無理ゲーのはじまり
不定期ですが更新しております。
お付き合い、よろしくお願いします。
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昨日またロードバイクで落車したので、本日引きこもり更新をしています。
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ラーディア一族の近衛兵副隊長は強者だった。
戻った時は水月の宮の正面で、生き残った民に狩ってきた食糧の量を狩に出た獣さながら盛大に見せつけたというのに、約束した勝負の時間には、聖騎士の衣装を纏い、こざっぱりと身なりを整えてリンフィーナの前に立っている。
元人の子の王だけあって、政治がうまい!
関心している場合ではなかった。
こんな人に敵うのかな、とリンフィーナは吐息をついた。
せめてサナレスの伴侶ーーいや未だ正式に公開していないので妹姫として、毅然としていなければならないと背筋を正す。
「さて皇女リンフィーナは、この宮から狩りに出られたとも聞き及んでおりませんが、私とされた勝負、まさかお忘れではないですよね?」
「もちろん!」
自分から挑んだ自らへの無理ゲーなんて、忘れたくたって忘れませんって。
リンフィーナは眉間を顰めた。
「では皇女、正々堂々と私は勝負したい。そしてもし、万が一にでも私が勝利してしまった時の褒美についても伺いたいところです」
正々堂々と、という言葉に目力を加えてくるあたり、リンフィーナがラーディオヌ一族に行っていたことを把握しているようで、やはりこのギロダイを侮れないと気を引き締めた。
「王族特権など使っていません。ですから正々堂々と戦いますとも」
アセスから調味料一式は頂戴したけれど、非公式な方法だから、後ろ指刺されることはない。それにこちらが用意したのは、ギロダイに鼻で笑われる覚悟の鳥の餌ーー、もといオートミールでしかない。
「褒美が気になるなら、先に申してみよ」
後から言われると、出来ないこともあるし。
言っといてよね。
負けそうなんだから!!
口に出せない言葉の羅列は、なんとも情けないものだったが、ふんぞり返り気味になりながら、リンフィーナはなけなしの権威を保っていた。
一方のギロダイは面白そうに指先で顎を触り、鋭い眼光でこちらを見る。
「万が一にでも、私が勝つなどと言うことはあってはならないと思うのですがーー」
前置きがうるさい。
サナレス兄様も、なんて危険人物を臣下にしてきたのか。
リンフィーナはその危うさに辟易してしまうが、ここまできて引き下がれない。
「褒美について、申してみよ」
「では私をご親戚に」
生き残ったものが少ない中ではあったが、そこにいた50名程度の民はギロダイの言葉に凍りついた。
え???
「親戚? 王族の親戚にすることが願いと申したのか?」
「ええ。未だ未だ不徳ではございますが、王族の姫を我が妻にしたいと考え、上信申し上げます」
開いた口が塞がらなかった。
「えっと……。えっとお前、王族になるってーー、第二王子の姉に皇女はいたけれど、消息不明だしーー。ラーディア一族の皇女って言うと、行方不明のフェリシア皇女と、あと私しか居ないんだけれどーー」
「ですから!」
皆まで言うのを待たず、ギロダイは発言した。
「サナレス殿下に忠誠を誓う腹心の私が、皇女リンフィーナ様の夫となり、殿下に使え、ラーディア一族の行く末を守りたい所存でございます。敵か味方かもしれぬ他国の王に、殿下が溺愛する姫を娶られるぐらいであれば、恐れながらこのならず組副隊長のギロダイ、猿姫を引き受ける覚悟。ーーいえ、皇女リンフィーナ様を迎え、血縁になることを褒美としていただきたい」
シーーーン。
一同、静まり返った。
その後、民はなぜか拍手でギロダイの演説を讃えた。
「それはいいお考えです!」
おや?
「ラーディア一族はやはり、隊長サナレス様、副長ギロダイ様があってこそのならず組です」
おやおや?
「副長ならば、サナレス様も文句は言いますまい」
文句言いますよ。きっと。ーーたぶん。
雲行きが怪しくなったが、民の気持ちは湧いている。
「他国に殿下の大切な皇女を取られるくらいであれば、自国で血縁を結ぶのがいい」
これが前例になれば、
血族でなくとも、
王族と、
血の契約を結ぶことが、
できるのでは?
いつの間にか、ギロダイの言葉を聞いた民のほとんどが、「それはいい考えだ」などと頷きあっていて、リンフィーナは後退った。
自分は異性としてギロダイに一片の興味もない。
主張してもおそらく、この時代、そんなことは着眼されない。
自分はサナレスの伴侶なのだ。
主張しても妹の言う戯言になってしまう。
「あなた……ねぇ! 私に対して一片の興味すらないのに……」
「サナレス殿下を我が主人として敬愛してございます!」
だから、あなたねぇ……。
なぜかまたギロダイの毅然とした態度に拍手が起こった。
「姫様も私も、恐れながら殿下を一番にお慕いする存在でございます。その我々が夫婦となることは、殿下にとってもラーディア一族にとっても国力となりましょう」
熱の入った演説に、生き残った民たちは深くうなづいている。
私、サナレスと結婚するの!
血縁じゃないとわかったんだから。
妹じゃないし!!
感情を言葉にすることは憚られ、リンフィーナは奥歯を噛む。
「いえ姫様、突然の不躾な提案など、万が一の話でしょう? この勝負で姫坂が勝てば、私は殿下と同じく、姫様に服従し、命をも差し出す所存でございますので、ーー褒美の件などお戯れ程度にお考えください」
頭の天辺から爪の先まで、王族の風格を醸し出してくるような格好をして、ギロダイは言う。
策士だ。
彼に負けたらこのまま、嫁にされる!!
リンフィーナはたじろいだ。
オートミールじゃ、狩ってきた新鮮な肉に勝てる?
「ーーわかりました。褒美の件についてはさておき、まずは勝負しましょう」
不本意ながらテーブルの上に乗った自分に、周囲の民は沸いていた。興味津々だ。
「今から、各々調理した料理を配膳しましょう。それを民がより多く好んで食べた方が勝ち。グラム数を測定します」
「グラム数?」
「そう。皿にとってきて食べるグラム数を測定するのです」
ギロダイはわずかに眉を上げたが、民はそれはいい考えだと首肯した。
「ーーいいでしょう」
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




