才能と言われれば
こんばんは。
久々に更新しています。
クライマックスに少しづつ近づいていますが、シリーズ的にはまだ続きます。
お付き合いよろしくお願いします。
シリーズ紹介、後書きに載せています。
※
「どうするんだ?」
八方塞がった気分になったサナレスに声をかけたのは、リンフィーナの声帯を使って、それなのに彼女の表情をガラリと変えて出現した魔女だった。
表情と口調で、人というのはまるで別人だ。
腕を組み、リンフィーナの側を離れられないサナレスの耳に、息がかかるぐらいの距離でソフィアは質問してきた。
黙っているとソフィアは見るからに呆れた様子を表した。
「まあ、どうするのか決まっているなら、お前がこんなにも難しい表情をするわけもないか……」
そういって彼女は軽やかに部屋の中を歩き回り、リンフィーナの自室に使っている戸棚の中から、グラスとワイン瓶を取り出してきた。
「おいっ! なんだ、それは!?」
「ん? おまえも飲むか?」
ソファに胡座を組んで腰を下ろしたソフィアは、ワイン瓶とグラスを交互に見て、グラスの方を、悪びれもせず差し出してきた。
「だからそれは、いったい……」
「見ての通りワインだ。それほど上物でもないようだが、甘めなので、まあ飲める」
グラスにとくとくと赤ワインを注ぎ、サナレスに勧めようとするソフィアを見るサナレスの目つきは最初驚いて丸くなり、今はやぶ睨むように細められている。
「そうじゃなくて……」
「お前は甘いのはイマイチだったな」
酒の好みの問題じゃない……。
サナレスの反応を何を勘違いしてか話をすすめていくソフィアを制止するため、サナレスは、ワイン瓶を握り今にも瓶そのものを口にくわえて飲もうとする彼女の手首を、しっかりと掴んだ。
「そうじゃなくて、どうしてリンフィーナの部屋に酒瓶がある? お前、彼女に隠れ、飲んでいるのか!?」
厳しい口調で問い正すと、ソフィアはふてくされ顔で睨んできた。
気の強い性格が、リンフィーナのあどけない容姿を急に大人びて見せ、サナレスはグッと息を呑む。
「決めつけるのはやめてくれ。気分が悪い。この酒は、私のじゃなくお前の妹の! 姫さんのだ。割と毎晩飲んでいたぞ、お前が帰ってくるまでは」
「ーー冗談だろ?」
確かにリンフィーナだって酒を呑むことはある。
けれどそれは食事の時に嗜む程度で、こんなふうに寝室に酒を置いて、常用的に呑むだろうか?
「お前のことだ、私が勝手に、リンフィーナの体に害なすことをしているなどと妄想したんだろうが、生憎だったな。彼女の酒だ」
「どの程度飲んでたんだ?」
「さあ。私と姫さんの体が交互に入れ替わって、それで対話したこともあるぐらいだから、結構酩酊状態になるまで飲んでたと思うけれど。強くはなさそうだ」
サナレスは額に手をやった。
「油断も隙もないな……」
リンフィーナは精神的に強そうでいて、やはり弱い。
「酒なんて百害あって一理なしだ」
「そういうお前は割と飲むのに、おかしなことを言う」
「寿命を縮めてみたいと思っていたからな」
「永遠の寿命の血筋である王族が何を言う? ジウスなど先日気配を感じたがピンピンしていた」
サナレスはジウスと彼女に接点があった事を聞かされ、僅かに片眉をあげた。
「王族、貴族でも寿命はある。貴族がなぜ老いていくと思う? 神子にとって老いは病気なんだよ。病気の種を植え付けてくれるのは、必ず人に快楽を与えるものだ。酒、薬、異性、砂糖もそうか」
「病気になる? 聞いたこともない」
「人はそうして老いさらばえて死んでいく。神子は耐性ーーというか解毒作用が強い体質なだけで、同じように病気にかかる。だから貴族の容姿は、年齢ではなく個体差で様々に老けていく」
そう言ってサナレスはソフィアの手からワイン瓶を奪った。
「これはリンフィーナが常習的に飲んでイイものじゃないんだよ」
ソフィアは面白くなさそうに唇を尖らせた。
「過保護」
そして痛烈に揶揄ってくる。
「彼女はラーディオヌの総帥が好きみたいだが、お前の過保護でどれだけ彼女の心を守れるものだか……」
口の端に皮肉な笑いを浮かべ、ソフィアはサナレスに視線を合わせた。
「それに、ずっと彼女は死にたがっている」
ずっとだ。
言われた言葉は想像以上に打撃を与えてきた。
なんとかして生きていて欲しい。
そうしてこの世に彼女を繋ぎ止めたくても、アセスの分身が死んでしまってから、彼女は冥府に片足突っ込んでしまったままなのだ。
「だからちょっとしたことで、すぐ……」
「もういい! ーー言わなくてもわかっている」
サナレスはうめくように低い声で言った。
そして確認すべきことをソフィアに問う。
「魔道士ってのはいったいなんなんだ? 処刑されなければならないくらい、凶悪なのか? 私はおまえと、シヴァールというたちの悪い輩しか知らない。アセスはいったいどうなったんだ?」
「私を質が悪いって?」
少しソフィアは不愉快そうに顔を歪めた。
寂しそうに見えたのは気のせいだろうか。
「基本的なことだ。精霊と契約するのが普通の術士、魔物と契約するのが魔道士、どちらも力を借りて術力を行使している点において大差ない」
「だったらどうしておまえは魔女として葬られ、アセスは処刑されようとしている?」
答えは簡単だとソフィアは笑った。
「規格外だからだよ。天道士と魔道士は紙一重。ひとつ逸脱すると、魔道に落ちる。けれど魔物を使役できると言うことは、一種の才能だと私は思っている」
彼女は続けた。
「魔物から愛されるんだ。これは天賦の才能だろう?」
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




