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青の時代  作者: 近藤輝
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第二章:暗い焦燥



ゼミが始まって一ヶ月が経ったが、近藤はジャスミンと親しくなることができず、焦燥感に苛まれていた。彼女の存在は教室を明るく照らし、誰もが彼女に引き寄せられているように見えた。そんな中、近藤は彼女と表面上の親しさしか築けないことに苛立ちを感じていた。


ある日、近藤は部屋で一人テレビをつけた。画面には、数ヶ月前にオリンピックで金メダルを獲得した羽生選手の特集が映し出されていた。彼のフィーバーはまだ続いており、羽生選手は早稲田大学出身で、自分と同年代でありながら日本の英雄となっていた。


「彼は本当にすごいな…」近藤はテレビを見つめながら呟いた。しかし、早稲田大学の名が出るたびに、彼の心には複雑な感情が渦巻いた。上智大学はエリートとされるが、早稲田や慶應に比べると少し劣ると感じることが多かった。近藤はそのエリート意識と学歴のコンプレックスに苦しんでいたのだ。


「羽生選手は別格だよな…。自分と同じ大学生とは思えない。」彼は心の中でそう思いながら、リモコンでチャンネルを変えた。次に映ったのは、日本大学のアメフト部で起こった危険タックル問題の特集だった。部活動に縁のない近藤にとって、この問題は遠い世界の出来事のように感じられた。


「同じ大学生でも、アメフトの選手たちの方がこの世界の主人公なんだな…」近藤はそう感じた。自分はただの一大学生に過ぎず、特別な存在ではないという無力感が胸に広がった。ジャスミンのような輝く存在は、羽生選手やアメフト選手のような「この世界の主人公」とお似合いだと思い、暗い気持ちに包まれた。


---


テレビの音が耳に入らなくなるほど、近藤の心はジャスミンのことを想い始めた。彼女の笑顔、優雅な立ち振る舞い、そして瞳の中の青い輝きが、彼の心を捉えて離さなかった。だが、それと同時に、自分が彼女にとって何の特別でもない存在であることが、彼を苦しめた。


ゼミで彼女と話す機会があっても、会話は表面的なものでしかなかった。ジャスミンは誰に対しても優しく、分け隔てなく接するが、それが近藤にとっては辛かった。彼女が他の男子学生と楽しそうに話すのを見るだけで、近藤の心の中に嫉妬の炎が燃え上がるのを感じた。ジャスミンにとって近藤は、他のゼミ生と何ら変わらない、ただの一大学生でしかなかった。


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「自分の人生で、羽生選手やアメフト部の選手のように、何かを頑張ったことはあったのだろうか?」近藤は自問自答した。どんなに努力しても、彼らのような注目を浴びることはない。自分も「この世界の主人公」になれる日は来るのだろうか?どうすれば、自分もそんな存在になれるのか?焦燥感が彼の胸を締め付けた。


彼女が教室に入ってくるたびに、彼の心は暗い情熱で燃え上がったが、その炎は嫉妬と無力感をも内包していた。ジャスミンの優しさは彼にとって美しくも残酷なものであり、彼女に特別な感情を抱かれていない現実が、近藤の心に深い傷を刻んだ。


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近藤はその輪に入れないのではなく、彼女と話すことはできても、その関係が表面的なものに過ぎないことに苦しんでいた。彼の心の中で燃える暗い情熱は、彼の学生時代の象徴であり、彼の内なる葛藤を描いていた。近藤は自分自身の無力感と向き合いながら、ジャスミンとの距離を縮める方法を模索し続けるのだった。


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「どうして自分は彼女に近づけないんだろう…」近藤はそう自問自答しながら、テレビの音を聞き流していた。羽生選手やアメフト選手たちのように、この世界の主人公にはなれない自分。それでも、彼の心の中には、ジャスミンへの思いが消えることなく燃え続けていた。


彼は自分自身の無力感と向き合いながら、ジャスミンとの距離を縮める方法を模索し続けるのだった。近藤の心の中で揺れ動く暗い情熱は、彼の学生時代を象徴するものとなり、彼の成長と共に変化していくことになるだろう。

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