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名家の令嬢の葬儀には多くの参列者が集まった。
顔馴染みの人々は故人の兄と夫に挨拶を終えると平林のところにも挨拶にきた。
医者や医師会の重鎮、製薬会社の社長や重役に医大の教授など。
彼らを訪ねる際に睦はいつも平林を連れていたから彼らとは顔馴染みだ。
「平林殿、このたびは誠にお悔やみ申し上げる」
「恐れいります」
何回このやり取りをしただろう。
ただただ機械のように繰り返していた。
「大丈夫か?」
「はい、陸様」
主人を溺愛していた当主にすら心配されるほどの顔色だとは、平林だけが気付いていなかった。
「平林。母様はずっと天国からみていてくれるわ」
「そうですね、海桜様」
3人の子供達は何故かずっと平林の側にいた。
幼いながらに聡明な海桜は母の真実の想いに気付いていたが、結局彼にそれを告げることはなかった。