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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
80/84

入れ替わり

こんばんは。

最近更新頻度が上がっています。

この章もクライマックスを迎えそうです。


お付き合いいただいている方、ありがとうございます。

        ※


「出てきていい。むしろリンフィーナの意識を完全に奪ってくれ」

 (許可)があり、呼び出された魔女ソフィアは、彼の妹リンフィーナの身体を瞬間的に乗っ取っていた。


「そう。そうしてこの場から目立たぬように隠れていてくれ。これからお前が望んだことを実行する」


 久しぶりの身体の自由と、外出許可を得たものの、なんとはなく経緯いきさつを知っていたソフィアは、またしてもサナレスに良いように使われたことに吐息をつき、両手を上に上げて伸びをする。


 自分に詳しい思いを話さないまま、サナレスは恋敵が処刑されることを阻止するため、脇目も降らず突進していく。


 その後ろ姿に思わず声をかけてしまう。

「力を貸そうか?」

「そうだな。お前の魔物の力、存分に発揮してくれるとありがたい」


「自暴自棄か?」

「そんな若者のようなこと、私がするか!」

 サナレスのコメカミに筋がよって見える。


「若者のようなこと、ね」

 それはラーディオヌ一族の若き総帥ただ一人を指しているようだ。

 ラーディオヌ一族のアセスに対し、サナレスは相当怒っているらしかった。


 千年生きた私からすればお前も十分若者なのだが……。

 

 ソフィアはため息をつく。

 例えリンフィーナの体を盾にとってサナレスを脅しても、サナレスとてラーディアやラーディオヌの貴族を襲撃することに躊躇っていた。


 けれどこの度、ラーディオヌ一族がアセスを処刑台に送ったことで、サナレスはラーディオヌ一族を落とすと決心できたというわけか。


 そうと決めた彼は芝居が達者すぎて、民衆の前で語る一言一句、あたかも真実のように悪役を演じている。

 堂に行った縁起ができるのは、アセスに対する怒りだろうか。


 少しの真実と、ほとんどが嘘の配偶具合は見事なもので、民衆はサナレスの悪役ぶりに、ラーディオヌ一族の総帥であるアセスを処刑台に送ってしまったことを、なんと後悔し始めているではないか。

 最近退屈を持て余していたソフィアは、口笛を吹く。


「うわぁぁ!」

 サナレスが用意した火薬による爆発を、呪術によるものと勘違いした貴族達は、焼かれた馬車から逃げ出して、地面に這いつくばる勢いだ。


「我が王!」

 呪術の最高位であるアセスに泣き言をいう民がいる。

 呪術師会の老人達は牽制魔法を使い、サナレスに攻撃を仕掛けるが、全く太刀打ちならないことを知ると腰を抜かしてしまう。


 まだ民衆の方が逞しかった。


「水で消すんだ。貴族街からの火の手をなんとか食い止めよう」

 サナレスが手加減した駐屯兵の何名かが、タロの街全土が焼かれないように民を先導している姿は立派なものだ。


「めんどくさい。処刑台送りになった総帥と共に、ラーディオヌの貴族、呪術師全員を焼き払うか」

 そこまでの火薬をサナレスが用意していたとは思わなかったが、サナレスはウソぶいている。


「あいつ……。存分に私の力を奮ってくれと言ったのは、焼き払った炎が民家にまで及ばないようにするためか……?」

 そうまでしてサナレスは、貴族以外の民の命は守ろうとしている。

 アセスを大罪人としたラーディオヌ一族の民の敵意を、サナレス自身に集めていた。


 それって全部ーー、妹リンフィーナのためなのか?


 ソフィアは仕方なく、右手を天に持ち上げた。

「水神、我が眷属。おまえがいなくなり、私はずっと一人だ」

 水の魔物である龍はソフィアに強大な水の力だけを与え、母であり父であり、サナレスのような存在であったソフィアの育て親は、銀の森で焼き払われたと聞く。


 ソフィアの周りには水の魔物の膜が張って、近くにいた民衆はその姿を目にして囁き合った。

「銀の魔女!?」

「更なる災厄が……」

 けれどソフィアはこの時点でサナレスの筋書きを見切っていた。


ーーひとり悪者になって、ラーディオヌ一族の総帥と妹を庇うつもりらしい。

「のってやろう」


 ソフィアは曇天の上の水を操り、火災になっている民家部分にバケツでもひっくり返したような雨を降らせた。

「だが貴族街は慈悲の限りではない」

 それもサナレスが覚悟していたことは、彼が爆破して破壊した大部分が、タロの貴族街だったことで見てとれた。


「おいでリンフィーナ」

 サナレスに呼ばれた。


 ソフィアの中で泣き続けているリンフィーナは、彼の呼びかけで広場中央に足を向ける。


「なんだ?」

 ソフィアも耳を傾けた。


 半分は水のオーラに包まれたソフィアであり、半分は今覚醒したリンフィーナの意識だったが、サナレスに呼ばれて二人は同時に歩いていた。


「サナレス」

 兄様。


 誘う優しい声の吸引力に引き寄せられ、二人でサナレスのところに駆け寄った。

 けれどサナレスは「すまない」と姿をくらました。


 そこにサナレスがいない!


 一瞬のことで、何が起こったのかわからなかった。


 ソフィアとリンフィーナ二人の意識がたどり着いた先は、血を流して倒れているアセスが居る場所だった。

 途端リンフィーナがアセスの姿を見て、ソフィアの支配を上回っていく。


「アセス、アセス!!」

 蒼白なラーディオヌ一族の総帥を膝下に抱きしめて、リンフィーナは泣いていた。

「アセス、死なないで。ねぇアセス……。もう私の前で二度と死なないで……」


 完全にソフィアは弾き飛ばされる。


 サナレスは消えた。

 どこに行ったのか気配を追いたくとも、リンフィーナがそれを許さなかった。


「アセス、お願い。ただ生きていてーー!」

 リンフィーナはアセスを抱きしめたまま、泣き崩れる。

 その様子を見ていたのはソフィアだけではなく、その場にいた民衆全員で、気がつくとリンフィーナの涙に、周囲のモノ全てがもらい泣きしていた。


 サナレスにやられた。

 ソフィアはリンフィーナの意識に支配され、彼にしてやられたことに地団駄踏んだ。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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