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完璧な俺に彼女ができる方法  作者: カップ焼きそば食いてぇ
1/1

俺の会長ライフが始まるらしい

ここ何に使うんすか

小さい頃虐待されていた。相手はお決まりの母の再婚相手。虐待というのは範囲が広いからどうなのかはわからないが。その「再婚相手」とやら近隣住民に通報され、いつの間にかどこかへ消えていった。今頃地獄のバカンスを楽しんでいるのだろうか。ま別に今年で17になる俺のことなど覚えていないのだろうけど。母はその後俺のことを大切に育ててくれた。なんとか生活保護を脱出して俺に良い生活を送らせたいとパートをフルタイムで入れてくれた。

 そんな母の姿を見て、俺も手伝わなきゃなと子供心に気遣い、家事などの俺が出来ること全てをしてきた。何が言いたいかって言うと、まぁ子供の頃から俺は完璧だったてこと。


 そんなこんなで怒涛の17年間を過ごし、俺は有名私立高の海藤高等学校に特待合格し、生徒会長になることができた。高校二年生で生徒会長なんてあり得るのかとも思うが、学年一位、全国模試一桁台の俺だから当然だろう。

 完璧な俺にも悩みはあった。それは彼女ができないことだった。


「____何故だ」

 生徒会室で俺は腕を組みながら呟いた。

「何がですか?」

 俺のことをちらりと一瞥し副会長八乙女結華が答える。彼女はとても気が利くのだが、氷のように冷たい目をしていて生徒からは怖がられている。勿論、俺も怖い。一部の生徒は彼女のことを「結華様ぁ」とかあほみたいに言っているらしいが俺には到底理解できない。

「当たり前だろう、なぜ俺に彼女ができないか、だ。」

「カイチョーは馬鹿だからじゃない?」

「な、ば、馬鹿だと…?」

 俺に「馬鹿」という言葉を浴びせてきたのは会計の近藤流星だ。彼の家は代々続く近藤財閥で、流星はその御曹司だとか。その割にはすごくチャラいのでこいつも俺は苦手だ。しかもよくわからない若者言葉?をたまに使ってくる。でも、生徒からはすごく人気がある。羨ましくはないが。

「頭はいいんだろうけどなんか世間知らずっていうかさぁ。ね、わかるっしょみーちゃん」

「へ!?わ、私ですか?えぇ…、ま、まあたまに世間知らずだなとは思いますけど…!で、でもそこもいいと思いますよ!」

 先程のチャラ男から「みーちゃん」と呼ばれたのは安達美里だ。彼女は顔は可愛い(しかも巨乳)と思うが少しオタク気質で初恋は前田利家だという。歴史に関してはこの俺でも彼女に勝てたことがない。場を和ませてくれるから俺は好きだ。巨乳は暑苦しくて好きではないが。


「俺は休憩してくる。もうすぐ最終下校時刻の19時だしお前らも帰っていいぞ。ゆっくり休め」

 そう言って俺は生徒会長席を立った。生徒会長になって初めての入学式を迎えたが疲れすぎた。一応名門校のはずなのに初日からスカート短いわ、髪染めてるわ、ピアス開けていたのバレバレだわ、後普通にうるさいわでほんっとうに疲れが溜まった。しかし、生徒会長たるもの疲れを人に見せてはいけないので、それとなく離れた場所で休憩するよう心掛けている。

