量が増えてきてるんだったら嬉しいところだ。

今からやる授業の時間は、いつもとは違った特殊なものが多かった。

びっくりしたのがまる一時間半眠る、と言うものもあった。ただ眠るんじゃなく、持続的に魔力を放ちながら、だけど。

浅い眠りについている間、常に魔力を放っておけば何かが近付いた時一定距離からなら感知できるらしい。

先生は生徒が眠ってから教室を周り、ランダムに教室のあちこちに止まりながら、その近くの生徒が気配に気付くかどうかテストしていた。

私は寝付きがもともと悪いから、すぐ気付いたよ。眠りから気配を感じて起きた時、片手を上げることになってたけど、そこらの生徒より多分速い。

ほんとなんだからね。あれだけ毎日死んだように寝るのはなかなかないんだよ。

ちなみにだけどこの先生、絶夜ぜつや 流阿るあと言う可愛い名前の上に、見た目がエロいんだ。なんてったって胸が立派なもので。なのに胸元の広いシャツとか着るから目が自然にそこに向いちゃう。

話し聞いてる時とか乳を見ながら聞いてるもん。女の私でこれだから、きっと男の子は大変だろうな。

「今日は二人ペアでやってもらうわよ」

絶夜先生は透き通るような金色の髪をかき上げながら、楽しそうにそう言った。綺麗な口の形だなぁほんと。

漫画の中で唇を少しぷっくりして描かれる人がいるけど、実物で見たら本当にぷるっぷるなんだ。

赤いプルプルの唇ばっかり見ている私なんてもちろん知らず、絶夜先生は先を進めた。

「ペアは私が決めたから、名前を読み上げていったら二人で隣に並んでおいてちょうだいね。じゃあ一番、宮華 零泉と都城 李理!」

ペアかぁ。ザクロとなれたりしない?それはさすがに運が良すぎ?

この授業では確かザクロが雷牙とペアになるはずだから、私は論外なんだよね。つまんないなぁ。

なら冠那ちゃんとなりたいな。頼り甲斐があるのがここ数日でかなり分かったし。とても頼もしい友達ができたものだ。

しかもこの授業は男の子とはなりたくないんだよね。だって……

「9番、風上 千秋と新葉 ザクロ!」

「!?!?」

えっ、聞き違い?聞き違いだよね?

私とザクロだって?そんなはずないでしょ。

チラリとザクロを見たら、凄い嫌そうな顔をしていた。

ほ、本当にザクロなわけ?

ら、雷牙は!?

「11番、南 雷牙と風蘭 代癸!」

えええええぇぇぇぇぇぇええええっ!?!?

なんで!?なんで!?

雷牙とザクロがなるはずでしょ!?なんで私とザクロ!?

漫画の内容変わってんじゃん!?

白は漫画通りの子と、そして冠那ちゃんもあまりAクラスの方では影の薄いキャラクターとペアになった。

「なんで!?」

「ん?千秋、どうしたの」

私の大きな声に絶夜先生が不思議そうな顔をした。

「なんで私が!?」

「あら、ザクロじゃ不満?だって千秋主法に一番時間かかってたじゃない?それと反対にザクロは全て一瞬でこなしてみせたし、自然とこうなっちゃうのよ」

そんな……。

私、さっき男の子とはなりたくないって思ってたとこなのに。しかもよりによってザクロ!!

「この授業は相手の魔力を感じ取る授業よ!ちなみにやり方は、おでことおでこをひっつける!それができたら胸に手を置く!もちろん女の子もいるから、首の下あたりでもいいわよ。それができたら次は手と手。最後はお互い向き合ってどこも触れずに感じ取ること。これができなきゃヤバイわよ!主法と同じくらい基礎だからね!」

そう、ボディタッチが多いんだ、これ。

私ね、現世では彼氏でもそんなにイチャイチャしないタイプだったの。だから彼氏がいたからといって男の子と話したり触れ合ったりすることが平気になったわけじゃない。

むしろちょっと苦手なの。……どうも緊張しちゃうわけで……。

転生してすぐの頃雷牙が手を握ってきたときはどさくさに紛れてたからそこまで意識してなかった。むしろ学校に着いたばかりでテンションが高かったから平気だったほどだ。

ただ、ザクロはあまりにも酷いよ。向き合うことから緊張するよ!!せめて他の男の子がよかったよ!!

「はやく来いよ」

ザクロが機嫌悪そうに私に言った。

そんな簡単に言わないで。足が言うこと聞かないの。

もじもじしてる私にザクロはついにため息をつき立ち上がった。

「なんなんだよ、気持ち悪」

うっせー!!!!自分でわかってんだよ!!自分で自分が気持ち悪いんだよ!!!!この無神経野郎!!!!

近付いてきたザクロは私の隣にどさっと腰をおろした。今私の両隣はガラ空きだから、雷牙がいた所だ。

え、ザクロ?もちろんこっち向いてるよ。だっておでことおでこを引っ付けるんだからね。そりゃこっち向くよ。

「お前もはやく体こっちに向けろよ。嫌だとか言うなよ。主法も上手く扱えないお前が悪いんだからな」

「わ、わかってます」

ガチガチと不自然な動きで私はザクロと向き合うように座った。

てん、てん、てん、と沈黙が流れる。

「黙ってさっさと終わらすぞ」

沈黙を破ったザクロは、がしっと私の後頭部を掴むとおでこを引っ付けてきた。

「……っ!!」

何か言いたくても何も言えないよ。近過ぎ。言葉出ません。しかも頭を寄せてるこの手、なんですか。

「魔力が乱れてて上手く察知できねえ。ちょっと落ち着け」

めちゃくちゃ至近距離で言われても落ち着ける馬鹿がどこにいるんだよ!

