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脱冥府しても、また冥府  作者: 一桃
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食撃のオートミール

こんばんは。

コロナ増えましたね。

私の趣味はインドア系とアウトドア系、二極化しているので安全すが、出張はいつも危ないなぁと思います。

今日のランチも混んでいた!!


応援よろしくお願いします。もし罹患したら、当分書き放題だな。

いや、書く元気があればいいなぁ。

        ※


 水月の宮に生き残った民は少なく、館の従業員を入れても100名程度だった。

「これほどの人数の民であれば、わたしは難なく腹一杯にしてみせる」

 断言したギロダイは水月の宮の来賓の大広間に、焼いた肉を積み上げた。


香ばしい肉の匂いが食欲をそそり、このところ空腹だったことをリンフィーナはあらためて思い知らされた。

 湯気を上げ、運び込まれる肉の匂いに、例に漏れず民達は、失った目に光を取り戻している。


「こちらが、近衛兵副隊長ギロダイ様が持ち帰った、今回の戦利品でございます」

 審判をする館の従業員ですら、生唾を飲んでいるのを見て、リンフィーナは負け確定を宣言された気分になった。


 ううっ。隠したい。

 今すぐ負けたと宣言して、自分が用意したものを隠蔽したい!


 そんな気分に苛まれたが、オートミールの素晴らしさをナンス伝いにサナレスの言葉として聞いており、強くナンスが貧しい民が主食にしてきたものなのだからと後押しされれば、どんな食材でも引き下がるわけにはいかなかった。


 ギロダイ様が用意したものがこれほど立派ならば、皇女が用意されたものはいったい……?

 どれほど立派なのか?


 期待する民の視線を一心に浴びながら、リンフィーナは頬をこわばらせながら微笑んだ。

 王族らしく毅然と振る舞う。


「私が用意したのはこちらの品です!」

 胸を張って、勝負するテーブルの上に、リンフィーナは三角の食べ物を積み上げた。


 民は一瞬しん、と静まり返った。

「え? これって、まさかーー」

「でも……、なんかこれ米でもないよな? 茶色いし……」

 三角に握られたおにぎりもどきを、民は悲しい表情で見つめていた。


 地味。

 その感想一択だ。


 お腹いっぱいの白い米の飯というのであれば、まだ民だってもう少し違う反応をしたと思う。でも米は用意できなかった。米は底をついて貴重になり、なかなか入手できなかったからだ。


「茶色い……、これって……?」

 遠巻きに見た民は、自分になんとも申し訳なさそうに顔を背け、ギロダイの用意したテーブルにそろっと足を向ける。その1人が引き金となって、民は焼きたての肉に群がっていった。


 リンフィーナの傍らでタキが首をすくめる。

「ですわよねぇ。ナンス、ちょっとあっちの肉、たんまり皿にとってきてくれないかしら?」

「あなた、そういうこと言っていいんですか!?」

 タキをリンフィーナの単なる女官だと思っているナンスは、白目をむいて抗議しているが、タキは「いいから」とナンスを肉確保に向かわせようとしている。


 項垂れたリンフィーナは、ぼそっと言った。

「いいのよ。何日か振りの肉だもの、私も食べたいし……」


 リンフィーナの配下であるはずの臣下達が、ギロダイの用意した肉に群がり始めると、瞬く間にギロダイが用意した肉が食べられ、測っていた重量が増えていく。

「いいんですかリンフィーナ! このままじゃあなた、ギロダイに娶られることになりません??」

 慌てたナンスが、向こうから皿に肉を持ち帰り、困惑している。


「まぁ、いいじゃない。とりあえず食べましょうよ」

 リンフィーナは乾いた顔で笑った。民が久しぶりに美味しいものを食べられると喜んでいるのだ。水をさすつもりは一切なかった。


「私たちも食べよう。新鮮だし、今私たちは彼が用意してくれた肉で、多分とてもお腹を満たせる」

「はぁ?? そんなことしたらリンフィーナ、あんた負けるでしょ? それでいいの? 諦めてるの?」

 ナンスは怪訝がってうるさかった。タキも運ばれた肉を口に頬張りながら、「美味しいですわ、ごめんなさい」と口の端を布で拭いながら言っている。


 ナンスはタキを責めようとしたが、リンフィーナはそれを静止して、自らもギロダイが獲ってきた命の糧を味わった。じわっと肉汁が口の中に広がるし、臭みを完全に抜いた焼き加減はぜつ妙だ。

「美味しいよ」

 美味しいときはほっぺたが落ちそうって言うんだったかな。リンフィーナは兄と過ごした幼少期を思い出していた。頬の中が肉で満たされ、リンフィーナはそを噛みしめて言う。


「ギロダイ、貴方に礼を言うね。このような豊かな食事をここにいる民に与えることができるのは、この水月の宮において、今貴方以外には居ないでしょう」

 褒め称えると、ギロダイは膝を折って頭を下げた。


「これは皇女リンフィーナ、私を伴侶の候補に入れていただいたと認識してもよろしいか?」

「いえ」

 リンフィーナは肉を頬張りながら嫣然と微笑んだ。


「私は申し上げましたよね、勝負はどちらの食料を、民がより多くたいらげたかだと。グラム数を競うと」

「ーーはぁ」

「私は勝負開始から何時間のうちにとは言わなかった。これから数時間、いえ数日間のうちに、民が食べたグラム数を競うことになりますので、私はまだ負けたわけではございません」


 なんとーー!?

 民の全てが驚き、リンフィーナとギロダイ双方を交互に見ているような状態だった。


「私が用意した食材は主食、そしておそらく数日は腐りません」

 だって戦時中にサナレスが日持ちする食料として食べていた栄養価の高い食べ物なのだから、とリンフィーナは強気になった。


 肉に貪りついていた民は、すぐに腹を満たす。

 けれどその次には消化吸収にエネルギーを使うものに見向きもしなかった。元々ここにいる民は、食糧難と疲労で五臓六腑が疲れていた。そんな彼らが、油っぽく消化吸収に時間がかかる肉を食しては、次には違うものを欲するのが普通だ。


「あの……、その茶色い三角のおむすび、頂いてもよろしいでしょうか?」

 1人の民が恐るおそる声を上げた。

「もちろん!」

 リンフィーナは微笑んで、オートミールおにぎりを民に差し出した。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

シリーズの9作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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