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皇太子妃候補をゼロにするお仕事  作者: 美雪
番外編(二)

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13/15

13 活用は計画的に①

 お読みいただきありがとうございます!

 知らないうちにポイントが増えていたのに気づきました。嬉しいです!

 バレンタインデーということで、読者様にチョコレートのかわりに番外編を贈りたいと思います。

 よろしくお願いいたします!



 奥の宮に三人の皇太子妃候補が入った。


 婚約者候補兼皇太子妃候補の担当者のアマリアは早速顔合わせの茶会を開いた。


「皇太子妃候補の皆様、ごきげんよう。私は皇太子殿下の婚約者候補兼皇太子妃候補の担当者に任命されたアマリアです」


 アマリアの挨拶を聞いた皇太子妃候補は驚いた。


「貴方が皇太子殿下の婚約者候補ですって?」

「貧乏伯爵家の令嬢よね?」

「よろしくね」


 明らかに候補の二人はアマリアを見下すような言動だったが、一人だけは最低限の挨拶はするいう礼儀を守っていた。


「皆様にご説明がありますので、資料をごらんください」


 以前は口頭説明を行っていた。


 そのせいで聞いていない、知らない、何も言われていないといった言い訳をする候補が多かった。


 アマリアは奥の宮で過ごすにあたっての基本的なルールについての資料を作成した。


「何かあればこちらをご確認ください。ご自身の行動が正しいかどうかが簡単にわかります。では、二ページ目から読みます」


 アマリアがページをめくると、皇太子妃候補もページをめくった。


「皇太子妃候補はただの貴族と同じ。偉くもなんともありません。奥の宮は皇帝宮の一部で、皇帝陛下が所有しています。皇太子妃候補に与えられた宮殿ではありません。奥の宮に住めるのは、皇帝宮で働く者が住み込み用の部屋を与えられるのと大差ありません。ただの貴族でしかない皇太子妃候補が我儘を言えば不敬になるのは当然です」


 皇太子妃候補は自分が皇帝家に嫁ぐことを前提に奥の宮に入る者。それだけに偉いと思っている。


 それは盛大な勘違い。


 皇太子妃候補だろうが、奥の宮に住んでいようが、ただの貴族。


 そのことを最初に伝えておくべきだとアマリアは思った。


「皇帝宮や奥の宮に勤めている者が従うのは皇帝陛下と皇太子殿下です。皇太子妃候補には命令権がありません。何かある時は、皇帝宮や奥の宮に勤めている者に丁寧に確認してください。もう一度言います。命令はできません。上司ではないからです」


 アマリアは皇太子妃候補に自由でわがまま放題の生活を提供する気は一切なかった。


「奥の宮での生活は学校と同じ。規則正しい時間割によって一日の予定が決まっています。皇太子妃候補の事情で予定を変更することはできません。時間割は三ページをご覧ください」


 すでに時間割の方を見ていた皇太子候補の表情は冴えなかった。


 早寝早起き。食事やお茶の時間はきっちりと決まっている。


 午前中は全て皇太子妃候補にふさわしくなるための勉強時間で、寝坊ができないようになっていた。


「午前中は講義、午後は読書、積み木練習、お茶の時間のあとは自由時間になります。質問がある方は?」

「積み木練習について質問します。これはどのような練習でしょうか? 何か特別なものを積み木で作るということでしょうか?」


 アマリアは積み木競争について説明した。


 いずれある積み木審査で良い成績を出すための練習で、制限時間内にできるだけ高く積み上げるという内容。


 すると、質問者以外の候補二人はすぐに怒りをあらわにした。


「ふざけないで!」

「積み木競争なんて嫌よ!」

「積み木による審査は皇太子殿下が皇太子妃候補の能力を見極めるために考えられたものです。時間割通りに過ごせない方は、すぐに退宮届を出してください。皇太子妃候補が少ないほど仕事が楽になるので、私も奥の宮の者も大歓迎です」