どうにか落ち着こうと私は深呼吸した。

「そのままでいろよ」

ザクロはそう言うと、開けていた目をすっと閉じた。……ほんと、子どものくせに目を閉じてても顔が綺麗だ。ってか私心は高校生なんだよ。子どもにこんな振り回されてていいの?

ザクロの綺麗な顔を見ているうちに少し落ち着いた。真似をしようと私も目を閉じてみる。

相手の魔力を探るのは触れた所に意識を集中するだけ。距離が近ければ近いほどはっきりと分かると漫画の雷牙の心境がそう言っていた。

あ、わかるかも。わかるわかる。

これでしょ?なんかこう、ほら、分かるよ。自分の魔力を他で感じているような感覚だ。

ただ、ザクロの魔力は少しだけトゲトゲしく重い。ドロドロした感じがする。魔力の容量は多いんじゃないかな。

「お前の魔力は軽くて量がある」

すっとおでこからザクロが消えた。後頭部の手も離される。

「ザクロのはトゲトゲしくてドロドロしてて重いよ」

「なんだそれ」

また顔をしかめたザクロだけど、今回はそこまで嫌そうじゃない。まぁ、私が苛立たせるようなことを言ってないからだろうけど。

「つ、次は、えっと……」

ドスっという悲しい音と共に、ザクロは照れるなんて言葉は一ミリもなく私の胸に手を置いた。

もじもじした私はなんだったんだよ。てか心臓大丈夫?ドキドキしてたらめっちゃ恥ずかしいじゃん!

「次お前やれ」

「あ、はい……」

胸元に手を置き集中すると、さっきと同じ魔力が感じ取れた。

大人になってたら胸板触れる時ちょっと楽しみなのに……。

「次は手でしょ!」

ほら、と言わんばかりに私は手を広げた。

おでこと胸は弱かったけど手はかなり強気だ。

そんな私を見てザクロは少しだけ笑った。

(こんな顔して笑うんだ。笑った方がかわいいじゃんか)

そっとザクロの手のひらが私の手のひらに重なった。ちょっとだけザクロの方が大きい。まだ子どもだからね。

「……」

手を重ねている間、自然と私達はお互いから目を離せなかった。

ザクロのシルバーの目に吸い寄せられそうだ。銀河みたいな目だな。なら私の目はブラックホールだ。

ふいにザクロが手を離し、目をそらした。

「次、やるぞ」

「う、うん」

なんだか今のを考えると無性にドキドキしてきた。ザクロの顔は本当に反則だよ。

「俺の魔力は分かるな?」

「まってね、今やってるから」

さっきみたいに相手に意識を集中する……が。

「あれ、なんで?分かんない」

「そんなわけあるかよ。ちゃんと集中してやれ」

無駄に体に力を入れながら必死に魔力を探したけど、見つからない。

「……あはははは」

「……」

「わかりません」

「俺に主法の時並みに時間を使わせろっつってんのか?冗談はよしてくれよ」

冗談じゃないんだよ、本気。私こうなったら長いの。

「寝ててもいいから付き合って。頑張るし」

「……ふん、勝手にやっとけ」

そう言うとザクロは私に顔が見えないように頬杖をついて眠ってしまった。

おっしゃ、やってやるよ!!


またもや授業が終わる直前でクリアしました。

気配を察知するのと相手の力量を見極めるのとはまたぜんぜんちがうんだね。必死だったよほんと。ザクロは寝てたけど。

「最後に一つ言っておくわね!戦いにおいて一対一になったとき、相手の魔力が自分より多い場合は、迷わず逃げなさい。印騎士になる子は集団かもしれないけど、きっとそういう時もあるわ。魔力が自分より多いということは、印のバリエーションは相手の方が必ず多いわ。それにスタミナもね。プライドで戦っても死ぬだけよ。いいわね!」

はい、終わり!と絶夜先生はいい笑顔を残して出ていった。

ザクロはまだ寝てるし。

「ザクロ、終わったよ」

「……あぁ」

「新葉 ザクロ!」

後ろから急に雷牙がザクロの名前を呼んだ。ザクロがそれを怪訝そうに睨む。

「なんだよ」

怖い顔をしたザクロなんて気にも止めず、雷牙はあのはにかみ笑顔だ。

「俺は南 雷牙。よかったら仲良くしてよ」

「……ふん」

あれ、あれれ。

ザクロまんざらでもないでしょ、その顔。

「新葉 ザクロだ」

ほら。私がザクロと雷牙の出会いの部分を奪ったかと少し心配してたけど、大丈夫なようだ。

確かにザクロにこれだけにこにこして話しかける人はいないもんね。ザクロはもしかしたら嬉しいのかもしんない。

「これからよろしくな!」

雷牙の可愛い笑顔をザクロはスルーしたけど、顔が嫌がってないのはよく分かる。

心配しなくても、きっとザクロと雷牙は親友になるんだろう。

なんだか嬉しくて、私までにこにこしてしまった。

初々しい文なので、何か気になる点があれば教えてください。よろしくお願いします。

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