第三章 アメリカ留学
近藤は、アメリカへの留学のきっかけとなった出来事を思い返していた。大学を休学し、心の傷を抱えながら過ごしていた時、母を通じておじさんから一通のメールが届いた。おじさんは彼の事情を知り、アメリカでの新たなスタートを提案してくれたのだ。
「近藤、君はまだ若い。新しい環境で自分を見つめ直すチャンスを掴んでみないか?」おじさんの言葉が、近藤の心に響いた。彼は一度自分を壊し、新たに再生する必要があると感じた。そして、オレゴン大学への留学を決意した。
オレゴン大学に合格し、寮に住み始めた近藤は、新天地での生活に期待と不安を抱えていた。広大なキャンパス、活気に満ちた学生たち、そして新しい文化。全てが新鮮で、同時に圧倒的だった。彼は心の片隅でジャスミンのことを忘れられずにいたが、アメリカでの新しい生活に集中しようと決意した。
トランプ政権下のアメリカでは、アジア人への差別が心配されていた。しかし、オレゴン大学のリベラルな環境では、その心配は杞憂に終わった。多様性を尊重する文化の中で、近藤は自分が受け入れられていることを感じ、安心感を得た。
オレゴン大学のキャンパスは、上智大学とは全く異なるスケール感を持っていた。広大な敷地に点在する建物、広がる芝生、そして多くの学生たちが行き交う様子は、まるで映画のワンシーンのようだった。上智大学のコンパクトなキャンパスとは対照的に、ここでは空間の広がりが感じられ、近藤はそのスケールに圧倒された。
講義は厳しく、教授たちは学生たちに高い期待を寄せていた。毎日の課題やリーディング、ディスカッションは、近藤にとって大きな挑戦だった。日本の大学生活では、勉強に対する姿勢が甘かったことを痛感した。アメリカの大学生たちは、勉強することが当たり前であり、彼らの姿勢に感銘を受けた。