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家政婦始めます②

今話も読みにきてくださってありがとうございます。

相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。


一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。

次の日、朝


昨日、家に帰る前にレオニス様と食材を買いに行っておいて良かった。


魔鉱石の力でいつも涼しく保たれる魔道具である冷蔵庫の中は空っぽだった。


「普段料理なんてしないからな」


レオニス様はそう言ったが、こんな立派な冷蔵庫を置物にしておくなんて勿体無い。


冷蔵庫だけではない、スイッチを押すだけで火がつくコンロや手をかざすだけで水が出る水道など、このキッチンは貴族でも全部揃えられるかという新しい魔道具があちこちにある。


さすが魔法師団の団長様の家だ。


今日は魔法師団に出勤すると言っていたので、朝食を準備しておこう。


お弁当も必要だろうか?一応作っておいていらないようなら私が昼に食べればいいだろう。


鍋に水を入れ、魔道コンロにかける。


冷蔵庫から昨日買った野菜とベーコン、卵を出して手早く洗う。


パンをサンドイッチ用にスライスする。


おお、包丁もなんて切れ味がいいんだ。


付与の魔法でもかけてあるに違いない。


トマトも簡単に薄く切れる。


フライパンに厚めに切ったハムを入れ火にかけると、ハムが焼けるいい匂いがキッチンにたちこめる。


一つ一つが素晴らしく使いこごちのいいキッチンに感動していると、レオニス様が二階から降りてきた。


「レオニス様、おはようございます」


「おはようティナ」


レオニス様はすでに着替えていて、朝から爽やかだ。


「いい匂いがするな。朝ごはんを作ってくれたのか。ありがとう」


「そんな、家政婦なので当たり前ですよ」


レオニス様はダイニングの椅子に座った。


「コーヒーですか、紅茶にされますか?」


「コーヒーを頼む。ところでキッチンの使い心地はどうだ?困ったことはないか?」


私はレオニス様の前にコーヒーを置きながら興奮気味に言った。


「困ったことなんてありません。このキッチンは最高です。コンロも水道もすごく使い勝手がいいんです」


「そうか、そう言ってくれると作ったかいがあったな」


作ったかいということはもしかして…。


「もしかしてレオニス様がこのキッチンを作られてのですか?」


「魔道具はそうだな」


すごい!こんな魔道具を作った人が目の前にいるなんて。


「すごいです!とっても便利なんですよ。もしかして包丁も?」


「ああ、切れ味が落ちないよう付与がかけてある」


お値段をつけるならきっとびっくりするほど高いに違いない。


「だからものすごくよく切れるんですね。トマトも本当に綺麗に切れるんですよ」


私はレオニス様にトマトの断面を見せた。


「喜んでもらえたなら何よりだ。俺は料理より魔道具作りの方が楽しいからな」


モノを作るのがお好きなのだろうか。


ふと気がつくと、私がキッチンの素晴らしさを熱く語ってしまって、レオニス様は目の前の朝食に手をつけていない。


「すいません、つい話し過ぎてしまって。どうぞ召し上がってください」


すると、レオニス様は首を傾げた。


「ティナは一緒に食べないのか?」


「え?私は家政婦ですから」


家政婦が主人と同じテーブルで食事なんて聞いたこともない。


「この家には俺しかいないんだ。一緒に食べられる時は一緒に食べよう。その方が一人で食べるより美味い」


「でも……」


私が戸惑っていると、レオニス様はイタズラを思いついたような顔で言った。


「それともなにか。ティナは俺と同じテーブルで食事をするのは嫌なのか?それなら無理にとは言わないが……」


「嫌なわけありません!」


レオニス様と同じテーブルなんて恐れ多いが、嫌なわけがない。


「じゃあ待ってるからティナの分も用意しておいで」


優しいレオニス様に涙が出そうになる。


父や母がいなくなって、誰かと同じ食卓で食事ができるとは思いもしなかった。


「はい、すぐに用意してきます。少々お待ちください」


私は手早く自分の分を調理すると、レオニス様の前の席に座った。


「お待たせしました」


レオニス様はにっこり微笑んだ。


「じゃあ食べようか。夜は帰りが遅くなる時は連絡するから、それ以外はこうして一緒に食べたい」


出そうになる涙をぐっと堪える。


「はい、喜んで」


 食事が終わると、レオニス様はテーブルの上に、斜めがけの鞄と革の財布を置いた。


「これはティナの魔法鞄と今月分の生活費の入った財布だ。魔法鞄はこの家1軒くらいなら余裕で入るようになっている」


「魔法鞄!? そんなとんでもないものお預かりできません」


魔法鞄なんて容量が少なくても数ヶ月分の給料が飛んでいく代物だ。


「この鞄は俺が作ったものだから元手もかかってない。安心して使ってくれ」


魔法鞄まで自分で?どんだけすごい人なんだ。


「それなら…家政婦としてお借りしておきます」


「ティナ用にと思ったんだが、気に入らないなら違うデザインで新しく作るぞ」


レオニス様に新しく作らせるなんてとんでもない!


「あ、ありがたく頂戴します。でも本当にいただいていいのですか?」


「もちろんだ。使ってくれると嬉しい」


絶対に街で取られないようにしなければ。


さらに財布を開けた私は多すぎる1ヶ月分の生活費にまた驚くのだった。


 何とかレオニス様との妥協点で財布も預かると、レオニス様の出勤時間になった。


「レオニス様、これ、いらないかもしれませんがお昼のサンドイッチです」


私は家を出ようとしているレオニス様にサンドイッチの入った紙袋を渡した。


「お昼まで作ってくれたのか? それは嬉しいな。最近書類仕事が多くてなかなか昼食を取る暇がないんだ」


レオニス様が嬉しそうにしてくれる。


どうしようか悩んだが、作って良かった。


「それならこれからも作りますね。お気をつけていってらっしゃいませ」


「誰かに見送られるのはいいものだな。それじゃあ行ってくる」


バタンとドアが閉まると、思わず頬がニヤける。


「レオニス様、やっぱり素敵。優しい」


これから毎日レオニス様に会えるなんて夢のようだ。


ハッ! いけない、いけない。


せっかく雇ってくれたレオニス様をがっかりさせてはいけない。


洗濯にお掃除。


やるべきことは沢山ある。


まずはお洗濯から始めよう。


読んでいただきましてありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

投稿ペースは以前より少しゆっくりになるかもしれませんが、よろしくお願いします。

ブックマーク、評価もよろしくお願いします。


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