亡き父の贈り物
今話も読みにきてくださってありがとうございます。
相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。
一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。
市場はこの前ノエルと行った街の中心あたりにある。
レオニス様のお宅は街の北寄り、王宮から近いところに立っている。
魔法師団も王宮のすぐ側なので仕事に行くのは便利だ。
市場までは少しあるが、馬車に乗るほどでもなく、充分歩いて行ける距離だ。
天気もいいし街を散策しがてら市場まで歩いて出かけよう。
王都には両親と何度か来ていた。
仕入れた魔石を道具屋や工房に卸す為だ。
しかし、そんなにゆっくりしている暇はなく、いつも色んな店の前を荷馬車で通り抜ける事がほとんどだった。
改めて一人で歩いて王都を見てみると、色んな店がある。
洋服や雑貨屋、カフェに雑貨屋。
あれ?この雑貨屋は見覚えがある。
吸い寄せられるように一軒の雑貨屋に入ってみると、やはり懐かしい感じがした。
「私、ここに来た事がある気がする」
キョロキョロ店内を見回していると、奥から店主らしきおじさんが出てきた。
「いらっしゃいませ。何かお探しのものがございますか?」
「いえ、少し見せてもらっていただけで……」
そこまで言って、店主のおじさんが私を見てとても驚いている事に気がついた。
「あの……?」
「ティナちゃん?ティナちゃんなのかい?」
やはりここは知っている店だったのか。
「はい、ティナです。すいません、あまり覚えてなくて」
「ティナちゃんと最後に会ったのはかなり前だからね、無理もない。ご両親は残念だったね。しかし、ティナちゃんの元気な姿を見られて安心したよ」
おじさんはしきりにハンカチで涙を拭っている。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。すまない。私は君のお父さんと若い頃からの友人でね。魔物に襲われて亡くなったと聞いてひどくショックだったよ」
お父さんの友達だったのか。通りで店に見覚えがあるはずだ。
「ティナちゃんは助かったと聞いたんだが、その後の行方がわからず心配していたんだ。大丈夫かい?住むところはあるのかい?」
心配そうに私を見つめるその目はなぜかお父さんに似ている気がした。
「実は魔法師団長様のところで住み込みの家政婦として雇っていただいたんです」
私がそう答えると、おじさんは驚いていた。
「あの魔法師団長のレオニス様のところかい?そうか…住むところも仕事もあるんだね。良かった」
そしておじさんは急に思い出したかのように、私にちょっと待っててと言って店の奥に奥に行った。
戻ってきたおじさんは小さな箱を手にしていた。
「ティナちゃん、これを」
おじさんが箱を開けると中から綺麗な雫型のグリーンの石がついたネックレスが現れた。
「このネックレスは……?」
訳がわからず私がおじさんをみると、おじさんは優しい目で私を見て言った。
「これはね、君のためにお父さんが注文してくれていたんだ。娘の成人の記念に魔石のネックレスを送りたいってね」
「私に…?」
「ティナちゃんをなんとしても探し出してこのネックレスを渡そうと思っていたんだが、こんなに早く会えるとは。アイツが会わせてくれたのかな」
おじさんはまたハンカチで目を押さえ出した。
「あの、お代は…?」
「ああ、大丈夫。お父さんにもらってあるよ。それよりこれからも時々この店に立ち寄ってくれるかな。俺はダニエルだ。何か困った事があればいつでも相談してくれ」
「はい、ありがとうございます」
私は貰ったネックレスを鞄にしまうとお礼を言って店を出た。
まさかこんな出会いがあるなんて。
まだ胸がドキドキしている。
お父さん。お父さんの友達に会えたよ。
お父さんのネックレス、ちゃんと受け取ったよ、ありがとう。
心の中で報告すると、その風が優しく髪を撫でてくれた気がした。
読んでいただきましてありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
投稿ペースは以前より少しゆっくりになるかもしれませんが、よろしくお願いします。
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