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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
71/84

確認事項を終えて

こんばんは。

不定期ですが、高頻度で書いています。


書くのが楽しいので書いているので、誤字脱字、展開のスピード、今あまり考えていません。

そのうちザクっと手直しすると思いますが、こんなものでよければ感想、反応励みになりますので、よろしくお願いします。

        ※


 サナレスが突然自分の元を訪問し、言いたいことだけを言って帰って行った後、アセスは彼との会話をじっくりと反芻し、確信していた。


 驚くべきことに、サナレスは手を打っていなかった。


 つまりサナレスはリンフィーナの中にとてつもない力が宿り、そのことでラーディアとラーディオヌ一族が敵対したことも知らない。ただリンフィーナが危険だということは察知しており、動いているに過ぎないようだ。


 全てわかっている。

 サナレスがそう言ったのは、リンフィーナの中に強大な何かがあって混乱を招いているということぐらいだろう。

 それはリンフィーナの身に起こっている範疇に過ぎない。


 銀の森で彼女が異常な力を放出し、魔道士の嫌疑ーー、つまりこれまでアセスにかかっていた嫌疑まで、まさか彼女に責任が押し付けられようとしているとは考えてもいない様子だ。


 水月の宮で起こった事態を耳にしてはいるだろうが、それによってもたらされた波紋を想像していない。

 想像できてきないのだ。


 あのサナレスが、おかしい。

 話している最中も、サナレスは別のことに意識が向いている様子であり、彼の身に何が起こっているのだろうかとアセスは吐息をつく。


 だから自分が取るべき行動について、自覚せざるを得ない。


 このままでは我が氏族ラーディオヌ一族は、皇女リンフィーナを魔女である張本人として弾劾し、それを護る次代のラーディアの総帥と一線交えることになる。アセスとしては阻止したい未来だ。


 ラーディオヌ一族に登録のある天道士級の魔道士が誕生したことが、ずっと呪術師会で問題視されている。それはアセスのことで、自分の代わりにリンフィーナが疑われ始めた。

 アセスとして手をこまねいていられない。


「クリスタルドールーと異名を持つ貴方が、ずいぶん人間らしい表情をなさるようになったのでは?」

 いつの間にか執務室に姿を現したヨースケは、アセスを驚かせた。


 アセスは深いため息をつく。

「考え事をしているのです。邪魔しないでいただきたいのですが」


「相変わらず、つれない」

 ヨースケは肩をすくめてトレー上に乗せてきた食事を、アセスの前に突き出した。

「はい食べて」

「結構です」


「やっぱまだ、この執務室が一番陰気臭いんだよなぁ。ラーディオヌ邸の照明についてサナレスが配置する場所をなおせと言ってきたから、言うとおり直したけどさ、ここが一番やばいって」

 やばいーー、ねぇ……。


 仮死という形で冥府を超えてしまい、少なくとも異世界で16年間近く生活した自分には、ヨースケが発した言葉を理解した。

 今まで不思議に感じていた数々の言葉の意味が理解できる。


 言葉って、黄泉で交わるのか?

 サナレスが発する外来語が生まれた由来も、まさか黄泉なのだろうか?

 アセスはぼんやりと考えていた。


「冷めないうちに食べない?」

「結構です、と言いましたよね?」

「おまえ、おかしいぞ……」

「あっちから帰ってきてから、と言いたいのですよね?」


 確かに見た。今となっては夢を見ただけかと思うけれど、冥府ーーそこを仲介した先の、時空が違う世界をアセスは確かに見たのだ。

 単に見たのではない。人の世の16年という時間、他人の人生を生きたのだ。


「私は色々なことを考えましたよ。ヨースケ、貴方も時空軸を超えた人だということですよね?」


 いつも横柄なヨースケが少し驚嘆し、次の瞬間彼はニヤリと笑った。

 それは肯定を意味し、ヨースケは肩をすくめ「ご名答!」とだけ言った。


 九分九厘予期していたので平常心だったが、アセスには一つだけ確認したいことがあった。


「サナレスは、どうなのです?」

「ラーディアの期待のサナレス殿下? ふぅん、やっぱりそれが気になるんだ」


 ヨースケは大きく首を傾げて長い手足の力を抜き、勢いよくソファに腰を下ろす。いつの間にか運び込まれた趣味がいいとはいえない華美なソファは柔らかそうで、彼の肢体を深々と包み込んだ。


 一瞬、彼の長い手足が宙に浮くのを見逃さず、一時たりと他社の前で姿勢を崩させるなんて、王族にあってはなるまい、とアセスは絶対にアレには座りたくないと再認識する。


「サナレス殿下は、超えてないよ。かなり境界線に居るけどなぁ、超えてなくてあの知力ってのが、怖い、怖い……」

「冥府を知っている?」

「ジウスとヨアズの神話とかいう過去の文献から、推測はしているだろうねぇ。私やモリが彼と出会っているし、最近彼が大陸を超えて行った場所にも引っ掛かりを覚えるよ。ーー知ってるかもねぇ……、サナレスなら」


 アセスはたいていが想定していたことだったので、複雑な表情で顔を歪めた。


「わかりました」

 そういって執務室を出て行こうとするアセスに、ヨースケは口笛を吹く。


「総帥様の恋敵、無敵だから大変だよなぁ」

 ヨースケは心底楽しそうだった。


 けれどアセスは、もうどうでもよかった。

 色々なことを確認した今は、取るべき行動は決まっている。


「あんたの入れた珈琲は美味しかったですよ」

 一族の総帥としてではなく、アセスはふっと表情を和らげてヨースケに声をかけ、行くべきところに歩みを向けた。

 

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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