 文句を言った二人の候補は苦虫をかみつぶしたような表情で黙り込んだ。


「自由時間ですが、どの程度の自由でしょうか? 外出はできるのでしょうか?」

「それはもう少し先のページをご覧ください。七ページです」


 候補の全員が七ページ目を確認した。


「外出は禁止です。奥の宮で生活する間は、用件がない限り部屋の外には出られません。自分の部屋に他の候補を呼ぶのも禁止です」

「これだと軟禁のようなものではなくて? 私たちは名の知れた家柄の貴族。だというのにこのような扱いをしていいのかしら? 皇太子妃候補の担当者である権限を悪用しているのではなくて?」

「この資料にある内容については全て皇帝陛下に承認いただいております」


 アマリアはカインを通して皇帝の了承を取り付けていた。


「名の知れた家柄の貴族であっても、ここは皇帝陛下の宮殿です。貴族の屋敷とは違い、多くの守秘義務が課せられます。ご留意ください。また、何かありましたら部屋付きの侍女に確認してください。念のために言います。侍女は部屋付きです。皇太子妃候補付きではありません。命令も指示もできません。できるのは確認することだけです」


 以前は皇太子妃候補付きの侍女としていたせいで、皇太子妃候補は侍女たちを部下だと勘違いし、命令するような言動をしていた。


 そのようなことがないように、侍女たちはあくまでも部屋付きであって、候補付きではないとすることになった。


「私は皇太子殿下の代理として皇太子妃候補に対応する許可を得ています。通常の礼儀作法に照らし合わせて問題がある場合は、皇太子殿下への不敬になる可能性があります」

「皇太子殿下の威を借るわけね」

「婚約者候補らしいわ」


 嫌味を言う候補に対し、アマリアはにっこり微笑んだ。


「私の噂をご存知でしょうか? 皇太子妃候補をゼロにするための飾りの婚約者と言われていました。現在の私は、皇太子殿下によって皇太子妃候補をゼロにするための正式な担当者に任命されております。奥の宮の居心地が良ければ教えてください。悪くできるか検討してみます」


 そして、


「最後に特別な贈り物があります」

「贈り物?」

「特別な?」

「何かしら?」


 アマリアが用意したのは茶色の書類封筒だった。


「こちらです」

「書類用の袋だわ!」

「茶色だなんて!」

「せめて白にしたらどうなの?」

「皇太子殿下は経費削減に努めております。そのために白い封筒よりも若干安価な茶色の封筒なのです」


 アマリアは冷静な口調で答えた。


「中に入っているのは便箋と封筒です。皇太子妃候補を辞退されたい場合、皇太子殿下宛あるいは家族宛の手紙に書けるように配慮いたしました。二セットしかありませんので、他のことには使うのはお控えください。それとは別に退宮届もあります。これを書いていただければ、奥の宮から実家に帰れます。ですが、二度と戻ることはできません。一時的な外出届ではないので気を付けてください。私からの説明は以上になりますので、これで失礼いたします」


 アマリアが去ったあと、皇太子候補は愚痴を言い合った。


「最低な女だわ!」

「あんな女性が婚約者候補だなんて!」

「負けられませんわね」


 三人は侍女によって皇太子妃候補用の部屋に案内された。


 高位の令嬢であっても驚くほどの豪華さ。


 さすが皇帝の宮殿だと皇太子妃候補の全員がそう思った。


 しかし、豪華な部屋であることには理由があった。


「こちらが最も豪華な部屋になります。複数の希望者がいる場合はじゃんけんで勝った方になります」


 皇太子妃候補が仲良くなるのを阻止するため、アマリアは良い部屋を取り合う形式にした。


「豪華な部屋ほどご実家に請求される金額も多くなりますのでご留意ください。では、このお部屋を使用されたい方はいますでしょうか?」

「一番良い部屋ってことよね? この部屋がいいわ!」

「私もここがいいわ!」

「私もここがいいですわ」

「では、じゃんけんでの勝負になります。皆様、心の準備はよろしいでしょうか? 勝者は一人でございます」


 皇太子妃候補たちはにらみ合った。


 続きがあります。

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