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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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フラッシュバック

こんばんは。

長編ですがおつきあい頂いている稀有な方、感謝いたします。

順番は後書きに書いています。

        ※


 狼狽えている間もないくらい呆気なく、アセスの処刑の日が決定した。


 ラーディオヌ一族の民は、次の王を決定するより先に、異例の速さでアセスを投獄したと報じられた。


 それだけ呪術で繁栄したラーディオヌ一族にあって、天道士が魔道と契約した事態は、大罪だという慣習がある。


 アセスに残された期日はたった10日間だった。

 この間に次の王を、王族の血筋から決定し、新王の膝下でアセスが処刑される話が正式に下された。


「助けに行かないと……」

 またアセスは、暗い地下牢に投獄されているに違いない。


 サナレスはアセスが自ら望んだと予想したが、リンフィーナには理解できなかった。

 アセスが死ぬかもしれない。

 何度そんな想像をして息の詰まる思いを味わったことか。


「私、行かないと……!」

 繰り返すリンフィーナの言葉を横で聞きながら、サナレスは腕を組んで考え込んでいる。


 サナレスが動けないのは、おそらく今ラーディア一族が動けばラーディオヌ一族との全面戦争に突入するからだ。


 行かないと、と心が流行るけれど、リンフィーナ自身どうしていいのかわからなかった。


 ぎゅっと唇を引き結んだまま、硬直してしまう。


 その瞬間、アセスのラバースが、自分を庇って目の前で命を落とした光景が、走馬灯のように蘇って、リンフィーナは洗面所に駆け込んだ。


 あれは過ぎたことだ。

 それなのに。


 めまいがして、気分が悪い。

 天井がまわり、吐き気が込み上げる。


 なんの力もない自分なんて、生きていたくない。

 いっそ死んでしまえばいい。


 過去にそうやって自分の殻に閉じこもり、生きることを拒否したことが蘇ってくる。

 アセスの死で自分は一緒に死のうとした。


 そういえばあの時、どうやって自分は生かされたのだろうかーー?


 あの時死んでいれば、アセスが死ぬかもしれないなんていう恐怖を、もう一度味わうことなんてなかったのに。


 何度心臓が潰れるような思いを味わうんだろうか。


「リンフィーナ!」

 自分の身体を支えた状態でサナレスに介抱されるが、意識があるうちはずっとのたうち回る苦しみが続いていた。


 見兼ねたサナレスが、薬を飲まそうと様々な薬を用意したが、リンフィーナはそれを拒否していた。

「助けに行かないと……」

 冷や汗と震えが止まらない。


 アセスが死んでしまう姿が脳裏に蘇って、ちゃんと息が吸えなくなる。


「こっちを見てリンフィーナ!」

 サナレスが自分の頬を両手で挟んで、正気に戻すように話しかけてくる。


 でもね、兄様。

 私はーー。

「アセスを裏切ったけど……」

 サナレスに救われる形で、いっときでもアセスの存在に目隠しして生きてきたけれど。


 人は一瞬で死んでしまう。

 魂が抜けた人は、とても脆い(もろい)。


 養育係のラディを失って、アセスのラバースの死を目の前にした自分は、

 あの時、どうやって、自分だけ生還してきたんだろう?


「リンフィーナ!」

 ガクガクと震え始めたリンフィーナを抱き止めているサナレスは、彼女の腕に注射器を刺した。


 薬が切れて目が覚めると、ずっとそんな調子のリンフィーナを見つめながら、サナレスは彼女を抱き上げ、寝台へと運んだ。


 サナレスは俯いて、ぎゅっと唇を噛み締めた。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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