 いつもの定位置である旧校舎の一階階段に腰を掛けると一気にため息が出てきた。

「あー、くっそ。今年の一年は問題児ばかりだな。ったく、俺にすべて仕事押し付けやがって。なにが『生徒会長様ぁ♡』だよ、触るんじゃねえあのぶす。気色わりー」

 段々溜まっていたものが込み上げてきて、舌打ちも自然と出てきた。こんなこと「優しい生徒会長様」の俺がしているなどバレてはいけないのだが。


 何分かし落ち着いてから近くにある自販機で缶コーヒーを買い、開けようとしたとき物音がした。

「誰だ?」

 音のした方へ近づくとどこかで見かけた顔だ。生徒の顔と名前は一致するようにしている。記憶するまでに膨大な時間を掛けたなんて格好悪くて口が裂けても誰にも言えないが。

「お前は橘颯太か?」

 俺が言うと橘は嬉しそうに笑った。よくよく見ると顔が整っている。俺には手に入れたくてもできないものをもっている。こいつは野放しにしてはいけない。

「すっげえ!俺のことわかるの?」

「まぁな。こんなところで何をしていた?」

 そう問いかけたときハッと気が付く。

「待て、お前まさかさっきの聞いていたのか?」

「あ、ま、まぁ?」

 彼の言葉を聞き、すっと血の気が引いた。まずい、「優しい生徒会長」という俺の立場が…!

「こ、このことは他言無用でお願いしたい」

 俺が橘のことを見つめながら頼み込むといきなり橘に押し倒された。いわゆる壁ドンというやつだろうか。抵抗するも力が強い。不覚だ。筋トレさぼってたからだろうか。少女漫画の壁ドンとやらを男からされるとは思ってもみなかった。

「えー、どうしよっかな。会長さぁ、……ってなんでそんな泣きそうな顔してんだよ。会長の連絡先交換してくれたら何も言わないよ」

 焦ったように慌てて橘が喋る。目から汗が流れてしまったようだ。最近温暖化進んでるしな。四月に汗が出るということもあり得るだろう。俺はなるべく余裕に見えるように手の甲で汗を拭った。

「あぁすまん汗だ。連絡先交換…?すまん、俺ガラケーなのだが」

 スマートフォンのLINEとかいうアプリを開いて見せてきた橘に断りを入れる。一周回って格好いいと思いガラケーを選んだのだが生徒会役員たちからはだせぇだせぇと言われている。というかそもそも誰とも繋がってないしな。

「えっちょ、会長ガラケーなの!?」

 俺が頷くと橘はしばらく笑い続けていた。こんなに笑われるとは。小学校の頃電柱に正面衝突して笑われた時と同じぐらいの恥ずかしさを感じる。

「ま、まぁガラケー使いやすいしな。それに俺しか使っていないのが格好良い」

 俺が言うと再び橘が笑った。見透かされているようだ。この男も苦手リスト通称脳内デ〇ノートに認定しておこう。(ちなみにホワイトリストは誰一人いない)


 橘から結局電話番号とメールアドレスだけ貰い、家に帰る。


 「学校お疲れ様。会長になって視点は変わるのかな?お母さん今日も遅くなりそうです。明日は休みだから今日頑張ってきまーす!」


 家のテーブルにはいつも通り母からのメッセージがあった。母は毎日忙しそうにどこかへ仕事に出かけている。俺が将来養うからいいのにと言っても働き続ける母は俺もよく理解できていない。

 虐待事件以降母は「女」を捨て、頑張ってくれているのだが、別に新しい彼氏とやらを連れてきてくれてもいいと思う。童貞を自分の意志で貫いている男の鏡である俺が審査してやる。とかそんなことを言っていたら「あんたはそもそも彼女作ったことないじゃない。お母さんのこと思ってくれてるのは嬉しいけどニートにはならないでよね」と一蹴されてしまった。

 流石にニートの心配はしてないが彼女の心配は常日頃からしている。そもそも彼女ってどうやって作るんだろう。「彼女 作り方 完璧な男」で検索を入れようとしたところ、一件メッセージが入っていた。八乙女からだろうか。ツンデレだからな、ツンデレにはデレデレで返すといいって本に書いてあったし(ア〇ゾン評価1なのを俺はこの時知らなかった)…。 開いてみると。


『これ会長のであってる?俺、橘颯太!いきなり壁ドンしちゃってごめん!お詫びとして今度カフェにでも行かない?』


 文末には謎の顔文字がある。中年男性が使いそうなこの絵文字を高1男子が使うとは…。それになんだこの如何にも阿呆そうな文章は。とか不満がいくつもあがるがメールは返しておく。メールを送るなんて久しぶりだから何度も打ち直す。なんか片想い中の女みたいであとから思い返すと吐きそう。どうせなら女とこういうやり取りをしたい。

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