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皇太子妃候補をゼロにするお仕事  作者: 美雪
番外編(一)

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12/15

12 愛ある手紙➁



 アマリアから届いた手紙を読んだカインは驚いた。


「やはりアマリアは優秀だ!」

「どのようなことが書いてあったのですか?」


 そう聞いたのも手紙を届けたのもノアだが、側近室の全員が付き添っていた。


「アマリアは食べ物が好きらしい」


 カインは答えた。



 敬愛なるカイン様


 ご多忙の中、お手紙をいただきありがとうございます。

 何もないまま日々が過ぎてしまいそうな不安がありましたので、とても嬉しかったです。

 ご質問にありました私の好きなものは食べ物です。

 ご存知だと思うのですが、私の実家は裕福ではありません。一日の食事は二食で、朝は必ずパン一つとミルク一杯でした。

 皇帝宮に就職してからは三食が保証され、さまざまな食事ができることに感謝しております。

 ですが、気になることがあります。それは、日々の食事に無駄があることです。

 皇帝宮で働く人々の食事は上位者が豪華で下位者は質素です。

 階級差が食事内容の違いになるのは当然だと思うかもしれません。ですが、下位者の方が肉体的な負担が多いのに、食事の量が少ないのは疑問に感じました。女性でももっと食べたいという者が多くいます。

 現在は一律で配膳された食事のトレーを受け取るのですが、個人の嗜好や適量に差があるせいか、上位者の方が豪華だというのに食事を残す人が多くいます。

 昼食時間に対して食事が豪華過ぎます。勤務予定を考え、ゆっくり味わって食べる者はほとんどいません。男性は驚くほど早く食べます。

 女性は体型や制服のサイズを気にして食べ過ぎに注意しています。

 そういったことから、豪華でたくさん盛られた食事が出ても残されてしまい、捨てられてしまうのです。

 これは改善すべきことではないでしょうか?

 私の周囲もそのように思っており、嗜好に合わせて適量を自分で皿に盛るビュッフェ形式への変更がいいのではないかと言っています。

 その方が食品廃棄物を減らすことができ、労力も経費も減りそうです。

 食事時間の混雑と空席待ちがすごいので、立食用のカウンターを設置するのが有効だという意見もあります。

 皇帝宮で働く人々にとって日々の食事は喜びであり、活力であり、忠誠心を育むものです。

 皇帝宮における食事に関する無駄がなくなり、人々が心から喜ぶ食事が提供されることを願うばかりです。

 カイン様もお忙しいとは思いますが、どうかお体に気を付けて。

 直筆の美しい手紙にカイン様の優しさと愛を感じました。

 心から感謝申し上げます。文通がとても楽しみです。

 取り急ぎお返事まで。アマリアより


 

 カインは一字一句を早く読みたい気持ちを抑えながら、しっかりと内容を確認した。


 アマリアの正直さと誠実さ、賢明さが伝わってくる。


 何よりも嬉しかったのは、署名の部分。


 Mの部分がハートのような形になっていた。


 それを見ただけで、カインの心は幸せで舞い上がってしまいそうだった。




「感動した……これが恋文の素晴らしさか!」

「恋文?」

「アマリアが?」

「本当に?」

「解釈違いでは?」


 気になった側近と補佐はアマリアからの手紙を確認した。


「恋文よりも文通という言葉の方が適切です」

「そうだな」

「だけど、素晴らしいって部分はあっているよ」

「そうですね」


 側近と補佐はアマリアの手紙を高く評価した。


「質問の答えを書くだけでなく、カインが興味を持ちそうなことを書いています」

「無駄があると聞けば、気になるに決まっているからな」

「皇帝宮で働く全員にとってメリットがある」

「礼儀正しく、それでいて親しみを感じさせる文章でした」

「最後に効果的なマークを入れていました」

「ハートにしたのは直筆への礼かもしれないな」

「カイン、めちゃくちゃ嬉しそう」

「幸せそうです」

「嬉しい。幸せでもある。だが、手紙を読んだだけではダメだ。夕食の時に父上に話す。皇帝宮の改善につながるだけでなく、アマリアの優秀さもアピールできる!」


 カインはしぶしぶの日課になっていた父親との夕食が楽しみになった。




 やがて、皇帝宮の勤務者の食事について様々な変更があった。


 これまでは一律で配給されていた食事が、食べたい料理を選んで自分で皿に盛るビュッフェ形式になった。


 階級による食事差がなくなり、栄養バランスを考慮した健康的なメニューになった。


 立食カウンターが作られ、食事時間の混雑や空席待ちが少なくなった。


 皇帝の命令による変更だが、改善を進言したのは皇太子。


 婚約者候補のアマリアが食堂で同僚の侍女たちと食事に関係することについて意見を出し合い、皇太子宛の手紙に書いていたことも知られていた。


「皇帝宮で働く者のことをよくわかっている変更だ!」

「皇帝宮で働く者が喜ぶ変更よね!」

「それでいて経費削減にもなっているらしい」

「食品廃棄物も減ったらしいわ」

「さすがだ!」

「さすがすぎる!」

「素晴らしい!」


 皇帝、皇太子、そして婚約者候補アマリアの評判がグングン上がった。


 そして、食事時間に浮かぶ人々の笑顔もたくさん増えていった。



 お読みいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 食事の改善大事~!!これは働く人が大喜びするやつですな!!ごはんがうまい、早いのは再考の喜び…! アマリアの優秀さを父親にもアピールできてよかったね…!! [一言] 番外編ありがとうござい…
[一言] 番外編ありがとうございます。 何とも彼女らしい手紙だと思いました。
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