悲しい世界
その夜、冷夏はとてつもない悪い夢を見た。魘され続け起きたときはすでに午前10時過ぎだ。「また、あの夢か。」冷夏は自分の額に手を当てながら外を見た。「おはよう。」冷夏は正親に言いながらテレビを見始めた。「あぁおはよう。ずいぶんと起きるのが遅いな?」「嫌な夢を見たからよ」冷夏はソファに座りながらお茶をのみ始めた。すると突然テレビから緊急のニュースが飛び込んできた。「緊急ニュースです。昨日の夜に国会議員厚田太郎議員が宿泊先のホテル内で何者かに射殺される事件が起きました。警察は殺人事件として捜査する方向です。」テレビから流れるニュースに冷夏と正親はテレビから目をそらす。冷夏は正親が座っている横の椅子に腰掛けた。「今日の仕事は何なの?」「あぁ、こいつだ。久野塚美奈。かなり恨まれてるな。依頼人は全部で十人。准看護師で港病院に勤務。」「そんなひとになぜ殺しの依頼が?」正親は頭を手でかきながら冷夏を見た。「医療ミスを引き起こした。それの原因が彼女だ。そしてそれを何度も引き起こした。この女の後ろには院長が絡んでる。恐らく院長の愛人かなにかだろ。でなければ庇ったりはしないだろ。」正親はファイルを机に置いた。「そうね。で、何時に行えばいいの?」「今日の夜にこの女は院長と食事だ。その帰りだな。」冷夏は少し悲しい目をしながら「分かった。」その場を立ち去った。