11 愛ある手紙①
お読みいただきありがとございます!
おかげさまで9/7に見たところ、日間9位になっていました。
感想、ブックマークや評価もいただけて、とても嬉しいです。
本当にありがとうございます!
完結だったのですが、お礼の気持ちを込めて番外編を追加することにしました。
楽しんでいただけたらと思います!
アマリアが婚約者候補になってから二日経過した。
皇太子付き侍女として普通に過ごしていると言えなくもないが、皇太子の婚約者候補としては違う。
やっぱりね!
皇太子妃候補と同じ。何もないまま時間だけが無駄に過ぎていく。
当然、このままではダメだとアマリアは思った。
「アマリア、元気がないわね?」
「どうしたの?」
「悩み事?」
「相談に乗るわよ?」
同僚の侍女たちがアマリアを心配して集まり出した。
「婚約者候補になりましたが、カイン様は多忙です。皇太子妃候補と同じく、何の音沙汰もないまま日々が過ぎ去りそうだと思って」
アマリアは賢い→今後の見通しを予想→皇太子妃候補と同じ→正式な婚約は無理
侍女たちは瞬時に危機を感じた。
「婚約者候補になったばかりでしょう?」
「重要なお仕事が立て込んでいるのよ!」
「皇太子殿下の執務は大変だもの!」
「これからどうするかを考え中なのよ!」
続々とカインを庇う発言が飛び出た。
「皇太子殿下は本気の本気でアマリアを愛しているわ!」
「そうよ! アマリアしか眼中にないわ!」
「本当は会いたいけれど、執務のせいで会えないだけなのよ!」
「そんな皇太子殿下を理解できるのはアマリアしかいないわ!」
更に、
「美形、身分、財力を考えて!」
「帝国一の玉の輿だわ!」
「誰もが憧れる相手よ!」
「大幸運よ!」
更に更に、
「女性に見向きもしなかった皇太子殿下がようやく結婚する気になったのよ?」
「奇跡だわ!」
「じっくり検討しなくちゃ!」
「お願いだから早まらないで!」
最後は懇願になった。
「ご意見ありがとうございます」
アマリアはお礼を伝えた。
「私の実家は貧乏なので社交デビューをしていません。皇帝宮に就職してからもそれほど経っていません。皆様の方がよく皇太子殿下については知っていそうなので、聞いてもいいでしょうか?」
「何かしら?」
「知っていることならいいけれど」
「カイン様をどのような方だと思うでしょうか? 本当のことを教えてください」
沈黙が漂った。
そして、
「素敵な方だと思うわ。本心よ」
侍女の一人が答えた。
「だって、あの顔よ? クラクラしそうなほどの美形だわ!」
「身分だって財力だって最高だし、最高の結婚相手よね」
「見初められたいと思う女性は数えられないほどいるわ」
次々と皇太子を讃える言葉が飛び出た。
「正直、婚約者になってほしいと言われて断る女性がいるとは思わなかったわ」
「そうよね」
「アマリアがなぜ嫌がるのかさっぱりわからないのが本音よ」
「そうよね。普通はすぐ了承じゃない?」
「皆様は奥の宮のことをご存知です。皇太子妃候補を積み木審査で容赦なく落としていたこともご存知ですよね?」
侍女たちは動揺した。
「皇太子妃候補が手紙を送っても開封しません」
侍女たちは更に動揺した。
「その手紙が最終的にどのようになったのかもご存知ですよね?」
大動揺。つまりは肯定だった。
「そ、それは興味のない女性だからでしょう?」
「好きな相手じゃなかったからだわ」
「読んでも仕方がないじゃない? 気持ちに応えられないわけだし」
「潔い対応だと思うわ!」
侍女たちは良い方に解釈した。
「アマリアの手紙なら必ず読んでくださるわ!」
「辞表を提出した時だってすぐに来たのでしょう?」
「すぐに確認した証拠だわ!」
なるほどとアマリアは思った。
「アマリアも手紙を書いてみたら?」
侍女たちはアマリアから手紙を出して、皇太子の反応を窺うよう提案した。
そこへノアがやって来た。
「アマリア」
「はい!」
アマリアはすぐに返事すると、ノアの方に近寄って軽く会釈した。
「御用でしょうか?」
「これを」
ノアはポケットから手紙を取り出すとアマリアに差し出した。
「皇太子殿下からです。すぐに内容を確認して返事を書きなさい。そして、その手紙と一緒に側近室へ持ってきなさい。私の方で責任を持って保管しなければなりません。絶対にこの手紙はなくさないように。いいですね?」
「かしこまりました」
多忙なノアは早歩きで立ち去った。
「手紙だわ!」
「噂をすればね!」
「皇太子殿下からだなんて!」
「すごいわ!」
すぐに内容を確認するということだったため、アマリアは手紙の端を破いて開封した。
愛しいアマリア
婚約者候補になってから二日経ってしまった。
今は急がなければならない仕事を抱えている。時間が取れない。そこで手紙を書くことにした。
恋文ならいかにアマリアを愛しているかを書くべきだろう。だが、私の気持ちを一方的に押し付けるだけの内容にはしたくない。
アマリアの喜びそうなことを書きたいが、私たちは知り合ったばかりだ。互いのことをもっとよく知るところから始めなければならない。
そこでアマリアの好きなものを教えてもらえないだろうか?
今後について検討する材料にしたい。できれば早めに返事がほしい。
アマリアの勤務が終わる頃は、皇族会議を兼ねた父上との夕食会が日課になっている。
会いたくても会えない。しばらくは文通で愛を育みたいことも伝えておく。
通常は筆跡を真似されないよう手紙を代筆させるが、少しでも私の気持ちが伝わるようアマリアへの手紙については直筆にする。
心からの愛を込めて。カイン
アマリアは早読みしたあと、再度じっくりと読んだ。
わざわざ直筆で手紙をくださるなんて……嬉しい。
直筆だからこそ、カインの気持ちが込められていることをしっかりと感じることができた。
流れるような字は美しく読みやすい。署名は力強く芸術的なまでの出来栄え。
カインらしさに溢れた手紙にアマリアは感動した。
「なんて書いてあるの?」
「恋文?」
「忙しいって?」
「返事を書くのよね?」
「急ぐようですので、便箋と封筒をもらいにいきます!」
走り出すアマリアに続き、同僚の侍女たちも付き添いとして走り出した。




