確認しに寄ってみた
こんばんは。
今、勉強も仕事も60から70%で実行可能なので、書きますよ。
楽しみで毎日、書いてしまうかも。
反応と応援は栄養、よろしくお願いします。
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ラーディオヌ一族白磁の塔と隣接する、ラーディオヌ一族総帥の王宮は、地上には狭く地下に広い。
だから地下通路を熟知してしまえば、王宮の外である一般庶民が出入りできる市場から、貴族街を飛び越えて向かうことができるのだった。
自然にできた地下鍾乳洞は広大で、呪術者の試験会場としても指定されることがあり、サナレスはリンフィーナの試験に付き合っている手持ち無沙汰な時間で、この鍾乳洞の通路を頭の中で地図化していた。
「どうしていた? アセス」
自分としては水月の宮に帰る途中に、ふらっと立ち寄ったつもりだったのだか、自分の声を聞いたアセスは、彼の執務室内で硬直している。
「あれ? そんな感じ? 懐かしく感じるな」
軽く笑うと、アセスはこちら側につかつかと歩いてきて、自分の前を通り過ぎ、執務室の扉を閉め施錠した。
挨拶もない恋敵に、サナレスは肩をすくめて彼を見るが、アセスは扉の方を向いたまま、項垂れている。
「それほど驚かなくたって、昔よくこうやって密会しただろ?」
アセスは無言のまま、少し肩を震わせていた。そしてこちらを振り向いた時には、常の彼らしく冷静さを取り戻し、
「そういうことではないでしょう?」と艶やかな黒曜石をはめた三白眼でこちらを睨んだ。
「随分様変わりしたなぁ、ラーディオヌ邸は。おまえの陰気さは変わらないが、館全体が薄暗くなくなった」
「ーー」
冗談を言ったのに相変わらずアセスには通じていないようで、彼の口の端はピクリと引き攣る。
「そういうことを言っている場合ではないと思うのです」
「そう?」
「あなた忘れたんですか? 仮死状態の私をラーディア一族に連れて行ったから、ラーディオヌ一族に対して敵対したと思われているんですよ」
そうは言ってもなぁ。
「あの時はそうするのが正しかった。けれどその後、事情は話し、おまえは理解しただろう?」
「ーーええ。私はね……」
執務室のソファに腰を下ろすように促しながら、アセスは困ったように額に手を置いて俯いたままだ。
「私は理解したつもりです。急にあなたがリンフィーナを得る勝負を仕掛けてきて、先手を取られていることも、それにーー、ラーディア一族とラーディオヌ一族をずっと兄弟氏族だと思っているということは、承知しましたよ」
けれど、とアセスは渋い顔をした。
美しい彫刻のような男にも、随分人間味が出てきたようだ。
サナレスはほくそ笑んだが、アセスはさらに目力を強める。
「ですがね!」
彼らしくもなく、言葉尻も強い。
「ですがサナレス! ラーディオヌの皇族、貴族、民達は、今あなた方ラーディア一族をよく思っていない。あなたが私をラーディア一族に無理やり連行したことになってしまっているし、ラーディア一族はラーディオヌ一族を支配しようとしているというような誤解が生まれているんですよ」
アセスが口調のペースを見出していた。見た目は動揺して見えないが、相当感情が泡立っているらしい。
「それに、水月の宮で起こった騒動、ご存知ですよね?」
「あ、私がおまえを拉致した腹いせに、おまえがラーディオヌの兵で夜襲させたってあれ?」
「ーーやはり、ご存知なんじゃないですか……」
でも私じゃないですよ、と冷めた口調でアセスが言うので、サナレスは吹き出した。
けれどこれ以上とぼけた態度をとっているとアセスが憤慨しそうなので、サナレスは紳士になることにした
「わかっている、全て」
アセスは吐息をついた。
「ことの発端はあなたですが、利用したのはヨースケ・ワギ。あなたの古くからの知り合いだと聞いていますが?」
「事実だ。大口の取引先だし、私は彼に大きな借りがある。あ、さっき廊下ですれ違った。照明の位置について質疑応答をし合ったし、相変わらずだな」
ばん!!
なぜかアセスは応接の机の上に両手を叩きつけ、下を向いたまま震えている。
「あ、ダメだった?」
「そうじゃありません!!」
ヨースケと交流するのは不機嫌なんだなと思って確認したが、アセスは即答した。
「国同士をややこしくしてしまっているのは彼なんですよ。サナレス、そんなふうに気軽に会話したことを聞けば、私はーー、あなたのことを……!」
「私がーー仕組んだと疑うか? おまえが?」
アセスは首を振った。
「私たちは1人の女性を奪い合う関係です」
「そうだな」
「ヨースケは今やラーディオヌ一族の宰相の地位にいる」
「そうだな」
サナレスは凝り固まったアセスの肩にぽんと手を置いた。
「わかっている、全て。そう言っただろ? おまえは気を揉むな」
アセスは弾かれたように立ち上がり、自分の肩にも両手を置いてきた。
「あなたはっ! いつもそうやって飄々としていらっしゃいますが……、リンフィーナの身に起こっていることは何かおかしい。彼女の周りに冥府の匂いがして、私はーー」
感情を荒げたことを反省するように吐息をついたアセスは、自分を見た。
「どうすれば、私は彼女を救えるのですか?」
スッとサナレスは顎を上げた。
アセスの首に左腕を回して引き寄せる。アセスが体勢を崩すのも構わず、サナレスはアセスを自分の身体に引き寄せた。
「私はその言葉だけ、聞きに来た」
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




