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病院

今話も読みにきてくださってありがとうございます。

相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。


一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。

 次に起きた時は、どこかのベットの上だった。


看護師さんらしき人が、私の意識がない間の経緯を教えてくれた。


ここはアストリエ王国の王立病院だそうだ。


私は両親とウルフハウンドという魔獣の群れに襲われていたところを、魔獣の群れを見たという情報で巡回していた魔術師団に助けられた。


父はかなりの魔獣を一人で倒していたが、力及ばず爪の傷が致命傷になっていたらしい。


母は最後まで私を守るように覆い被さっており、それで私は足の傷だけで済んだのだそうだ。


普通一般庶民が王立病院に入院する事はないが、魔術師団の団長直々に運び込まれたおかげで、すぐに手術を受けられた。


「あなたがここに運び込まれた時は、そのハニーブロンドのサラサラの髪も、かわいい顔も血泥ですごかったのよ」


よくそんな状態の私をこんないい病院が受け入れてくれたな。


「ここに運ばれなければ、日常生活に支障が出ていたかもしれなかったのよ。ルグラン団長に感謝しないとね」


看護師さんの言葉に、私を助けてくれた青みを帯びた黒髪の男性の顔を思い出す。


「ルグラン団長とおっしゃるのはもしかして、青みがかった黒髪の方ですか?」


「そうよ〜。レオニス•ルグラン様。あの若さで王立魔法師団の団長様。さらにイケメンで独身。憧れてる女性は多いのよ」


確かに、すぐに意識を失ってしまった私だが、彼の顔は目に焼き付いて離れない。


あの深いブルーの目や、もう大丈夫だと言ってくれた声は生涯忘れる事はないだろう。


そんな雲の上の人とはもう会う事ができないとしても。


「それにしても、ここの入院費用はおいくらくらいでしょう。馬車の荷物もめちゃくちゃになってしまったし、私に支払えるくらいだといいのですが」


豪華な内装の一人部屋。


それも王立病院。


一体費用はいくらかかるのか恐ろしいが、両親が命をかけて守ってくれたのだ、生きているだけで感謝だ。


「あら、費用は団長からもういただいているわよ」


「え?」


「レオニス団長が、自分が連れてきたのだから支払いは自分がするって。そんなところも素敵よね〜。だから安心してしっかり治していきましょうね」


「はい、よろしくお願いします」


なんで事だ。


助けてもらった上に支払いまで。


これは感謝という言葉では言い表せないな。


できるならすぐにでは無理だとしても、入院費だけでも返済したい。


「忙しい団長様でしょうが、退院したら会ってお礼を言いたいですね」


なかなか会えない雲の上の人かもしれないが、ちゃんとお礼は伝えたい。


「あら、すぐにお礼が言えそうね」


そう言った看護師さんの言葉にドアの方を見ると、あの時私を助けてくれた黒髪に深いブルーの瞳の男性が立っていた。


「いや、ノックしたんだがな。話が盛り上がっていて返事がなかったんだ」


改めて見ると思っていたよりずっと背が高く、かっこよかった。


看護師さんが、ごゆっくりと言い残して部屋を出ていった。


二人になってしまった。


緊張する。


「傷はどうだ?この先、生活に支障はないのか?」


わざわざお見舞いに来てくれたのだろうか?


「はい、何とか。この度は命を助けていただきありがとうございました」


私はペコリと頭を下げた。


「いや、もう少し早ければ、君の両親も助かっていたと思うと、申し訳ない」


団長様が私に頭を下げるなんて。


「そんな!団長様が頭を下げる事なんて何もありません。魔法師団の方が来てくれなければ、両親が命をかけて守ってくれた私もここにはいなかったでしょう」


「しかし……」


「両親は私に生きるように言いました。それができるだけで感謝の気持ちでいっぱいです。おまけに、こんないい病院に入れて頂いたお陰で歩くのに支障は出ないだろうと言われました」


「それは良かったが……」


団長様は少し考えると私に近づいた。


「君は退院してから行くところがあるのか?」


「……」


はっきり言って行く当てはない。


両親はどちらも親兄弟がいなかったし、旅が多かったので家も親戚もない。


天涯孤独なのだと改めて実感した。


「……行く当ては今はないのですが、なんとか職を見つけようと思ってます。入院費も……すぐには無理ですが、職につき次第少しずつ返していきたいと思っています」


団長様は少し考えるように間を置いた。


「君は、家事はできるのか?」


家事?一体なんの関係があるのか。


一人で生活していけるだけの家事能力ということか。


仕事が忙しい両親のために、家事全般は私の仕事だったのではっきり言って得意な方だ。


「はい、出来ます」


私がそう答えると、団長様から意外な言葉が返ってきた。


「入院費の件は本当にいらないんだが。まあそれは置いておいて、良ければなんだが、その……俺の家で家政婦をしてもらえないだろうか?」


「え?団長様の家でですか?」


すると、団長様は少し慌てたように答えた。


「言っとくが、やましい気持ちは何もないぞ。俺は魔法師団の団長になって国王から一軒家をもらったんだが、はっきり言って家事ができず持て余してるんだ。だから今、家を切り盛りしてくれる家政婦を探している」


そして小さい声で付け加えた。


「それと君が少し似てる気がして……。俺の死んだ妹に」


団長様も家族を亡くされていたなんて。


どうせ行く当てもない。


せっかくなら私の命を助けてくれた団長様の為に働きたいと思えた。


「では、お言葉に甘えて。雇って頂いてもよろしいですか?」


団長様はホッとしたように少し笑った。


「あ、ああ。では、退院したらよろしく頼む」


こうして私は魔法師団長の家政婦として雇われる事になったのだ。


読んでいただきましてありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

投稿ペースは以前より少しゆっくりになるかもしれませんが、よろしくお願いします。

ブックマーク、評価もよろしくお願いします。


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