泥沼の始まり
「おはよう。ずっと泣いてたの?」
別れ話をした後の朝とは思えないほど、優しい隼人。
悠は
目を真っ赤にしながら「うん」とうなずく。
「やっぱり納得できない。どうして突然?
マンネリも今に始まったことじゃない」
たしかに、どのカップルにもいえることだが、
2人は時間の経過とともに、
デートコースの単調化、連絡頻度の減少など、
たくさんのいわゆるマンネリ減少を実感していた。
「やっぱりおかしいよ。
好きな人でもできたの???」
実は悠には隼人に近づく女の影を実感している節があった。
「あっあの同じ職場の手作りクッキー作ってきた女の子と何かあったでしょ?」
「うーーーん。」
黙る隼人。
そんな隼人の顔を見ながら、
もう6年もこの隼人のしぐさを見ていると、
それが図星であることくらいわかるのに・・・と少し勝ち誇った気持ちになりながら
話を続ける悠。
「はっきり言ってみて」
「うん・・・実はその子に告白されて、悠の事好きなのかどうかわからなくなった・・・」
「そっか・・・・」
「俺、もう仕事いかなきゃ。悠は休みでしょ?」
「うん。ちゃんと話したいから帰ってくるの待ってる」
「わかった・・・」
いつもしていた行ってらっしゃいの、ちゅうはしない。。
もう2度としないのかな・・・
一人ぼっちになった隼人の部屋で、
まさか失うことになろうとは思わなかった隼人との
たくさんの思い出に思いを馳せながら、
かつて同じ煙草の銘柄だと喜んだ、マルボロライトを
ただ、自分を落ち着かせる為の薬のように
新しい煙草に火をつけては消し、次の煙草に火をつけるそんな行為を繰り返していた。