黄泉から戻ったばかりで
こんばんは。
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「王よ、アーディア一族は呪術を疎んじてきた一族。それなのに水月の宮で起こった惨事には呪術者の存在を否定できません」
「銀のーー、銀の魔女が暴れ、我が国の兵を滅ぼしたと生き残った者から事情聴取しております」
元老院と貴族院、それから民の日常を守る駐屯兵の代表が顔を突き合わせ、何度も何度も、水月の宮で起きたことについて議論していた。
いい加減聞き飽きる。
どうしてを突き詰めても、結論は変わらない。ラーディオヌ一族は先んじて水月の宮に夜襲をかけて、そしてその大半の兵士を殲滅させられている。
「銀の魔女など、伝承の魔女は存在せぬ」
アセスが答えるが、元老院はカビの生えかけた古めかしさで、アセスに対して首を振る。
「若い総帥は知らないのかもしれませんが、ラーディア一族は元は我が氏族と袂を分けた呪術を伝承する氏族。ラーディア一族に生まれた銀髪の者は異色な力をもつ、それは大神ジウスが証明しておりましょう。かつてーー銀髪の魔女がアルス大陸を崩壊寸前に追い込んだことは歴史書に残されております」
「だから大きな力を畏怖するアルス家で、銀髪は不吉とされてきたのです」
「ーー確か、ラーディア一族の皇女は銀髪だったのでは?」
「そうだ、サナレス殿下がこちらに嫁がそうとした妹姫が、銀髪だったはず」
口々に推測を口にしている。
「果たしてラーディアの皇女はこの件に無関係と言ってしまっていいのでしょうか?」
「ラーディアがラーディオヌ一族に仕掛けた……」
ハニートラップかもしれない。
そんな下世話な意見が会議内で上がるほどだ。
アセスは右眉の端をわずかに動かした。
歴史書にある魔女裁判を彷彿とさせる今回の事件は、ラーディオヌ一族の多くの兵を失って、犯人探しが始まっていた。犯人はいなければならない。これだけラーディオヌ一族の兵の命が奪われたのだから、でっちあげでも誰か悪者を用意しなければ決着しない。
「銀髪の皇女が災いの元では?」
矢面に立たされているのは、アセスが心底庇いだてしたいリンフィーナだった。
ここ数日の会議をやり過ごしたアセスは、参加者の意図を汲み取っていた。
「だが不思議なことだね。皇女リンフィーナは地道士で、わざわざ我が一族に進級試験を受けにきていたほど、呪術に精通しているとは思えない。はたして銀の森の魔女と言える程の存在だろうか?」
アセスが彼等の決めつけを解きほぐそうとするが、さらに会議の場は熱くなっていった。
「それこそ演技だったのやもしれませぬ」
「大した力がないと進級試験で我々に見せておきながら、実は魔女の再来である力を保持していたのかもーー」
さほど器用な少女ではない。
リンフィーナという人格を知っているアセスは、頭から彼等の意見を一笑に伏したが、彼等の疑惑は膨れ上がっていく。
「ラーディオヌ一族にあっても、そもそも銀髪は不吉な存在でございます」
「そうか?」
そんな話聞いたこともないが。
アセスは吐息をついた。
「王よ、考えてみてください。銀の魔女の存在がなければ、我々はラーディア一族と訣別することもなく、アルス家として共存共生の道を辿っていた。全ては呪術を魔導に染めた、銀の魔女の存在が災いになっております」
お前たちは、ーー化石か?
アセスは額に手をやって、過去の話ばかりを口にする元老院に閉口した。
「しかし、今、銀の魔女は存在しない。先日我が国の兵を滅ぼした者については調べさせているが、何が原因かは掴めていない。それよりも今後、無益な血を流さないために一刻も早くラーディア一族と国交を再興すべきだと私は思うのだが」
「そのような!」
「そのようなこと、民は無念と考えましょう!」
やはり和平を拒絶するか。
アセスはヨースケが用意周到に企んだ結末に頭を悩ませた。
どうあっても平和的解決では面白くないと、あえて混乱を起こしてはそれに興じている彼の思惑を感じていた。
「王よ、次に刃を交えるときには、ラーディア一族に劣らぬ天道士の軍を整えるべきかと」
一族にあっても指折りで数えられる天道士、その軍だと?
彼等が望むことは目に見えていた。
自ら王が、つまりアセス本人が天道士として出陣し、仇をとってこいと言っている。
このときアセスは自覚した。
お飾りの王を返上した代償として、新たに歴史上の駒として祭り上げられようとしている。
思うように生きさせてはくれないようだ。
けれど。
「私はラーディア一族ともう一度国交の道を模索したい」
「これほどの死者を出して、それはもう夢でしかございません」
夢?
黄泉から戻ったばかりのアセスは、首を傾げた。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




